民具について 『負器』(続 つくで百話)
朝は曇り空でしたが,昼頃から雨になりました。
この時期の雨は「冷たい雨で…。」で,気分はそうなのですが,天候はコートのいらない陽気でした。
今日はバレンタインデーでした。
269年,自由結婚禁止政策に反対したバレンタイン司教が処刑されたため,恋人たちの愛を誓う日となりました。
『続 つくで百話』(1972・昭和47年11月 発行)の「民具について」です。
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民具について 小林 峰田好次
負器(しょいこ)
負器(しょいこ)は,人力で物資を運搬する際の至極重宝なもので,簡便で合理的な実用品であるばかりでなく,素朴な美術品でもある。昔々から今日も尚利用される道具である。
製作材料としては,木と藁とで始まっている。木工部は,高さ三尺余の大物から二尺五寸程度の小型のものなど,巾は背中に合わされ,下部一尺二寸,上部で一尺程である。左右の堅木と三本の横木とを組み梯子型に作られる。
最上部の横木は竪木の先二,三寸下とし,左右に一寸ばかり“ほぞ”の余りを突出させる。竪横の両角が,たね縄の引掛けとなるよう工夫されている。第二の横木は更に五六寸下に入れられて,これに肩綱の“桎”が取り着けられる。この横木はほぞの余りを左右に突出して作られているもの,突出さないもの,また“桎穴”のあるものなどがある。最下部の横木は竪木と各々一寸程に,両角交錯に組まれて,肩縄とたね縄の取り着け場所にする。
こうして出来上った組木へ背縄を下部から巻き,竪木の大半に及ぶ。
背縄には特別の細縄を用いる。後日の変色を防ぎ,伸縮の差を少くするために水漬けあく抜,乾燥,より,こすり等の工程を経て入念に仕上げた縄を用いる。
肩綱の組縄も古くは藁製であり,たね縄も藁の三つ繰りであったが近年は,麻,布,しゅろ,ベルトなど様々な材料が用いられている。背縄は緩みを避けるため,背面の左右竪本に沿って一筋一筋余った細縄で巻編みして納めるのである。
負器は古来全国的に用いられた運搬具で,土地土地で幾分,大小構造に差があり,荷物のたね方,たね繩の結び方などにも差があって,土地風を現わしている。
細縄の背縄には弾力があって背に密着せず,荷物の重味を柔らげる効果がある。
尚,組縄だけのもの
もっこ,たん架,ふご,蛇籠 など
作業に合わせて工夫された運搬具が見られる。
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