『未来を見る力 人口減少に負けない思考法』(河合雅司・著)
天気がよく、風もなく、穏やかな日曜日でした。
年が明け、岸田首相が年頭会見で「異次元の少子化対策」を挙げました。同日に、小池都知事が新年のあいさつで「子育て支援として5000円を給付」の少子化対策を述べました。
これらを受け、マスコミが「少子化対策」について、“競うように”大きく扱っています。
数年前、『未来の年表』が大きな話題になりました。それ以前から課題となっていた“日本の人口減少”について、データを示して、“不都合な真実”を伝えるとともに、“若者が夢を描いて暮らしていける社会を創っていく方策”を考えるを提言していました。
その時の“大きな話題”から、新しい政策・施策や行動が始まったと思いますが、その効果が現れたとは思われません。
その後、新型コロナウイルスの感染拡大が続く2020年9月に『未来を見る力 人口減少に負けない思考法』(PHP新書)が発刊されました。
それから2年、新型コロナ禍が続き、第8波の感染が拡大しているなか、行動制限のない年末年始を過ごしました。この時期に 本書 を読みました。
【備忘録】
◇令和5年1月4日 岸田内閣総理大臣年頭記者会見(首相官邸ホームページ)
◇人口推計(統計局ホームページ)
◇人口動態調査(厚生労働省)
◇人口動態調査 人口動態統計 速報 月次(政府統計の総合窓口)
◇少子化対策: 子ども・子育て本部(内閣府)
◇高年齢者雇用安定法の改正〜70歳までの就業機会確保〜(厚生労働省)
◇高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(e-Gov法令検索)
※ 総人口の推移(2022年12月20日公表)
今後の日本にとっての最大の課題は「人口減少・少子高齢化」である。2020年から2040年の間に、人口は1525万人減る。マーケットは年々縮小、企業も自治体も人材不足に陥り、一人暮らしの高齢者が激増する。 企業も、自治体も、これまでと同じ考え方で同じことをしていれば、変化に適応できず衰退していくしかない。戦略的に縮むためにすべきことは何か。人口減少の専門家であり、都市や地方の様々な「現場」で対話を繰り返してきた著者が、「売上や人口の拡大を目指す思考を捨てよ」「これから求められる能力はエンパシー」など、人口減少を希望に変えるための指針を示す。(出版社の紹介より)著者は、「人口をめぐる変化は悪化の一途だ」としながらも、それは「何もしなければ」であり、日本の未来が大きく変わる「岐路」にあると述べてります。その状況をとらえ、“自分の手で未来を変える”ことを提案しています。 はじめにで、
○ 皮肉な話ではあるが、コロナ禍は「人口減少を前提とした社会へのつくり替え」のためのラストチャンスとなるかもしれない。 ○ いくら“過去の成功モデル”にしがみつこうと努力したところで、いずれ頓挫するだけだ。 ○ 「縮む」というのは、普通に考えれば“衰退”を意味する。拡大路線によって成長を続けてきた従来の常識に照らせば“あり得ない考え方”であろう。もちろん、私も単なる「縮小」を訴えているわけではない。あくまで「戦略的に」と述べているのである。と述べています。 著者が言う「戦略的に」の提案が最善かの判断は分かれるでしょうが、「異次元の…」や「抜本的な…」という思いではなく、進んでいく方向と方法が示された“戦略”が求められているのは確かでしょう。 新型コロナ禍が治まり、「以前のように…」、「コロナ前に戻って…」などと求める声を聞くことがありますが、それは“未来”に目を瞑ることになっているように思います。 もちろん、マスクなしの行動や以前のような賑わいを否定しているのではなく、新しい日常から未来に向けた戦略的な暮らしを創っていく姿勢や言葉が肝心だと考えています。 “戦略”を提案する立場にある方々に、ぜひ読んでいただきたい。 そして、若者や現役世代の方には、本書から「自分にできることは…」と行動を始めることを期待し、本書をお薦めします。 高齢者の方は、未来を思考し、行動したことが“老害”にならないようにお気を付けを。
『「未来を見る力」を手に入れる10の思考法』より (1) 少子高齢化・人口減少を前提として考える (2) 過去からの延長線上に「未来」を見ない (3) 人口減少の影響を自分のライフプランに書き込む (4) 外国人やAIといった“不確定要素”に頼り過ぎない (5) 「戦略的に縮む」発想を持つ (6) 人手不足は「国内マーケットの縮小」として捉える (7) 量的拡大路線と決別し、「質の向上」を優先する (8) 人口の多寡で優劣を競う発想を捨てる (9) 居住エリアと非居住エリアを区分する発想を持つ (10) 政府や自治体に安易に依存できないと覚悟する
目次 はじめに 第1章 令和の時代はどうなるか──イオンやアマゾンが使えなくなる日 第2章 こんな考え方はもはや通用しない [1] 「人手不足は外国人、女性、高齢者で解決できる」のウソ [2] 「人手不足はAIで解決できる」のウソ [3] 経営とは拡大を目指すこと、ではない [4] 終身雇用はついに崩壊する [5] 本当に70歳まで働けるのか 第3章 マーケットの未来を見る力 第4章 地域の未来を見る力 第5章 コロナ後を見る力──「変化の時代」というチャンス [1] テレワークがもたらす雇用の流動化 [2] 老後生活の備え [3] 少子高齢時代に合わない「区分所有」 [4] 人口減少社会に不可欠な「エンパシー」 むすびにかえて──自分の手で未来をかえよう【関連】 ◇ベストセラー『未来の年表』河合雅司が考える「人口減少時代に日本ができること」 | 日曜日の初耳学 復習編(MBSコラム) ◇『未来の年表』(河合雅司・著)(2018/09/14 集団「Emication」)