『電王』(高嶋哲夫・著)
今日の良い天気で,暖かい日になりました。
“春”を感じることが増えています。
今日2月26日は「二・二六事件の日」です。
陸軍の皇道派の青年将校が,対立していた統制派の打倒と国家改造を目指し,約1500名の部隊を率いて首相官邸等を襲撃しました。内大臣・大蔵大臣等が殺害され,永田町一帯が占拠されました。
先月紹介した『置かれた場所で咲きなさい』の著者 渡辺和子氏は,陸軍教育総監 渡辺錠太郎氏の次女で,4人兄弟末っ子でした。
1936年2月26日,9歳の渡辺和子氏の目前で“父が殺害”されました。
“歴史”と“人の心”を思う2・26でした。
トップが「責任を取って辞任…」と何かとお騒がせな“将棋の世界”ですが,人気アニメや映画などにより人気が盛り上がっています。
そして,チェス,囲碁,将棋などで「人 vs コンピュータ」の勝負が行われています。
その「名人 取海 vs 人工知能 ブレイン」を描く『電王』(幻冬舎・刊)です。
著者の高嶋哲夫氏は,『首都崩壊』(2014年8月15日)や『富士山噴火』(2016年1月6日)など“災害を描く”印象が強く,少し意外な題材でした。
描かれる,将棋,数学,人工知能の世界・状況は,“これまでと同じ感じ”でした。
取海創と相場俊之という二人の“突き抜けた者”を描きながら,棋士という世界の厳しさ,AIの進歩の現状などが分かります。
小学生の取海と相場を描いたところで,「あるだろうな。」と思いました。
テストでも成績は中の中。何度かのテストの後,相場は,たとえば算数なら取海が正答を出しているのが偶数,あるいは奇数のどちらか一方が正答の問題だけだと分かった。教師は気づいていない。 「なぜ,全部に正しい答えを書かないの」 「百点取ってもええことないやろ。前の学校じゃ,いじめられたわ。誰のを写したとか聞かれた」先生,気づいていましたか。 また,大人の教師が小学生の二人と将棋を指します。まず,相場が10分もかからずに勝ち,悔しがる教師は取海とも指すと,教師が勝ちました。
「なんで負けたの。僕との勝負ではあんな指し方しないのに」 「負けた方がええんや。相手は先生やで」 取海は妙に大人びた顔で囁いた。 確かにそうだと思った。相場に負けて顔つきが (略) 取海は小学校三年生ですでに大人の扱い,世渡りの術も身につけていたのか。あなたの学校には,“突き抜けた姿”を隠している子供はいませんか。 中学校へ進んでいく頃,小学校を終える頃,相場は学習塾に通ううことになります。そこで出会った“数学”が,興味を広げていきます。
作手のデイパックをおろし,新しいプリントを置いた。相場は目をプリントに向けたまま,弁当と水筒を出す。将棋同様,数学の考える面白さに相場は目覚めた。 (略) 西村と同じ空気を元治にも感じる。 「焦らずゆっくりだ。だが大したもんだ。西村が入れ込むのも分かる。俺が身近にいて気づかなかったモノを,あいつは見つけだしたんだ」将来「7冠最強棋士」と「世界的AI研究者」へと別nの歩みを始めます。 ラストの「7冠最強棋士 vs 世界的AI研究者」の対戦に向かっていく二人の生き様,それを取り巻く人々の思い,楽しめます。
目次 プロローグ 第一章 二人の神童 第二章 親友 第三章 初めての世界 第四章 家族 第五章 奨励会 第六章 それぞれの道 第七章 新しい道 第八章 自立 第九章 再開 エピローグ【関連】 ◇『置かれた場所で咲きなさい』(渡辺和子・著)(2017年01月12日 集団「Emication」)