集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『諦念後』(小田嶋隆・著)

花0401。 晴れて暖かい日でした。  今日は、「エイプリルフール」(Twitter)でしたが、何か「クスっ」とすることがありましたか。  コラムニスト 小田嶋隆氏をご存知ですか。  鋭く政治や社会を評論する方で、その言葉、文章に刺激を受けてきました。  同年代の方で、勝手に感覚が似ていると思い、10年間続くTBSラジオ・赤江珠緒たまむすび「週刊ニッポンの空気」を聞いて身近に感じていました。  病気のため、昨年(2022年)6月に亡くなられ、もう“オダジマ節”を聞くことができません。惜しまれます。  小田嶋氏が亡くなられた後、数冊の著作が発刊されています。 その中の一冊『諦念後──男の老後の大問題』(亜紀書房・刊)は、集英社の冊子『青春と読書』の連載コラムをまとめたものです。  それまでの論評・批評とは違い、“60歳以降の「定年後=諦念後”の行動と思いを綴ったエッセイです。
 《ジジイだって、歳を取るのは初めての経験なのだ。許してあげてほしい。》  男の「定年」は「諦念」なのか?  還暦を過ぎた男の気分や期待や虚栄や子供っぽさをオダジマ節で軽快につづったコラム集。  「人生で前向きだったことなどは一瞬もない。加えて、人生で継続したことはアルコール依存くらい」  齢60にして、そばを打ったり、ギターに再挑戦したり、ジムに通って逆三の体を手に入れようとしたり、体当たりの取材をこなす……。はたして新しい境地は?  定年後の男の身の持っていき場所、ヒマのつぶし方、諦念と満足などを軽やかに綴るコラム集。
 連載にあたって、これまでの“アームチュアな仕事ぶり”とは別のものになることについて、最初の項で次のように述べています。
 具体的に言えば、これまで私がコラムニストとしてモットーとしてきた「取材をしない」「文献を読まない」という2つの原則を捨てなければならないということだ。(略)  当欄の仕事ではその伝来の手法をあえて捨てて、遅ればせながら「体当たりの取材」という、書き手の初心にして基本に立ち返ってみることにした次第だ。  理由は、私にとって、本稿のテーマである「老年」がはじめての経験であり、それをいまだに内面化しきれていないからだ。(略)
 小田嶋氏が、「老年」「諦念後(定年後)」の暮らしに“体当たり”していく様子、それを“取材”し、言葉で表されたものは、メモしておきたいものに溢れています。
諦念後0401。
 「トシを取る」ということ、「諦念してしたこと」に、あなたを重ね、オダジマさんと語り合ってみませんか。  オダジマさんの“次のコトバを聞きたく(読みたく)なった一冊です。  読書メモから、少しだけ(?)。
○ 還暦を過ぎてからこっち、こんなふうに無邪気にひとつの動作に熱中したことがあっただろうか。ありゃしない。 ○ では、弾けるようになった男たちは、どうしてFのコードを克服することができたのであろうか。  答えは「孤独」と「鬱屈」だ。 ○ 奇妙な前置きを長々と書いているのは、今回の挑戦を前に 「継続は力なり」 という最初に思いついてしまった退屈極まりないフレーズをいきなり持ち出すことがためらわれたからだ。 ○ 当日の開会式は、儀式の要諦である、  1.偉い人の顔をたてておく。  2.けじめっぽい演出をほどこしておく。 という2つのミッションを見事にクリアしていた。 ○ そういう場所にのこのこ顔を出しておいて、いまさらこんなことを書いている私の言いざまも、ユダ的というのか、実に美しくない。 ○ その上であえて言うが、誰ひとり身を持ち崩さない娯楽に何の意味があるという気もする。平和な老後など狙ってどうする? ○ 加齢のもたらす変化のひとつに、若い頃冷淡だった対象に関心を抱きはじめるということがある。 ○ 諦念者にとって、ツイッターはたしかにハードルの高い世界だ。が、最初のハードルを乗り越えてしまえば、その先にはのんべんだらりとした無駄話の天国が待っている。 ○ 勘違いしてはいけない働き方改革は、一羽のニワトリに何個の卵を産ませるのかというタイプのお話だ。ニワトリの人生やニワトリの幸福についての話題ではない。  こんな話にうっかりひっかかってはいけない。
   目次 1 定年後のオヤジたちは、なぜ「そば打ち」をするのか? 2 定年男はギターを買ってみた。非モテだったせい青春時代を取り戻すために。 3 逆三角形の体の自分になりたくて、スポーツジムに通ってみた。 4 過去を清算しようと思って、「断捨離」をしてみた。 5 立派な死に方だったと言われたくて、「終活」をしてみた。 6 卒業後40年を経て、同窓会に出席してみた。 7 ひまつぶしのために麻雀を打ってみた。 8 職人を志して、鎌倉彫をやってみた。 9 しがらみから逃れられなくて選挙に出てみる。 10 植物の魅力に目覚め、盆栽をはじめてみた。 11 バカな虚栄心とわかりつつ、大学講師をやってみた。 12 自分は永遠に健康だと思っていたら、脳梗塞で入院してしまいました。 13 実りある無駄話をするためにSNSをやってみた。 14 定年後、何歳まで働けばいいか考えてみた。 15 「がん」での死に方に思いを巡らせてみた。 あとがきにかえて  小田嶋美香子
【関連】   ◇小田嶋隆 (@tako_ashi)Twitter)   ◇小田嶋隆Wikipedia)   ◇小林マキ (@ikam1225)Twitter)   ◇コラムニスト・小田嶋隆さん、ありがとうございました。(2022/06/27 TBSラジオ赤江珠緒たまむすび)   ◇コラムニスト・小田嶋隆が残した功績【追悼企画】──Vol.01:内田樹GQ JAPAN