『わたしが障害者じゃなくなる日』(海老原宏美・著)
3連休最終日は,雲の目立つ空でした。下り坂の天候でしたが,“春の訪れ”を感じる一日でした。
サクラ,つくし,リンドウ…
春のわくわく感で,沈みがちな気持ちを起こしていかないかな。
赤い表紙に,斜めに白い文字の題字,背景に20人の姿が描かれた『わたしが障害者じゃなくなる日 〜難病で動けなくてもふつうに生きられる世の中のつくりかた』(旬報社・刊)です。
“脊髄性筋萎縮症”という病気をもつ著者が「わたしは障害者なの?」と問いかけて話が始まります。
しばらく読むとクイズがありました。1ページに5人の絵が描かれた「クイズ 障害者は誰でしょう?」です。
5人は,外国人,目の悪い人,お年寄り,妊婦さん,車いすの人です。
さて,あなたの答えは?
その少し前に,障害の考え方が書かれています。
【古い障害の考え方】 階段しかない建物に入れないのは,あなたが車いすに乗っているからです。 【新しい障害の考え方】 車いすの人が入れないのは,階段しかないこの建物のせいです。あなたは,新しい考え方になっていますか。 生まれた時に医師から「この子は3歳くらいまでしか生きられない」と言われましたが,40歳を超えて元気に暮らしてみえます。 そう言われた子に,母親は
○ だれかのせいにしない ○ 兄弟をたよらない ○ なんでも本気でやる ○ 困ったときは「手伝って」と言う ○ 差別されたときは社会のせいにしていいと,よく言い,これを「母の5つの教え」として大事にしてきたそうです。 5つ目に「あれっ」と感じませんでしたか。人の助けがなくては出来ないことが多いのに,助けてもらえないときであっても“だれかのせいにしない”と言われたそうです。でも,「差別」は自分の努力が足りないのではなく社会のせいにしてよいとの教えでした。 こうした教えが,著者の“もと”になりました。
自分で考え,自分から動くようようになって初めて今までなにも考えていなかったことに気づきました。 自分が意志を持って動くと,まわりも動きます。 人は,ただ地面が盛り上がっただけの山の景色に感動できるのだから,同じ人間である障害者に感動できないはずがない。「平等」「思いやり」…,よく聞く,よく使う言葉ですが,著者の指摘に「どきっ」とする人がいるでしょう。 “普通に”過ごす重度障害者の著者が語る経験と気づきに,これまでと今,そしてこれからを考える一冊です。
もくじ この本を手にとってくれたみなさんへ 1章 わたしは障害者なの? 2章 障害者ってかわいそうなの? 3章 人間の価値ってなんだろう?【関連】 ◇脊髄性筋萎縮症(指定難病3)(難病情報センター) 【追記】 この本をよみながら,古い本(2000年刊)を思い出しました。 『口で歩く』(丘修三・作/小峰書店・刊)という作品です。 主人公のタチバナさんは,ずっと寝たきりです。でも,タチバナさんは,『なまけん棒』を手にして,いつも散歩に出かけます。 その方法は…。 本書と合わせて読みたいお話です。よろしければ,こちらも。 【追記 2】 合掌。
日本で初めての肢体不自由児の養護施設「ねむの木学園」を運営してきた女優の宮城まり子さんが21日、亡くなりました。93歳でした。https://t.co/sl0KQSvb6g
— 毎日新聞 (@mainichi) March 22, 2020