集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』(宮口幸治・著)

鳥0215。 天気予報が“バレンタイン寒波”と伝える日で、気温が上がらず寒い日でした。  晴れていましたが、冷たい風が吹きました。人には厳しくとも、野鳥は気持ちよさそうでした。  昨年12月、宮口氏の“ドキュメント小説”を読み、先日、新しく『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』(PHP新書)が発刊されていることを知り、読みました。  本書について
 本書は、ご好評いただいた2019年刊行の『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)実践版といった位置づけになるかと思います。 (略) 本書では『ケーキの…』の発刊から現在までの間にアップデートされた内容を加え、非行少年へのトレーニングの経緯、トレーニングのより具体的な内容、学校等教育機関での実践例の報告、子どものモチベーションについて大切に思うことをまとめて紹介しました。
と、はじめにで述べています。  出版社の図書紹介では、
 立方体の模写は、標準的な子どもであれば大体7歳から9歳までの間にクリアする課題である。しかし著者は少年院に、立方体が描けない中学生や高校生が数多く収容されていることに気づく。「見たり聞いたりする力の弱さが非行の原因なのでは?」と考え、認知機能を強化するトレーニング法を探すも、適当なものが見当たらない。「これは自分で作るしかない」と腹をくくり、周囲の協力も得て、社会性や身体性をも伸ばす教材「コグトレ」を考案。  本書ではその内容と、少年たちがトレーニングで変化したプロセス、さらに子どものモチベーションについて親に知っておいてほしいことを綴る。
 著者は、第1作で“ケーキが切れない子・若者”を入口にして認知機能の不足を指摘しました。  本書の第1章に、“Reyの複雑図形の検査”結果から子供の絵に驚いたこと、そして“立方体が描けない少年”がいること、“気づかれない子どもたち”が述べられています。  第2章では、困っている子の特徴を「5点セット+1」という形でまとめ、それぞ具体的な姿、場面から述べています。
  (1) 認知機能の弱さ … 見たり、聞いたり、想像する力が弱い
  (2) 感情統制の弱さ … 感情コントロールが苦手。他人の気持ちを理解できない。
  (3) 融通の利かなさ … 思いつきで行動する。困ったときの解決策がほとんど出てこない
  (4) 不適切な自己評価 … 自分には問題がないと思う
  (5) 対人スキルの乏しさ … 人とのコミュニケーションが苦手
  [+1] 身体的不器用さ … 身体の使い方が不器用。力加減ができない
 著者があげる特徴に思い当たることが多く、これまでに出会ってきました。そして、そのトレーニング(コグトレ)の例を見ながら、かつて(昔?)経験した“選考検査”の作成を思い出しました。  その検査(問題)で診ていたのは、「特徴(5点セット+1)」に関わる事柄でした。  “7歳から9歳までにクリア”するものを備えているかどうかでした。  本書で紹介するトレーニング(コグトレ)を参考にして、“できない”子供や若者たちにやる気と自信を持てるようにできるでしょう。  その際、第5章の「ヒント」を読んでから、改めてコグトレを見直すと、そのねらいや意味を深く知ることができると思います。  そして、“気づかれない子どもたち”が適切な時期に価値のある体験をできるようしていただけることを願います。  そうした気づきと意識を与えてくれる一冊です。  教育に携わるみなさん、保護者のみなさんに、お薦めです。  読書メモより
○ 相手が笑っているのに怒っているように見えたり、怒っているのに笑っているように見えたりなど、認知機能が弱い状態では自分へのフィードバックを正しく認識することができません。 ○ 非行少年に限らず、子どもたちの支援で何が必要かと考えたときに、先の三つ、つまり、社会面、学習面、身体面の支援だと考えます。 ○ 記憶しながらすばやく計算することでワーキングメモリの向上も目指します。 ○ その人たちの関係性やその場の状況まで想像する必要がありますので難易度が上がります。  しかし、よくよく考えてみれば、子どもたちの学校での生活はこういった集団生活のはずです。 ○ 「感情のペットボトル」(略) 缶詰の代わりにペットボトルを使えば、簡単に用意できますし、しかも水の重さで調節できます。 ○ 「自分の身体」 身体を知る。力加減を知る。動きを変える。  「物と自分の身体」 物をコントロールする。指先を使う。  「人の身体と自分の身体」 動きをまねる。動きを言葉で伝える。 ○ 具体的な原因がわかって、保護者から「ではどうすればいいのでしょう?」といった質問を受けても、「(略)」「(略)」といおった対症療法的なアドバイスにとどまることがほとんどなのが現状です。 ○ 私自身は、そもそもスマホやゲームが悪いものだとは思っていません。依存しない子は、そもそも自己管理がしっかりできているのです。だから、いくらゲームがあっても依存しません。 ○ 近年、子どもが親を信頼しているかどうかで、子どもの行動が大きく変わってくると言われています。 ○ (略) 本音は楽しいから今の取り組みなどをされているのではないでしょうか。やはり、自分の幸せのためにご自身の活動に取り組まれているはずなのです。それが結果的に誰かの役に立って、誰かが喜んでくれる。それが一番の幸せだと感じます。
   目次 はじめに 第1章 立方体が描けない子どもたち 第2章 困っている子どもの特徴 第3章 非行少年たちへのトレーニング 第4章 困っている子どもたちへの具体的支援 第5章 子どものやる気を引き出すためのヒント コグレクトテキスト一覧
【関連】   ◇JACOGT(一般社団法人日本COG-TR学会)   ◇コグトレオンライン(東京書籍)   ◇Rey-recorder(Rey複雑図形検査レコーダー)   ◇『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』(宮口幸治・著)(2022/12/10 集団「Emication」)   ◇『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治・著)(2020/01/13 集団「Emication」)   ◇『どうしても頑張れない人たち』(宮口幸治・著)(2022/01/02 集団「Emication」)   ◇『困っている子を見逃すな』(宮口幸治・著/佐々木昭后・作画)(2022/1120 集団「Emication」)