集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『京都祇園もも吉庵のあまから帖 2』(志賀内泰弘・著)

花1004。 曇り空の一日でした。  この夏に子供達が取り組んだ“算数・数学の研究”のまとめを読ませていただきました。  「そうか」「なるほど」「ほんとに  今年の短い夏休みでしたが,「学問する楽しさ」「追究する面白さ」を感じて過ごせたようです。ありがとうございました。  先日,志賀内泰弘氏から「号外 徒然草」のお知らせと書籍2冊を送っていただきました。  その一冊『京都祇園もも吉庵のあまから帖 2』(PHP文芸文庫)です。  これは,月刊『PHP』に連載の小説が書籍化された連作短編集で,以前に紹介した作品の続編です。  舞台は,祇園の“一見さんお断り”の甘味処「もも吉庵」,その女将が,代々続いたお茶屋を畳んで甘味処を開いた もも吉 です。  店の席に着く,美都子隠源隠善おジャコちゃんが聞き語る,祇園で生きる奈々江朱音の周りにみる“生き様”に心が揺れます。  前作で印象に残る言葉が,第一話で再び語り掛けられます。
「ええか,朱音たん。仕事というもんは,頑張るもんやない。気張るもんや。『頑張る』と『気張る』,似ているけど違うんや」  と,『頑張る』というのは,『我を張る』こと。つまり自分一人の頑張り,独りよがりのことだという。それに対して,『気張る』いうのは,『周りを気遣って張り切る』ことなのだそうだ。
 そして,もも吉庵で“今を語った人”に,もも吉は
 一つ溜息をついたかと思うと,裾の乱れを整えて座り直す。もともと姿勢がいいのに,いっそう背筋がスーッと伸びた。帯から扇を抜いたかと思うと,小膝をポンッと打った。ほんの小さな動作だったが,まるで歌舞伎役者が見得を切るように見えた。
と居ずまいを正し“言葉”をかけます。  その言葉が,悩みを抱えた人々の心を癒します。  その言葉は,読んでいる“わたしの心”へも伝わってきます。  *第一話の朱音。
 今はまだ,そのことを知る由もない。  あいかわらずのマイペースで,店の一番奥で額に汗をかきながら商品を,ただただ黙々と包装する朱音だった。
 *第二話の香織と佐保。
 「ほんまや」「ほんまにきれいやなぁ」と言い合い,佐保と健三,香織と耕次,そして佐市,総三郎夫婦が空を見上げる。  みんなの笑顔が一つになった。もも吉は思った。「もう大丈夫や」と。
 *第三話の太一。
 気付くと,頬を熱い涙が伝わっていた。(略)  椿がくるくると回った。  それはまるで,金屏風の前で踊る舞妓のようだった。
 *第四話の奈々江。
 刹那,お爺ちゃんが微笑んだように見えた。  奈々江は頬に伝う涙も気にせず,ただただ無心に舞った。
 *第五話の勇。
 お囃子の音が勇の心の弦をやさしく撫でた。  その瞬間,頬を伝わったひと雫が,小鈴の頬にポツリと落ちた。
 もも吉の語った言葉は…。  その言葉が,あなたも聴こえます。  読書メモ
○(冬至の話から) そこでここに『ん』の二つつくもん七つ用意したんや。みんなで当ててみぃ。 ○ 昔からよう言いますやろ。隣の芝生は青く見えるって。 ○ 人は,悪いことがあると,気が弱くなるもんどす。そやから迷信みたいなもんを,よけいに信じたくなるんどすなぁ。 ○ 昔から,秘すれば花と言いますなぁ。もし,知ってしもうたら,聞いてしもうたら,辛い思いをする人がおるんやないやろか。人の心を苦しめてまで,知らなあかんことはないのと違いますやろか
チラシ1004。
   もくじ 第一話 年暮れて 今日の片隅華が咲く 第二話 秘め事や 桃の節句のものがたり 第三話 行く春を 惜しみ零れる落椿 第四話 ふるさとを 偲んで踊る京の舞 第五話 都大路 涙ににじむ山と鉾
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志賀内1004。