文化の日。 『やめるときも、すこやかなるときも』(窪美澄・著)
青空の綺麗な、暖かい一日でした。
今日は,国民の祝日の一つ「文化の日」です。1948年に制定された「自由と平和を愛し,文化を進める日」です。
そして,今,第76回読書週間(文化の日を中心にした2週間・10月27日〜11月9日)です。今年は『この一冊に、ありがとう』を標語として実施されています。
最近、気に入った本と出合いましたか。
「いい話の図書館」で44冊目の図書『やめるときも、すこやかなるときも』(集英社文庫)を読みました。
本に恋する小林店長は,「本に恋する店主の呟き新聞」に
言ってしまっていいのかどうかわからないが、直木賞をとった作家の本はこれしか読んでいない。「いつか命が終わるということからは誰も逃れられない。私の命もいつか終わる、だからすねたりひがんだりしている時間はない、やりたいことをやる時間しか私にはないのだ」文中のこと言葉に出会った時、涙が流れた。この本をすぐ注文していました。とメッセージを載せています。 題名を見て(読んで)、浮かんだのは“結婚式の祝辞”で、男女の物語を想像しました。出版社の図書紹介にも、
忘れられるわけなんかない。僕が生まれて初めて結婚しようと思った相手のこと−。大切な人の死を忘れられない男と、恋の仕方を知らない女の、切なく不器用な恋の物語。 欠けた心を抱えたふたりが少しずつお互いを知り、日常の中で歩み寄っていく道のりを描く。他者と生きることの温かみに触れる長編小説。とあり、“恋の物語”に手が出ず、届いてから開かないままでした。 電車の移動で読み始め、しばらく読み進めるうちに、その“妖しい語り”に引き込まれていきました。 主人公は、家具職人の壱晴と、会社員の本橋 桜子で、それぞれの言葉で、節ごとに語りが替わっていきます。 物語は壱晴の言葉で始まります。
目を開けて、まず視界に入ってきたのは白い背中と、右の肩胛骨の下にふたつ並んだ小さなほくろだった。 その背中には見覚えがない。壱晴が初めて桜子と出会い、その翌朝のベッドでの様子です。 この偶然の出会い、出来事の後、しばらくして、工房へパンフレット制作の打ち合わせに来たのが桜子でした。 続く、桜子の語りは、金曜の夜、仕事を終え自宅に戻ったところです。 彼女の暮らし、家族のようす…。 いろいろな問題を抱えているようです。 壱晴は、12月のある期間になると声が出なくなり、1週間ほど続き、元に戻ります。それが“ある時”から、毎年その時期になると起こっています。今年も…。 壱晴の心の傷、桜子の抱える辛さ…。 互いの傷を見せ、受け入れ、二人が寄り添っていく…。 それぞれの友達、師匠、同僚、仲間との交流、その温かさが素敵です。 そして、家具職人として、師匠の姿と言葉に学び、成長していくようすが伝わってきます。 壱晴、桜子と一緒に、大切な人との繋がり、人の温もりを感じられる作品です。
目次 まえがき ──双子でもお出かけしやすい社会へ 第1章 試作機の日々 第2章 会社をつくるまで 第3章 ふたごじてんしゃ発売 第4章 つなげる あとがき 『ふたごじてんしゃ物語』関連年表 索引【関連】 ◇窪美澄 (@misumikubo)(Twitter) ◇やめるときも、すこやかなるときも 窪美澄(集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー) ?【「いい話の図書館」】 ◇最近紹介した本 ◇『ふたごじてんしゃ物語』(中原美智子・著)(2022/09/24) ◇『神さまの貨物』(ジャン=クロード グランベール・河野万里子・訳)(2022/08/06) ◇『いつか あなたを わすれても』(桜木紫乃・文/オザワミカ・絵)(2022/07/30) ◇『僕の歩き遍路』(中野周平・著)(2022/05/28) ◇『あめつちのうた』(朝倉宏景・著)(2022/05/14) *以前に紹介した本は ☆カテゴリー「いい話の図書館」から 「いい話の図書館」とは… 本との出逢いは,人生を変えます。辛い時,悲しい時,苦しい時,一冊の本が「生きる希望」を授けてくれます。 そこで,ステキな本との出会いを提供する「いい話の図書館」を全国津々浦々に作ったら,どんなに素晴らしいだろうと考えて館主を募集しております。「いい話の図書館」の館主のお仕事は,本棚にステキな本を並べて多くの人に自由に読んでいただくこと。そのステキな本は,テレビをはじめ,マスコミでも話題の小林書店のカリスマ店主,小林由美子さんが心を込めて推薦する本です。 ◇ ◆◆◆最後のお願い◆◆◆ 18年間ありがとうございました(いい話の広場) ◇小林書店さん (@cobasho.ai)(Instagram写真と動画) ◇志賀内 泰弘(Facebook)