集団「Emication」別館

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作手の狂俳(5)(続 つくで百話)

藤0509。 曇り空で,肌寒い一日でした。日中に小雨が降りましたが,予報にあったほどの雨ではありませんでした。

 午前中,届け物があり,久しぶりに自動車を運転して出かけました。新緑が“輝いて”おり,美しい景色にうきうきする感じでした。

 帰りは,少し遠回りしてきました。途中にある施設や駐車場は,どこも閉じられていました。

 新緑や季節の草花を眺めて,心地よくなりました。

 『続 つくで百話』(1972・昭和47年11月 発行)の「作手の狂俳」の項からです。

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    作手狂俳選

   川合  森本鄙楽

金襖  名香梅の庭に洩る

せつなし  世は良心のまま越せぬ

一服  畦の煙が輪を画く

素敵  朱の廻廊を波洗ふ

日の出  軍手はづして掌を合す

   北畑  権田耕石

手招き  口紅が素通りさせぬ

娘十八  母も惚れての数に入る

あこがれ  東都の空へ鍬すてる

ハハン  にっこり膝を打って立つ

笑ひ声  話は若き日に還る

   川尻  阿部華影

霜晴  富士の勇姿を近く見る

夢よ  運命と諦らめますわ

周航船  悲話の湖面へ花手向く

有難迷惑  

無実の浮名立てられる

憂愁  香煙縷々と立ちのぼる

   川尻  加藤仁丸

拝観  古都に歴史の煤を嗅ぐ

神前結婚  恋の玉串捧げ合ふ

待ちかねて  鍵っ子遅き母に泣く

社交家  個性波にダイヤル合す

殿り  下女の入るころ風呂ぬるい

   長者平  鈴木啓翠

原  村の古墳へ露深い

つよい 団結の力を見せる

落付き顔  初舞台とは思われぬ

隠謀  地下室に図面を開く

清き恋  尊敬し合ふ丈で居る

歌舞伎0509。

   見代  権田孤星

処女峰  妖しきまでに空晴れる

巻煙草  ライター弾く爪赤い

素的ね  個性美が輝くようよ

寥々  休耕田に風白い

中秋  鼓笛のリヅム風に乗る

   黒瀬  林双木

村雨  段嶺晴くかき曇る

成功よ  どうにか食って行けますわ

周航船  島の緑にドラ響く

助けてよ  傍観的はヒドイわね

月朧  木念人も詩を語る

   川合  峰田静花

照らす月  手向の花に露光る

明かされず  母と言えない義理に泣く

年越し  訛のとれた子が帰る

若返る  赤い蛙はよく効くね

北の海  蟹工船の灯がうるむ

   和田  佐宗侯計

軒提灯  ニコヨン今日の憂さ晴らす

狼狽  へそくり置いた場所にない

努めて  伜夫婦に気を合わす

甘党  波乱なき一生送る

線路堤  何処まで続く麦熟れる

   中河内  佐宗巴仙

避暑宿  谿に湧く霧窓に入る

しゃにむに  勝たねばならぬ鞭入れる

猛進  今日国体の幕開く

古今無類  三億円の足消える

巻脚絆  戦闘帽の父りりし

   川尻  阿部青邨

秋日和  湖畔三河路客余す

年輪  芸に枯淡の味が出る

此の頃  海を返せと漁夫怒る

安保  国論割って嵐よぶ

記者  刑事と腐れ縁切れぬ

写真0509。

   川尻  原田草風

河清し  秋の深さを手にすくう

近代的  ボタソ一つでお湯が出る

ガールフレンド  割り切った交際清い

釣好き  妻のぐちにも耳かさぬ

館の灯  庭石が夜露に光る

   川尻  阿部古城

早梅  丹那抜ければ春匂ふ

放射能  文化自殺の兆ある

謎  秘めた千古の扉を開く

処女林  御料事務所の屋根透る

巻脚絆  知事が緑化の村を訪ふ

   川尻  原田朱 ※

帰り道  愛の片鱗ほのめかす

心臓ね  年増になればあゝかしら

対立  労資妥協の線見えぬ

こそこそ  二人は知らぬ間に消える

いかすわ  男性的なボリュームよ

   小林  峯田愛山 ※

風薫る  古寺の昼牡丹散る

四面楚歌  首相も遂に野に下る

人間味  不敵な女囚も悔いて泣く

年の功  苗取りは嫁には負けぬ

悩み  鏡の顔が気に入らぬ

   岩波  加藤春仙 ※

仁王門  白蟻群れて寺寂びる

林間  細雪樹間にけむる

謹しんで  神前の拍手清い

山里  段々畠に柿熟れる

放言  俄易者が手筋見る

  ※印は故人

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