「白露」。『八月の銀の雪』(伊与原新・著)
曇りの一日でした。
今日は二十四節気の一つ「白露」です。夜から朝にかけて大気が冷え込むようになり,露ができ始めるころです。草花に付く露が白く見えるという意味で,秋が深まるころとされています。
夏の長雨,再びの雨模様の気候,“いつもの秋”がやってくるのは近づいているでしょうか。
第164回直木賞の候補作,2021年本屋大賞のノミネート作品の『八月の銀の雪』(新潮社・刊)を読みました。
これまで伊予原氏の作品を読んだことはなく,また作品の内容も知らずに手にしました。
本書は5篇で,書名の物語が最初でした。
物語はいずれも“出会い”から始まります。その出会いから述べられる自然現象,そこからの気づきに“感動”があります。
◇八月の銀の雪
○ 絶望の淵であえいでいる就活中の男子大学生〈堀川〉がコンビニの外国人バイト店員〈グエン〉と出会います。 ○ グエンから聞く「地球の内部構造」。 ○ 人間の中身も,層構造のようなものだ。地球と同じように。◇海へ還る日
○ ベビーカーに〈果穂〉を乗せたシングルマザーが,満員電車の中で母くらいの年齢の女性〈宮下〉に席を譲ってもらいます。 ○ 博物館に勤める宮下から聞く「クジラの歌声」 ○ クジラたちは,我々人間よりもずっと長く,深く,考えごとをしている◇アルノーと檸檬
○ 不動産会社の社員〈正樹〉が,担当する老朽アパートに住む老婆〈加藤寿美江〉を訪れます。 ○ アパートには「アルノー19」の足環をつけた伝書鳩 ○ 加藤さんも,もう立派な愛鳩家ですね。やっぱり,かわいいですか。◇玻璃を拾う
○ 週末の昼飲みが好きな独身OL〈瞳子〉が,「休眠胞子」と名乗る中年男性〈野中〉に会います。 ○ 野中の「珪藻アート」 ○ 人間のまた多かれ少なかれ,見栄えよく繕った殻と,それに不釣り合いな中身を抱えている。それがむしろ,ありのままの姿ではないのか。◇十万年の西風
○ 原発の下請け会社を辞めて旅に出た40歳代の男性〈辰朗〉が,海岸で六角凧をあげる70歳代の男性〈滝口〉と出会います。 ○ 滝口が語る「風船爆弾の開発」 ○ 起きるはずのないことが,いつどこかで起き得ることへと一転した瞬間だ。あなたの出会った人は…。 あなたが見つけたものは…。
目次 八月の銀の雪 海へ還る日 アルノーと檸檬 玻璃を拾う 十万年の西風【関連】 ◇伊与原新『八月の銀の雪』表題作特別公開(新潮社) ◇第164回直木三十五賞(HMV&BOOKS onlineより) ◇第34回山本周五郎賞(新潮社より) ◇2021年本屋大賞(本屋大賞より)