「経糸緯糸」。大昔の稲作(8) (つくで百話 最終篇)
この夏,中島みゆきさんのヒット曲「糸」をモチーフにした映画『糸』が公開されました。ご覧になりましたか。
「♪縦の糸はあなた 横の糸は私」…。
“糸”からの連想(?)で,「経糸緯糸」という言葉を思い出しました。
自分は使えませんが,織物で使われる言葉で,それを“人生”を語るときに使われるようです。
織物は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織り出されます。 染色された経糸は,はじめに整経という過程で引きそろえられ,織物の長さ分が織機にセットされます。緯糸は経糸の間をくぐり,柄を織り出していきます。と用語の説明にあります。 それを知ったとき,「なんだ,“たて糸”と“よこ糸”のことか。」と思いました。そして,「では,何で“縦糸”と“横糸”とは書かないの。」と疑問がわきました。 調べると,正しいのか確かめていませんが,次のような説明がありました。
織物の糸を表すのに使う「経」と「緯」は,地球の経緯と同じです。 「縦横」は,縦と横を90度回転させた時に,縦と横が入れ替わってしまい,「横糸」となります。織物を織るときにタテ(長さの方向)にある糸を「経糸」といい,抜き糸とも言われる幅の方向の糸を「緯糸」としているようです。 こうした「経糸(たていと)」と「緯糸(よこいと)」を組織(相交錯すること)して,織物ができあがります。 「人生は織物と同じで,その人のAという経糸に,Bという緯糸を織り込んで…。」と。 あなたは,A(経糸)とB(緯糸)に,何をあてますか。 『つくで百話 最終篇』(1975・昭和50年7月 発行)の「民族と伝承」の項からです。 ******** 大昔の稲作 西尾敏男 八、 考えてみれば農業の歩みは遅々として長い。稲を作りはじめて千二百年,女のひとが向い合って杵で搗かなければ穂から籾がはなれなかったのである。 稲搗けば皸る我が手を今宵もか,殿の稚子が取りて嘆かむ, 稲を搗いて,皸いっぱいの手だけれども,今夜もまた若旦那さまがきて嘆いてくれよう。 ……哀しいけれども人の情けが滲んでいて救われる歌だ。私の母も皸に膏薬をつめては,熱い火箸で押えこんでいた。 (前愛知県追進営農大学校長) 参考にした文献: 日本古代稲作史雑考……安藤広太郎 日本の歴史巻1〜巻4……中央公論社 日本の歴史巻1〜巻3……読売新聞社 体系日本史巻1……日本評論社 歴史科学体系巻1……校倉書房 講座日本史巻1……東大出版会 ******** 注)これまでの記事は〈タグ「つくで百話最終篇」〉で 注)『続 つくで百話』の記事は〈タグ「続つくで百話」〉で 注)『つくで百話』の記事は〈タグ「つくで百話」〉で