在庫ロス。浄瑠璃姫(2) (つくで百話 最終篇)
天気のよい日でした。
新型コロナ禍で“在庫ロス”を抱える業者と消費者を結ぶサイトがあります。
今回は観光地のお土産を選び,「和歌山のおみやげお任せパック」が届きました。
在庫ロス掲示板は、全国の在庫ロスを抱える「生産者・卸業者・販売者」と「購入者」を直接つなぎ、特別価格で商品が購入できるオンラインプラットフォームです。 イベントや会合などの中止、インバウンド需要減少などで、予想していた消費が見込めず、在庫ロスが生じてしまっている企業が増えています。 (略) 特徴? 生産者・卸業者・販売者等の出品者と直接やり取りができる 特徴? お得な価格で商品が購入できる 特徴? 今まで出会えなかった商品に出会える可能性がある 特徴? 在庫ロス・食品ロスの解消につながる10種のお土産とおまけ,業者からの手紙が入っていました。和歌山を感じながら,美味しくいただきます。 『つくで百話 最終篇』(1975・昭和50年7月 発行)の「民族と伝承」の項からです。 ******** 浄瑠璃姫 (つづき) 浄瑠璃と侍女の冷泉月小夜は,しばらくとまっていた峯の薬師さまに別れを告げて,お山を下った。門谷の村を離れて一里ばかり行くと追分茶屋があって,その頃評判の追分まんじゅうを売っていた。道ばたには「ひだり ぜんこうじみち」「みぎ ぼうらいじみち」と,深く彫り込んだ石の道しるべが立っていた。 「いよいよ,お薬師さまともお別れだね。」 浄瑠璃は,鳳来寺山なつかしさに気をとられていた。追分茶屋で一休みした二人は,後がみを引かれる思いで出掛けた。追分から三丁ばかり下ると,北山の原始林があった。そこに笹ヶ谷のきれいな水が流れていた。 浄瑠璃は,この沢を登って行ったら鳳未寺山が見えるに違いないと思ったので,沢に沿った小径を登りはじめた。そのうちに,どこからともなく二・三匹の山猿が出てきて,後になり,先になりしてついてきた。三丁ほど登ると,急に見晴しのよい頂上に出た。 山猿たちは,ふきの葉に水を入れて持ってきて,浄瑠璃らにすすめた。ちょうど秋の盛りだったので,山ざるたちは山柿やあけびなどを採ってきてくれた。 ここは干寿ヶ峯であった。はるか東北の方角に,鳳未寺山が高くそびえていた。 「ああ 峯のお薬師さま」深々と頭をさげて拝み奉った浄瑠璃は,心のうちそこから峯の薬師さまに引きつけられるのであった。 「ああ ここに居たい。鎌倉へ行くのはいやだ。頼朝さまは,私を殺すに違いない。ああいやだ。いやだ。」と,だだっ子のように声をあげて泣いた。 「おひいさまがおいやなら,小夜も参りません。この山に隠れることにしましょう。」と,月小夜も同じ気もちになった。 話が決ったので,この千寿ヶ峯に仮の庵を造ることになった。その夜は,山猿たちが寄りそって体を暖めてくれたので,岩かげで眠った。あくる朝,月小夜は山を下って,ふもとの百姓家を訪ね,山小屋を造ってくれるようたのんだ。百姓たちも,貴い身分のお方とわかったので快く引き受けてくれた。山小屋は一日で出来あがった。 近所の人たちは米やみそなど,いろいろの日用品を持ってきてくれた。それらの人々には,身につけていた路銀をわけて,お礼をしていたが,どの人も親切に浄瑠璃らを助けてくれた。 山猿らも,時々山の物を持ってきてくれた。浄瑠璃と月小夜の二人は,人里はなれた笹ヶ谷の奥の,千寿ヶ峯のいほりで平和な年月を送ってなくなった。 それから幾年も過て,世は戦国動乱の時代となった。織田信長は,度かさなる激戦のためか,ふらふら病となって床についていた。侍女のお通は,信長の病気がなおるよう折願のため,鳳来寺の峯の薬師におこもりをした。お山にいるうちに,お通は浄瑠璃姫の話を聞いた。信長のもとへ帰ったお通は,節面白くそれを信長に語り聞かせた。この話を聞いているうちに信長の病はうす紙をはぐように良くなり,まもなく全快した。 お通の浄瑠璃物語は,たちまち世の中に広く知れわたった。やがて,この物語りに音曲の合奏が加わることになった。 その頃,大阪の堺の町では琉球から伝わった蛇皮線(今の三味線)がはやっていた。これを伴奏とする浄瑠璃物語は,全国でもてはやされ,義太夫の元祖となった。 (峯田通俊) ******** 注)これまでの記事は〈タグ「つくで百話最終篇」〉で 注)『続 つくで百話』の記事は〈タグ「続つくで百話」〉で 注)『つくで百話』の記事は〈タグ「つくで百話」〉で 【関連】 ◇【在庫ロス掲示板】 (@corona_no_baka)(Twitter)