成人の日。
天気のよい日でしたが,今日も“寒い日”でした。
今日は,国民の祝日の一つ「成人の日」です。「おとなになったことを自覚し,みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」ことを趣旨としています。
これまでも「成人の日」に話題にしていますが,成人の日で思い出すのが,故・山口瞳氏です。
以前,成人の日(1月15日)と入社式の日(4月1日)になると,サントリーが新聞広告として,新成人と新社会人に向けたエッセイを載せていていました。
そのエッセーを1978年〜1992年まで書いていたのが山口瞳氏でした。
1985年(昭和60年)の「成人の日」のエッセーより。
君達は大金持ちだ!当時は50年だった時間も,今の成人は60年間の“豊饒の歳月”があると言ってよいかもしれません。成人の日を迎えた諸君,おめでとう。
君達は二十歳になった。
(こう書いてきて,突然,僕は君たちを煽動したい気持ちになってきた)
二十歳になった諸君は,七十歳まで生きられるとして,あと五十年の歳月がある。
君達の持時間は五十年間だ。ああ,何という豊饒の歳月であることか。
五十年間かかってやり遂げれれないことは何ひとつとしてない,と僕は考える。
君達は実にリッチなのだ。
君達は大金持ちだ。
その点に関して,君達は威張っていい。
自信を持ち給え。
君達のなかには面白くもない暮らしを強制されている人がいるかもしれない。
それだって。一日のうち二時間か三時間の自分の時間を作ることは可能だろう。
その三百六十五倍の五十倍という時間を君達の誰もが持っているんだ。
ああ。気が遠くなる。
ただし,条件がある。
志がなければ駄目だ。
じゃあ「志って何だ」と訊かれると僕は困ってしまう。
我が師 吉野秀雄先生に,こんな歌がある。
「屑煙草集め喫へど志す高き彼物忘らふべしや」
これは先生の歌としては上々の出来ではないかもしれない。
「高き彼物」って何だろう。
よくわからない。
・・・わからないけれど,僕は,失意のとき,この歌を呪文のように唱えたものだ。
すると,不思議に体に力が湧いてきた。
二十歳になった諸君!まあそういうことだ。
とりあえず,乾盃しよう。
「○○プアー」なんかではなく,「大金持ち」ですね。
山口氏のエッセイは,短い文章の中に,次代を担う若者に対する期待と温かさと激励,そして山口氏の人生観が凝縮された,読む者の「琴線」に触れる“凄い広告”でした。
こうした“広告”は,商品名やイメージキャラクターでびっしりの紙面より訴えるものがあったと思います。
広告ではなく,企業としての理念の訴えだったかもしれません。
現代の成人・若者には,社会からどのようなメッセージが届いているでしょう。
そして,大人は,どんなメッセージを送っているのでしょう。
【今日の小咄】
初詣に行ったとき,「絶体合格しますように!」と書いてある絵馬があった。
たぶん合格しないだとろうなと思った。