集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

「初○○」 『どうしても頑張れない人たち』(宮口幸治・著)

初○○0102。 正月2日は,仕事の準備やお稽古を始めるのに縁起のよい日とされています。  「初○○」では,初市,初買,初袷,初懐紙,初鏡,初釜,初肥,書初め,初硯,初刷,初席,初風呂,姫飯などがあり,それらは正月2日に行うことでした。  書初めでは,若水で墨をすり,恵方(吉方)に向かって詩歌を書きました。その詩歌は「長生殿裏春秋富 不老門前日月遅」という漢詩が多かったようです。  みなさんの「初○○」は,何でしたか。  初図書は,ベストセラー『ケーキの切れない非行少年たち』の続編です。  前作を話題になってから手にし,本書も“続編が出た”と知りましたが,ずっと読まずにいて,やっと読んだ『どうしても頑張れない人たち―ケーキの切れない非行少年たち2―』(新潮新書)です。
 世間には「どうしても頑張れない人たち」がいる。彼らを支援するための知識とメソッドを詳述。  「頑張る人を応援します」。世間ではそんなメッセージがよく流されるが、実は「どうしても頑張れない人たち」が一定数存在していることは、あまり知られていない。彼らはサボっているわけではない。頑張り方がわからず、苦しんでいるのだ。
 前作の“非行少年”の切り口から,本書では“頑張れない人”へと移り,その「見える行動・姿」と「表しきれない思い・気持ち」への“支援する人”に語りかけています。  前著と“変わらぬ話”ですが,その先や提案に新しいもの(こと)がありました。  著者のいう支援する人(支援者)は,仕事として援助職についている人に限定せず,さまざまな形で頑張れない人たちや頑張れない子どもたちの周りにいて,支援している保護者,家族,友人,学校の先生,会社の上司などすべての人たちを指しています。  あなたは“支援される側”の一人ですか。  それとも,“支援する人(支援者)”の一人ですか。  頑張れない子どもが「“試し行動”を頻回に行う」とありました。これは,頑張れない子に限らず,意識しているかどうか分かりませんが,どの子も行っています。  この行動を繰り返しながら,新しい先生,友達との“関係づくり”をしています。  それが“周囲に不愉快を与える”ものであったり,“一線を越えた”ものであったりすると,その子への対応が大きく変わってしまいます。  その不愉快や一線を,頑張れない子は認識できていません。  ただ,自分の“安心の土台”を見極めているだけなのに…。
 本当の意味での支援とは,その少年が期待通りに更生しようが,一方で期待に反して犯罪を繰り返そうが関係なく,ずっと支援し続けることなのです。
 さまざまな立場にいる人達の「こんなとき,どうしたら…」のヒントが見つかります。先生や保護者の皆さんが,子供の行動を知り,対応を考える参考になります。  多くの大人に読んでいただきたい一冊です。  読書メモより
○ “勉強したい気があればいくらでも資料を提供する”の逆は,“やる気がなければ放っておかれる”ですが,本当に頑張ってほしいのは,放っておかれるやる気のあまりなさそうな学生なのです。 ○ ところが,一見無駄な活動に見えても,それがお金になれば評価は一転します。 ○ 本人のために何とかしなければと考えて,つい余計な言葉をかけてしまうのです。 ○ 自分自身を大切に敬う気持ちである自尊心は,いつまでも衰えない感情の一つです。 ○ “子どもの心の扉の取手は内側にしかついていない” (略) やる気のスイッチについても同様で,取手は内側にしかついていないと思います。 ○ 生きづらく困っている時に支えてくれる“安心の土台”,チャレンジしたい時に見守ってくれる“伴走者”なのです。 ○ 『動機づけ面接』(星和書店)という本によれば,動機には,準備(readiness),意思(willingness),能力(ability)という3つの大切な要素が含まれているとされます。 ○ やる気の原動力になっている共通点は,結局は“幸せになりたい”ということに行きつくのではないかと私は思います。 ○ だからこそ,支援者の笑顔は大切だと感じます。 今は,“あの子,表情が悪いな”と思った時は,まずは“自分の顔はどうかな”と思うようになりました。 ○ コロナ禍で在宅ワークが進む中,ますますメールの重要性が問われています。パソコンが苦手,メールが苦手というのはもういい訳にはならないでしょう。
   目次 はじめに 第1章 「頑張ったら支援する」の恐ろしさ 第2章 「頑張らなくていい」は本当か? 第3章 頑張ってもできない人たち 第4章 やる気を奪う言葉と間違った方法 第5章 それでも認められたい 第6章 支援者は何をどうすればいいのか 第7章 支援する人を支援せよ 第8章 “笑顔”と“ホスピタリティ" おわりに
【関連】   ◇『ケーキの切れない非行少年たち』(2020/01/13 集団「Emication」)   ◇なぜ少年は「ケーキを3等分」にできなかったのか? 『ケーキの切れない非行少年たち<漫画版>』#1(文春オンライン)