集団「Emication」別館

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『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』(宮口幸治・著)

ご飯1210。 天気のよい一日でした。  発刊されて書店に並んだ本書を見つけ、すぐに買おうと手を伸ばしましたが、その時は止めて後回しにしました。  話題になった前作(第1作第2作)で、少年たちの“認知機能の弱さ”が様々な困難に直面し続けていたことが事実をもとに述べられていました。紹介される事例、少年の状況や姿に驚きました。  彼らの実態を“4つの物語”とした『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』(新潮新書)です。  出版社の紹介文には、
 精神科医六麦克彦は、医局から派遣された要鹿之原少年院に勤務して5年になる。彼がそこで目にしたのは、少年院に堕ちてきた加害者ながら、あらゆる意味で恵まれず、本来ならば保護されてしかるべき「被害者」と言わざるを得ない少年たちの姿だった──。  累計100万部を超えたベストセラー新書の世界を著者自ら小説化、物語でしか伝えられない不都合な真実を描きだす。
とあります。本書が、“物語”だから伝えられることがあり、“実態”を元にしているから、具体的に伝わります。  少年院に入院した少年の物語ですが、それまで“日常”を過ごしています。そこで“気づく”ことがあれば、行動が始められます。
 本書に登場する非行少年たちも、かつては一定期間、小学校や中学校で過ごしていました。そこで障害に気付かれ、彼らの厳しい境遇に手を差し伸べてくれる人がいたら、違う生き方があったかも知れません。学校でしか救えない子どもたちが今も大勢いることを、一人でも多くの方に知ってもらえればと思います。
 著者は「学校でしか救えない子ども」がいると言います。  物語で少年の犯したこと、その日常を描き、最後の「解説」で背景などを述べています。  多くの先生、保護者のみなさんに読んでいただきたい一冊です。
六麦 克彦 精神科医。出身大学の医局化rア派遣された要鹿乃原少年院、および殿知良女子学院に勤務している。
田町 雪人 要鹿乃原少年院に在院していた元少年。出院後、振り込め詐欺の片棒を担がされ、失敗から殺人事件を起こす。
門倉 恭子 中学校の担任教師に暴行をはたらいて殿知良女子学院に入院。入院時15歳で、妊娠8か月。
荒井 路彦 14歳。父子家庭の父の気を惹こうと自宅に放火。延焼により、隣家の女性が焼死。
出水 亮一 14歳。幼なじみの女子児童(7歳)への強制わいせつ事件を起こして入院したものの、出院後に再犯。
 読書メモより
○ (最近は黄色が増えてきたな…)  一番多いのは窃盗の青ファイルだが、近ごろは特に黄色、つまり性犯罪系が増えている。 ○ 彼らの身体症状って、不安の一つのサインだと受け止めるのがいいかもしれないよ。 ○ 概して少年たちの返答は、こちらがした質問を最初に繰り返すことが多かった。 ○ 言われた通りの仕事ができない、叱られると背景が読めず被害的に受け取ってしまう、(略) 大金を騙し取られても気づかない。そして周りに支えてくれる大人がいない。 ○ 「IQ70〜84は、今は境界知能って言われていて知的障害には該当しないけど、(略) ひと昔前の1965年から1974年の十年間のICDでは、IQ70から84は、“境界線精神遅滞”って分類されていてね」 ○ 対処能力の問題なんだよ。 ○ “自己評価は他者との関係性の中で育つ”ってことですね ○ 何らかの非行をして少年院に入ってきたはずなのに、自分を“やさしい人間”と表現することが、当初はどうしても理解できませんでした。 ○ 専門書に書かれているような“性に対する認知の歪み”だけでは説明できない、虐げられてきた少年たちによる(略) ○ 身近なところで起こる少年事件。決して他人事ではないし、勉強が苦手というその子も、ひょっとするとケーキが切れないのかもしれない。
   目次 まえがき 第1章 田町雪人 第2章 門倉恭子 第3章 荒井路彦 第4章 出水亮一 第5章 少年たちのその後
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