集団「Emication」別館

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正月の蘊蓄(3)。『首里の馬』(高山羽根子・著)

ポスト1219。 寒い一日,朝は雪が舞いましたが,日中は青空でした。  毎年,正月を前に“屠蘇散”を求めて薬局などに寄りましすが,最近「置いていません」と言われることが増えました。  正月の食卓に“屠蘇”は並ばない家庭が増えたようで…。
◇屠蘇   一年の邪気をはらう祝い酒です。「屠蘇延命散」とも言います。    ・… 退治する,邪気をはらい寿命を延ばすという謂われがある。    ・… 病を起こす悪魔のこと。   屠蘇散は,一般的には「白朮」「桔梗」「桂皮」「山椒」「防風」などの生薬を配合した漢方薬です。大みそか屠蘇散,みりん,清酒を酒器に入れておいて「薬酒」にしたものを,屠蘇としてお正月に飲みます。 ◇雑煮   正月に雑煮を食べるのは,武士の時代の名残です。雑煮は武士にとって一番大切な正式の肴でした。雑煮を立派な秀衛椀に盛って出すのが,武士の宴会の始まりだそうです。   宴会に先だって,必ず主君と家臣の間で盃の応酬が行われました。これを“式三献”といいます。三つの盃が行ったり来たりしますが,その最初の盃が主客の間を回ることを「初献」といい,そのあと「二献」「三献」と続いて盃が納まります。それぞれの盃が回るごとに肴が変わります。その初献の肴が「雑煮」です。   つまり,雑煮がなければ式三献が始まらないし,式三献が始まらなければ宴会が始まりません。すべての宴会は雑煮から始まったのです。   一年の始まりである元旦の朝に雑煮を食べるのは,ここからきているといわれます。   また,雑煮は,地方によって,家庭によって違いがあります。お雑煮の材料,調理法,餅の形はさまざまな種類がありますが,汁は関東風の「すまし仕立て」 ,関西風の「みそ仕立て」などがあり,餅は一般的に,東は「切り餅」,西は「丸餅」を入れる所が多いようです。
 お宅の雑煮は,どのような味付け,餅を使いますか。  図書館に,芥川賞直木賞の受賞作品が並んでいました。それを見ながら「最近の作品を知らないな…」と,関心をもっていなかったことに気づきました。  黒い背景に,馬,羽根,本,花,骨…が並ぶ表紙にひかれて,第163回芥川賞受賞作『首里の馬』(新潮社・刊)を借り,読みました。  芥川賞の選評に,
吉田修一氏 ; 高山さんはおそらく「孤独な場所」というものが一体どんな場所なのか、その正体を、手を替え品を替え、執拗に真剣に、暴こうとする作家なのだと思います。   宮古馬の登場のさせ方は鮮烈で、この宮古馬もまた孤独の象徴だと読めば、そこには体温があり、怯えがあり、臭いがあり、疲れもある。 川上弘美氏 ; 『首里の馬』の中にある静かな絶望と、その絶望に浸るまいという意志に、感じ入りました。一読、すぐに○をつけました。再読し、さらにこの小説の奥行をさぐりたくなりました。
とあり,著者の描く“孤独”を楽しみに,そして,小説の“奥行き”に触れたいと思いました。  主人公は,沖縄で一人暮らしをしている未名子です。沖縄の歴史を集めた個人の資料館から話が始まりますが,それはボランティアで収入を得る仕事は別にあります。
 遠くにいる知らない人たちに向けて,それぞれに一対一のクイズを出題する。仕事の正式な名称は『孤独な業務従事者への定期的な通信による精神的ケアを知性の共有』。通称は問読者,というらしい。(略)  この仕事は企業のサポートセンターでもなく,また勧誘業務でもない。ウェブカメラの動画通信を利用するので,相手には自分の姿が見えてしまう。相手がどんな人間かも,つながるまでこちらはわからない。
 題名にある“”は,台風の後,未名子の家の庭に静かに登場する「宮古(ナークー)」のようです。  この馬は,どこから来たのか,そして何故人に慣れているのか,未名子と,どのように関わっていくのか…。  問読者として話すヴァンダは,この馬のことを聞いて,
「トーテムという思想があります。これは土地の,あるいは一族ごとの単位での思想であったり,また個人的なものであったりします。その人を守る,主語をするものの存在といったものです。形としては獣や鳥,魚などの動物や,植物の場合もあります。集団の場合はその思想の統制などの社会学にも関わりますし,個人の精神守護に関する動物であれば,サイコロジーの領域で語られることもあります」
と未名子に話します。  この後,未名子は…。  もやもやしながら読み,そして読み終えました。  「すっきりした」とはならず,そこに謎が…。  この謎を…,話の解釈を…,読み手に任されているようです。  わたしは…。 【関連】   ◇高山羽根 Haneko Takayama (@HighMt_HNK)Twitter)   ◇芥川龍之介賞(公益財団法人日本文学振興会 - 文藝春秋) 【参考】
雑煮1219。