集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

民具について 『自在釣』(続 つくで百話)

芽0212。 曇り空の一日でした。こういう日は,気温が上がらず“寒い”のですが,昨日と比べて“暖かい”感じでした。  この気候では拙いと思いながらも,道路凍結も無く助かっています。  『続 つくで百話』(1972・昭和47年11月 発行)の「民具について」です。 ********     民具について   小林 峰田好次 自在釣  昔は煮炊きに自在鈎が使われた。自在鈎は,竹の筒,松板の止木,梅の木の鉤と吊縄とを以って作られ囲炉裡の上に吊り下げて,茶釜,鍋,炮烙,薬罐,鉄瓶等の釣手物を懸けたのである。  竹の筒は五節にとった,上から一節毎に,福,徳,長命,金持,幸いと呼んだ,松の止木は,小猿と言い,魚形のものも有るが,作手では単純な切子が多い。  鉤には梅の徒長枝が喜ばれた。 自在鉤0212。 竹筒の竹,鉤の梅,と松竹梅を意味し小猿の松の魚は鯛で,目出鯛であって縁起を現わしたというわけである。吊縄は径五分ばかりの“三つ繰り縄”で丹念にない上げられ,こすり上げられ,すべすべと美しい繩である。  さて,吊縄の桎を小猿の尾部に嵌め,上から二節目で一まきして締め,第一節の下に嵌め込まれた横棒へまき,梁の環へ二まき三まき捲き通し,その先を下げて横棒の反対側をまいて捲き納める。小猿の頭部の穴へ鈎捧を通しその先を竹筒に入れると,鉤の重味で縄は張り梁の環からぶら下がって前後左右へ揺ぐようになる。鉤は小猿の頭部を上下すると長くも短くもなる。これで使用までの工程を終り,茶釜,鍋をかけると,その重味に依って吊繩は一層緊張するわけである。  自在鉤は至極単純な機能ではあるが,合理的なものである。竹筒と鉤はぶら下がって垂直に保たれ,小猿と縄とによって全体が三角形に保たれる。その姿には独得なバランスがあって妙味深い。材料としても,竹,縄,松,梅と種別があり,大小細大の変化に富み,竹の節,縄目,板目,鉤の肌と夫々の表情にも持味がある。竹の紫褐色の輝き,黄色い縄,黒い小猿鉤等,質の対照,色彩の対比などと多くの美の要件を充たし,それ等を取扱った人々の心の優しさ深さを余すところなく表わしているのである。 テッキ0212。 囲炉裡の中には,嚊座と下座の隅に五徳を置き茶釜と鍋との懸替えにあてる。餅を焼く際には“テッキ”を灰の中に据え,オキを掻き入れて用を弁ずる。こうして自在鉤と茶釜,鍋で囲炉裡の全容が調うのであって四角の炉の中心へ自在鉤,そして茶釜或は鍋,薬罐の吊下った様子はまことに首肯かれる好ましさである。  炉に粗朶が焚かれ,赤い炎が鍋尻をなめ,青い煙が天井へ立ち昇る。湯茶が沸き汁野菜が煮られ,酒が暖められ,魚が焼かれて全家族が集合するのである。  食事の時ばかりではなく,来客もここに迎えられるし,寒い季節には唯一の暖房でもあるわけである。家庭生活の中心の場所なので,小さい作業をも加えながら,ここに詩が歌が,童話が学問が,ニュースが子供達の教育が,笑いが悲しみが,喧嘩までも行なわれたのである。 ******** 注)これまでの記事は〈タグ「続つくで百話」〉で 注)『つくで百話』の記事は〈タグ「つくで百話」〉で 【ニュース】  11日,世界保健機関(WHO)は,中国を中心に流行している新型コロナウイルスによる病気の正式名称を「COVID-19」に決定したと発表しました。  ニュースや報道番組での名称として使われるようになるでしょうか。   ◇新型ウイルスの病気、正式名称は「COVID-19」 WHOが命名BBCニュース)