集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

アサギマダラ。 『線は、僕を描く』(砥上裕將・著)

アサギマダラ1004。 朝は雲が目立ち,「予報は外れたかな」と思いましたが,日中は青空が広がり“暑い日”になりました。  「天高く馬肥ゆる秋」。しばらく良い天気が続くようです。  昼,出先から戻ると,花壇のフジバカマ藤袴秋の七草の一つ)の近くにひらひらと舞う蝶がいました。  アサギマダラです。(写真クリックでInstagramへ)  近づいて見ると,フジバカマの蜜を美味しそう(?)に吸い,花から花へ優雅に飛んでいます。  今年初めての飛来です。しばらくすれば,美しい蝶たちの乱舞が見られるかな。  昨年の本屋大賞第3位の『線は、僕を描く』(講談社・刊)を読みました。  上位入賞ということを知るだけで,内容を知らずに手にしました。  表紙に蔓(?)が描かれ,座って遠くを眺めているような裸足の男性がいました。目次に続いて「登場人物紹介」があり,主人公の大学生 青山霜介に続いて水墨画家が4人,大学生2人が書かれています。  “大学生”そして“水墨画”の話のようです。
 両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介(そうすけ)は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山(しのだこざん)と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛(ちあき)は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。  はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。
 主人公(霜介)が出かけたアルバイト先で,出会った西濱さん,そしてバイトを手配した古前くん,そして老人(篠田湖山)が,霜介の“”に深くかかわっていきます。  その舞台が“水墨画”だとは,すぐには分かりませんでした。  霜介がいるガラスの部屋…。そこにいるのは…。  霜介が出会う水墨画,師匠や名人に教えられる水墨画,寄り添う千瑛の水墨画…,それが生きることを“恢復”させていきます。  読みながら,読み終えて,題名が「僕は…」でなく「線は…」であることを納得しました。  そして,巨匠 篠田湖山の“人を育てる”ことに驚き,学びたいと思いました。  絵や挿絵はありませんが,水墨画を語る言葉が“鮮やかな絵”を浮かばされます。  水墨画に向かう主人公が人生を見つめる思いと心に惹かれます。  若者を描く小説,そして芸術を描く小説,それが交じり合い描かれる日々を楽しみませんか。  読書メモから
○ 自分ではよく分からない。  「ええ,ときどき言われます。自分ではそう思わないけど」  「いや,きっとご両親がしっかりしておられるのだろう。箸の使い方もとても上手だ。器用な方だね?」 ○ 「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」 ○ 「まじめというのは,よくないことですか?」  と訊ねた。湖山先生はおもしろい冗談を聞いたときのように笑った。  「いや,まじめというのはね,悪くないけれど,少なくとも自然じゃない」 ○ 水墨画ではそれを気韻というんだよ。気韻生動を尊ぶといってね,気韻というのは,そうだね……筆致の雰囲気や絵の性質のことも言うが,もっと端的に言えば楽しんでいるかどうか,だよ」 ○ それはもしかしたら,命の根源に限りなく近い姿なのかもしれない,と,出来上がった五輪の菊を眺めて思った。
   目次 第一章 第二章 第三章 第四章
【関連】   ◇線は、僕を描く(著:砥上裕將)公式サイト講談社)   ◇本屋大賞