集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『先生、どうか皆の前でほめないでください』(金間大介・著)

鳥1220。 「よい天気になりそうだ」と思う朝の空でしたが、徐々に雲が目立ち、出先では暗い雲に覆われていました。気温も低く「雪が降るのかな…」と思える天候でした。  新潟県の国道では車両の立ち往生が続き、自衛隊災害派遣を要請する事態となっているようです。  大雪に限らず、「もしもへの備え」を想像力豊かにして、普段から心がけ、整えておきたいと思います。  最近も、耳にすること、口にすることがあるだろうか。  「近頃の若者は…」と。  今から約5000年前、古代エジプトでピラミッドの建設に携った人々が、ピラミッドの天井裏など、人目に触れない場所に書き込んでいたと言われます。  古くから、どの時代・世代においても、若い世代が“頼りなく”見え、“説教”のような言葉が続きました。  そして今、「Z世代」「α世代」と呼ばれる若者達に向けても、「近頃の若者は…」との言葉を聞かせているでしょうか。  そうしたことを考えていたとき、「いい子症候群」という言葉を聞きました。
 大人が求めるような「いい子」になろうとして自分を抑え、親の言いなりになったり顔色をうかがって行動したりする子供の姿のこと。
 そして、『先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち』(東洋経済新報社・刊)を書架で見つけて、早速読みました。  本書では、大学生から20代半ばまでの若者の、17例を挙げた行動原則や心理的特徴を「いい子症候群」と定義しています。  本を開くと、カバーの袖に、
 今の大学生に聞いた「どれが最も公平な分配だと思いますか?」 ? 平等分配 ? 必要性分配 ? 実績に応じた分配 ? 努力に応じた分配
とあり、まず自分の公平を考え、大学生の選択を予想しました。  あなたは、どれを選ぶ大学生が多いと思いますか。  あなたの知る大学生は、“その選択”をすると答えそうですか。  職場の若者は、どのような仕事ぶりでしょう。
 いい子症候群の若者たちの仕事観をまとめるとこんな感じになる。 ○ とにかく一目は気になるし競争もしないけど、自分の能力を活かしたい ○ そこそこの給料をもらい残業はしないけど、自分の能力で社会貢献したい ○ 自ら積極的に動くことはないけど、個性を活かした仕事で人から感謝されたい ○ 社会貢献といっても、見ず知らずの人に尽くすとかではなくて、とにかく「ありがとう」と言ってもらえるような仕事がしたい
 著者が出会った“大学生の姿や行動”、調査・アンケートを多く掲載し、その背景を探っています。  その姿に驚きました。  いい子症候群の若者に対して「○○するとよい」といった答え対処法を期待する方には、直截的な記述はなさそうです。  若者の“気になっていた姿や行動”の背景に知ることで、あなたの行動や対応に余裕(?)が生まれることでしょう。  職場の上司・先輩、学校の先生にお薦めの一冊です。  読書メモより
○ 若者からは、本当に多くのことを教わる。そして、もし変わる必要があるとしたら、それは彼らではなく大人が作った社会のほうだと、強く感じさせられる。 ○ それではなぜ1限の講義に来るかといえば、答えは「1限に設定されたから」だ。 ○ ?平等分配の多さだ。ずばり、現在の大学生の半数は、単純な一律分配が最も公平だと考えていることになる。今の若者の間では、いかなる理由にかかわらず、分配量を変えること自体に違和感を持つ人が増えているのだ。 ○ 誰かに決めてもらう /例題にならう /みんなで決める ○ そのことで君は、その提案者のことを変な人と思う?  おそらく思わない。つまり、自分は決して抱かないような感情や考えを、君は他人の中に勝手に妄想し、それを怖がっているだけなのだ。 ○ 「10歳の壁」「小4の壁」と言われるが、思っている以上に根は深そうだ。 ○ 彼らは、中学、高校、大学と「固まる効用」を経験として学習している。向こうがしびれを切らすまで待て、が正解なのだ。 ○ 「直接頼まれたら全然やるんですけどね」 ○ 起動するコマンドの1つが貢献欲求だ。(略) 上司からすれば、誰にでもできることをお願いしただけなのに、「任せられた」「貢献している」と受け取る若者も少なくない。 ○ アントレプレナーシップという言葉を聞いたことがあるだろうか。 ○ なぜインターンシップに参加するのか? 自己成長以外にどんな目的があるのか?  答えは、既得権重視の守り志向にある。多くの学生を(略) という情報と、その情報が醸し出す強迫観念にある。 ○ いい子症候群の最大の課題は、彼ら自身は単体で何の付加価値も生まないことだ。 ○ 「三人寄れば文殊の知恵」の3人とは、単に複数形を総称しているだけと思っていたが、本当に3人くらいがいいのかもしれない。 ○ 若者に期待してしまうのはわかる。しかし、(略) それ以外の期待は、単なる圧や搾取に過ぎない。 ○ 現時点で筆者が考える、若者の心を動かす最強フレーズだ。/「自分は(略)」 ○ 学生の間でも社会人になってからでもできる2つの地味な方法を教えよう。/1つは「○○」、もう1つは「○○」だ。
   目次 はじめに 第1章 先生、どうか皆の前でほめないで下さい──目立ちたくない若者たち 第2章 成功した人もしない人も平等にして下さい──理想はどんな時でも均等分配 第3章 自分の提案が採用されるのが怖いです──自分で決められない若者たち 第4章 浮いたらどうしようといつも考えてます──保険に保険をかける人間関係 第5章 就職活動でも発揮されるいい子症候群──ひたすら安定を求めて 第6章 頼まれたら全然やるんですけどね──社会貢献へのゆがんだ憧れ 第7章 自分にはそんな能力はないので──どこまでも自分い自信のない若者たち 第8章 指示を待っていただけなんですけど──若者たちの間に広がる学歴社会指向とコネ指向 第9章 他人の足を引っ張る日本人──若者たちが育った社会 第10章 いい子症候群の若者たち──環境を変える、自分を変える 謝辞 筆者の研究業績一覧(主なものを抜粋)
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