『京都祇園もも吉庵のあまから帖 2』(志賀内泰弘・著)
曇り空の一日でした。
この夏に子供達が取り組んだ“算数・数学の研究”のまとめを読ませていただきました。
「そうか」「なるほど」「ほんとに」…
今年の短い夏休みでしたが,「学問する楽しさ」「追究する面白さ」を感じて過ごせたようです。ありがとうございました。
先日,志賀内泰弘氏から「号外 徒然草子」のお知らせと書籍2冊を送っていただきました。
その一冊『京都祇園もも吉庵のあまから帖 2』(PHP文芸文庫)です。
これは,月刊『PHP』に連載の小説が書籍化された連作短編集で,以前に紹介した作品の続編です。
舞台は,祇園の“一見さんお断り”の甘味処「もも吉庵」,その女将が,代々続いたお茶屋を畳んで甘味処を開いた もも吉 です。
店の席に着く,美都子,隠源,隠善,おジャコちゃんが聞き語る,祇園で生きる奈々江や朱音の周りにみる“生き様”に心が揺れます。
前作で印象に残る言葉が,第一話で再び語り掛けられます。
「ええか,朱音たん。仕事というもんは,頑張るもんやない。気張るもんや。『頑張る』と『気張る』,似ているけど違うんや」 と,『頑張る』というのは,『我を張る』こと。つまり自分一人の頑張り,独りよがりのことだという。それに対して,『気張る』いうのは,『周りを気遣って張り切る』ことなのだそうだ。そして,もも吉庵で“今を語った人”に,もも吉は
一つ溜息をついたかと思うと,裾の乱れを整えて座り直す。もともと姿勢がいいのに,いっそう背筋がスーッと伸びた。帯から扇を抜いたかと思うと,小膝をポンッと打った。ほんの小さな動作だったが,まるで歌舞伎役者が見得を切るように見えた。と居ずまいを正し“言葉”をかけます。 その言葉が,悩みを抱えた人々の心を癒します。 その言葉は,読んでいる“わたしの心”へも伝わってきます。 *第一話の朱音。
今はまだ,そのことを知る由もない。 あいかわらずのマイペースで,店の一番奥で額に汗をかきながら商品を,ただただ黙々と包装する朱音だった。*第二話の香織と佐保。
「ほんまや」「ほんまにきれいやなぁ」と言い合い,佐保と健三,香織と耕次,そして佐市,総三郎夫婦が空を見上げる。 みんなの笑顔が一つになった。もも吉は思った。「もう大丈夫や」と。*第三話の太一。
気付くと,頬を熱い涙が伝わっていた。(略) 椿がくるくると回った。 それはまるで,金屏風の前で踊る舞妓のようだった。*第四話の奈々江。
刹那,お爺ちゃんが微笑んだように見えた。 奈々江は頬に伝う涙も気にせず,ただただ無心に舞った。*第五話の勇。
お囃子の音が勇の心の弦をやさしく撫でた。 その瞬間,頬を伝わったひと雫が,小鈴の頬にポツリと落ちた。もも吉の語った言葉は…。 その言葉が,あなたも聴こえます。 読書メモ
○(冬至の話から) そこでここに『ん』の二つつくもん七つ用意したんや。みんなで当ててみぃ。 ○ 昔からよう言いますやろ。隣の芝生は青く見えるって。 ○ 人は,悪いことがあると,気が弱くなるもんどす。そやから迷信みたいなもんを,よけいに信じたくなるんどすなぁ。 ○ 昔から,秘すれば花と言いますなぁ。もし,知ってしもうたら,聞いてしもうたら,辛い思いをする人がおるんやないやろか。人の心を苦しめてまで,知らなあかんことはないのと違いますやろか
もくじ 第一話 年暮れて 今日の片隅華が咲く 第二話 秘め事や 桃の節句のものがたり 第三話 行く春を 惜しみ零れる落椿 第四話 ふるさとを 偲んで踊る京の舞 第五話 都大路 涙ににじむ山と鉾【関連】 ◇志賀内 泰弘(Facebook) ◇悩みがあったらおいでやす!感動連作短編集『京都祇園もも吉庵のあまから帖』をおすすめしますよ!(YouTube 文学YouTuberベル) ◇ブックウオッチング:『京都祇園もも吉庵のあまから帖2』 志賀内泰弘さん(毎日新聞) ◇「もう何もおへん」全焼の祇園お茶屋、おかみは前を向く [京都花街マガジン](朝日新聞デジタル) ◇月刊「PHP」(PHP研究所) 【これまでに紹介した「志賀内泰弘氏の著書」】 ◇『101人の、泣いて、笑って、たった一言物語。』(志賀内泰弘・監修)(2020/05/30) ◇『書斎の鍵』(喜多川泰・著)(2019/04/23) ◇『365日の親孝行』(志賀内泰弘・著)(2019/11/27) ◇『京都祇園もも吉庵のあまから帖』(志賀内泰弘・著)(2019/10/23) ◇『気象予報士のテラさんと、ぶち猫のテル』(志賀内泰弘・著)(2019/08/18) ◇『眠る前5分で読める 心がスーッと軽くなるいい話』(志賀内泰弘・著)(2019/04/10) ◇『5分で涙があふれて止まらないお話』(志賀内泰弘・著)(2017/06/22) ◇『ギブ&ギブの法則』(志賀内泰弘・著)(2016/08/03) こちらもどうぞ→☆カテゴリー「いい話の図書館」から