集団「Emication」別館

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地震動予測地図。 狩漁の達人犬千代さ(1) (つくで百話 最終篇)

花0327。 曇った日で,肌寒い日でした。  昨日のニュースで,地震調査委員会から「全国地震動予測地図2020年版」が公表されたことが伝えられていました。  最近も,"東日本大震災の余震”の続く,東北や関東の太平洋側で確率が上がっています。そして,南海トラフ巨大地震の影響が懸念される東海から四国の太平洋側地域を中心に高い確率となっています。  地震に限らず,いつ災害が襲いかかってくるか分かりません。  「もし,今,災害が起こったら」の意識をもって,"災害への備え”をしっかりとしておきましょう。  『つくで百話 最終篇』(1975・昭和50年7月 発行)の「昔話と伝説」の項からです。 ********     狩漁の達人犬千代さ  犬千代さの家は,作手村の川手部落にあった。県道沿いの犬千代さの家には,小さい子供が六・七人もいたので障子は破れ放題,街道からは家の中が,まる見えであった。とりつきの部屋には,米を入れた叺が四つ五つ並べてあった。叺の上には脱ぎすてた着物が散らばっていた。  座敷の仕切戸には,犬千代さの愛用の猟銃が立て掛けてあり,そのそばに弾薬帯や背負袋が置いてあった。  戸間口の板囲いには釣竿が五・六本掛けてあり,魚篭も二つくらい引っかけてあって,ポン千代さの家らしい装いがうかがわれた。  雨降りの日などには,囲炉裡ばたで煙草きせるをくわえた犬千代さが,義太夫本に見いっている姿も見受けられた。  この人は,犬のような鋭い嗅覚・視力を持っていて,猪や鹿などの跡を探すことに特別の技能を持っていたことから,世間の人たちが犬千代と呼ぶようになったのだと聞いている。犬千代さは,山の中では体を前かがみにして,小きざみに歩く。ボロウをくぐりぬけるさまは,さながら犬のような早さだと言われていた。  犬千代さは,晩年の七十五・六才のころ,口癖のようによく述懐していた。 「俺ァ,この鉄砲で猪をどえらいこと射ったもんだ。あと四十五頭で三千ちゅう勘定になる。」  十五・六の頃から猪ボイをしたと言っていたから,約六十年間に三千頭と言うと,年平均五〇頭射った計算になるが,これにはサバよみがあったらしい。しかし,猪ボイの達人として,東三河一帯に鳴りひびいていた犬千代さの口から聞かされると,そうかも知れないと錯覚を起こさせる程,犬千代さの名は知れわたっていた。  犬千代さの猪うちのお台所は本宮山であった。毎年,猟期になると一宮町や額田町の定宿へ出かけて,冬中家へ帰らない年も珍しくなかった。本宮山の一のクボに飛び込んだ猪は袋の鼠も同然で,必ず犬千代さに仕止められたと聞いている。 犬千代さ0327。「おらァー発で二頭仕止めたこともあるぞ。」とも言っていた。二頭並んで歩いている奴を,横っ腹をねらってブッ放したら見事にたおしたとか。それが当歳のウリンボウであったとしても,犬千代さならではできない芸当である。  こんな名人芸の犬千代さでも,九死に一生を得たような危険に出合った事もあったそうだ。間近で射った弾が,猪の急所をはずれたために,猛り狂った手負猪が突っかかってきたので,そばにあった松に飛びあがったものの,地上三尺くらいしか上には上られない。犬千代さの脚へとどきそうなところを,猪がグルグル廻って,いまにも噛みつきそうにするので,片手で山刃を振り廻してはいたものの,生きた心地はしなかったそうである。  鳳来町只持辺の山で,トヤに寝ていた猪を見つけた猪ボイの一組があった。六名ばかりの仲間の中に犬千代さも混っていた。 「今日の猪ボイは俺にまかしてくれんかい。みんなはここで見物しておれよ。」と,犬千代さが言った。一同は,犬千代さのお手前拝見と決めこんで,焚火を囲んで雑談にふけっていた。  仲間から離れた犬千代さは,猪のトヤを中心にして周囲をグルグル廻りながら,得意の義太夫のさわりをうたい始めた。廻りながら猪を囲む輪を次第に縮めて行った。猪は,義太夫の声があちらからも,こちらからも聞こえてくるので,どちらへ逃げたらよいか途惑ってしまったらしく,じっとすくみ込んでいた。一〇メートルばかりの距離に近づいた犬千代さは,猪の頭をねらってブッ放した。かくして大猪は一発で仕止められた。この日の犬千代さの策戦には,仲間の者も,ひとしく感歎の声を放ったそうである。 (つづく) ******** 【「つくでの昔ばなし」掲載】   ◇犬千代サ(いぬちよさ)  注)これまでの記事は〈タグ「つくで百話最終篇」〉で  注)『続 つくで百話』の記事は〈タグ「続つくで百話」〉で  注)『つくで百話』の記事は〈タグ「つくで百話」〉で 【関連】   ◇地震調査委員会関係報告書地震本部
地震地図0327。