『大学生のストレスマネジメント』(齋藤憲司 他・著)
雲が目立ちましたが,気温18度を示した暖かい日になりました。
暖かさのせいではないでしょうが,帰路の途中いろいろな場所で,事故や脱輪などのトラブルを起こしていました。
気を引き締めて運転をしました。みなさんも,お気を付けください。
2020年度の春,“これまでにない状況”で学校が始まりました。小学生から大学生まで,「どうなるの?」と大きな不安を抱えていました。
学校再開の後も,大学生は“登校できない”日々が続き,さらに不安が大きくなっていったことでしょう。
その頃に出版された『大学生のストレスマネジメント -- 自助の力と援助の力』(有斐閣・刊)です。
新型コロナ禍の前に企画・執筆されており,“これまでの学生生活”で出会うイベントやストレスから述べられていますが,今に活きる内容です。
○ 学生生活サイクルの観点から「入学期」「模索期」(中間期)「卒業期」「院生期」をいかに過ごしていくかを考えてみよう。 ○ ストレッサーは学生生活のあらゆる側面に潜んでいるが,それは自分を成長させ,学生時代を豊かにしてくれるものである。 ○ 成長や第二次性徴などについては (略) しかし,特にホルモンや脳の成長に関しては,20歳以下では個人差がまだあり,20歳をすぎても脳はまだ完成していないといえる。 ○ 高校時代どんなに優秀だった人でもこの力は大学入学時点では身についていないため,これを身につけ,伸ばすために大学4年間を利用しよう。新型コロナ禍の今だからこそ,必要な視点,内容かもしれません。 特に,オンラインの大学生活を始めざるを得なかった1年生(新入生)には,ぜひ読むことをお薦めします。 とはいえ,読みやすい本ではないかもしれません。 構成や記述に工夫がされていますが,“心理学の本”の印象を強く受けます。でも,大学生が「臨床心理学の講義を受ける」ように開けば,ていねいな説明になっていると思います。そして,講義ではないので,まず序章と第1章を読んだ後は,今の“心”が求める項目(内容)を読めば,それまでの不安やストレスが軽くなると思います。 本書では,各章そして内容が,同じ構成になっており,話が分かりやすくなっています。 まず,扉に「キーワード」があり,内容のヒントがあります(これが論文の感じを強めている)。 そして,最初に大学生を描く「エピソード」で,具体的な“問題”を示します。その学生や場面について,状況の“専門的説明”や,解決・解消への“アドバイス”が述べられていきます。途中で,話を広げて解説する“コラム”が入り,理解を助けます。 話の終わりでは,「ここでいいたいこと!」としてまとめています。 章の終わりは,これまでの話をもとに「こころの柔らかワーク」で考える(整理する)ことを示し,興味をもった人がさらに学べるよう「ブックガイド」で図書を紹介しています。(下部の「目次」で図書を紹介しました。) 大学生はもちろん,若いみなさん,そして教育に携わる方々へお薦めの一冊です。 本書から“ガッテン!”を得て,もやもやしていた心や気持ちが,すっきりすることでしょう。
目次 序 章 大学生活で出会うストレス ◇『ムツゴロウの青春記』(畑正憲/文春文庫) ◇『大人になることのむずかしさ』(河合隼雄/岩波現代文庫) ◇『ライフサイクルの哲学』(西平直/東京大学出版会) 第1章 新しい生活に入る ◇『認知行動療法で改善する不眠症』(岡島義・井上雄一/すばる舎) ◇『ダイエット』(石垣ちぐさ・本間江理子/大月書店) 第2章 学習・勉強とストレス ◇『新釈 現代文』(高田瑞穂/ちくま学芸文庫) ◇『カラー版 小惑星探査機はやぶさ ―「玉手箱」は開かれた』(川口淳一郎/中公新書) ◇『発達障害のある大学生のキャンパスライフサポートブック―大学・本人・家族にできること』(高橋知音/学研教育出版) 第3章 課外活動・学外でのトラブル ◇『ブラックバイト――学生が危ない』(今野晴貴/岩波新書) ◇『アサーション入門――自分も相手も大切にする自己表現法』(平木典子/講談社現代新書) ◇『大学のカルト対策』(櫻井義秀・大畑昇/北海道大学出版会) ◇『カルト宗教信じてました。』(たもさん/彩図社) 第4章 友人関係とストレス ◇『ロジャーズ クライエント中心療法 新版 --カウンセリングの核心を学ぶ』(佐治守夫・飯長喜一郎/有斐閣) ◇『恋ごころの科学 (セレクション社会心理学 (12))』(松井豊/サイエンス社) ◇『ひとと会うことの専門性―なぜ心理臨床をめざすのか』(斎藤憲司/垣内出版) 第5章 親とどうつきあうか ◇『家族の心理―家族への理解を深めるために』(平木典子・中釜洋子/サイエンス社) ◇『ようこそ!青年心理学―若者たちは何処から来て何処へ行くのか』(宮下一博・松島公望・橋本広信/ナカニシヤ出版) ◇『逢沢りく(文庫本)上下巻セット』(ほしよりこ/文藝春秋) 第6章 恋愛と性をめぐるストレス ◇『バタードウーマン―虐待される妻たち』(ウォーカー,L.E.・斎藤学・穂積由利子/金剛出版) ◇『桶川ストーカー殺人事件―遺言』(清水潔/新潮文庫) ◇『中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド』(松本俊彦・岩室紳也・古川潤哉/日本評論社) 第7章 SNS/ゲームとのつきあい方 ◇『学生のためのSNS活用の技術 第2版』(高橋大洋・佐山公一・吉田政弘/講談社) ◇『フィルターバブル──インターネットが隠していること(パリサー,E.・井口耕二/ハヤカワ文庫NF) ◇『ネット依存・ゲーム依存がよくわかる本』(樋口進/講談社) 第8章 非常時! ◇『復興と支援の災害心理学―大震災から「なに」を学ぶか』(藤森立男・矢守克也/福村出版) ◇『臨床心理学 第17巻 第5号―レジリエンス』(石垣琢麿/金剛出版) 第9章 喪失を超えて ◇『心の力』(姜尚中/集英社新書) ◇『心を癒す言葉の花束』(デーケン,A./集英社新書) ◇『喪失学〜「ロス後」をどう生きるか?〜』(坂口幸弘/光文社新書) 第10章 将来どうする? ◇『仕事力 金版』(朝日新聞社/朝日文庫) ◇『FACTFULNESS──10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(ロスリング,H.・ロスリング,O./日経BP社) 終 章 支えあう関係へ ◇『プロカウンセラーの聞く技術』(東山紘久/創元社) ◇『ピア・サポート実践マニュアル』(コール,T./川島書店) ◇『聞く力―心をひらく35のヒント』(阿川佐和子/文春新書)