集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

「作手のお城物語」(続 つくで百話)

秋1112。 天気の良い日になり,綺麗な青空でした。日中は暖かくなり,夕方になっても暖かさを感じました。  昨日の夕方は不安定な天候で,当地も激しい雨になりましたが,豊川市では大きな雹が降ってニュースにも取り上げられていました。   ◇大気の状態不安定に…愛知・豊川市で『雹』降る(2019/11/11 FNN.jpプライムオンライン)  今日お会いした方が,豊川へキャベツの収穫に行った時のようすを話してくれました。  大きく育ち,綺麗に巻いていたキャベツが,雹でバリバリになっていたそうです。傷んだキャベツは収穫できません(商品にならなりません)。その畑の辺りでは3cmほどもある雹だったそうです。  自然に恵みを得ながらも,自然に苦しめられることあります。  苦しみが長引いたり,繰り返されたりしないことを願います。  『続 つくで百話』(1972・昭和47年11月 発行)の「作手のお城物語」からです。 ********     作手のお城物語(設楽町 沢田久夫)       作手三十六地獄  いつの時代に誰が言い出したのか知りませんが,「作手三十六地獄」という言葉があります。中世の作手郷の範囲を示すものと思われますが,何故素直に「作手三十六村」と言わなかったのでしょう。地獄などという厭な言葉を使ったのには,それ相当の理由があったのでしょうが,今では全く分らなくなっています。  いったい作手のどこが地獄なのでしょうか。  地理のすきな私の友人はこう言いました。作手高原には日本でも珍らしい中層湿原がある。その大半は最近の農構事業で水田に変ってしまったが,なお長根山湿原をはじめ,村内の各所に多くの泥炭地が残っていて,中には背丈も没するほどの深泥地があるから,恐ら泥地獄の意であろうと言うのです。  歴史のすきな友人は,作手は広々とした水田地帯をもっている。三河山間部では最大の穀倉地帯だから,戦国の群雄にとっては何物にもかえ難い宝車にちがいない。従ってその争奪をめぐって幾度かの攻防戦があり,住民の難儀は一方ならぬものがあった。家を焼かれ,村を逐われ,父子離散してさながら地獄図絵を見る思いであったろう。村内に数多い戦死者を埋めたと伝える塚や,苔蒸し,或は壊れ,倒れて土に埋った古石塔を見るがよい。中世の作手地方はなまじ山家三方衆の根拠地だけに,血なまぐさい風が吹荒れたではないかと言うのです。  私はその何れにしても,一面成る程とは思いながら,全くその通りだとは思えないのです。愚にもつかない地獄の詮議はほどほどにして,三十六地獄とは具体的にどこを指すのか考えてみましょう。「大日本史」の編纂に当った水戸学の碩学に,志水正健という人があります。博士の著に「荘園志料」という大著がありますが,その中の「富永荘」の項を見ますと,作手郷として次の三十六村が差げられています。  和田,臼子,見代,杉平,赤羽根,田代,須山,弓木,北畑,寺肉,鴨ヶ谷,市場,恩原,大和田,道具津,五領,小田,笠井島,菅沼,善夫,木和田,島田,塩瀬,大和田,野郎,小林,相月,黒瀬,東田原,西田原,草谷,川合,川尻,手洗所,戸津呂,岩波  村数はたしかに三十六ありますが,全部が作手村にあるのではなく,鳳来町四(島田,恩原,塩瀬,大輪),設楽町(笠井島),新城市一(臼子)と四市町村に分れています。地図でみると,中世の作手郷は作手高原と寒狭川右岸の谷々の村を合せた地域であることが分ります。しかしここに不審があります。臼子は本宮山麓の村であるのに,これに続く山上の荒原と小滝がぬけており,布里,一色,只持,源氏は塩瀬の隣村であるのにその名が見えません。しかしこれらの村を除外しては空洞の地ができ,作手郷の疆城は考えられませんからこの六村を加えると,村数は合せて四十二村になります。このような脱落を生じたのは清水博士がただ紙上の調査のみで,実地を踏まれなかった ためですが,日本全国に亘る堂々菊判二千八百ページに及ぶ大著であってみれば,一々実地踏査などということは望む方が無理なことでした。なお今は設楽町に入っている田峯,折立,筒井,粟島,額田町に入っている千万町なども,かつては作手郷に属したといわれ,地勢的にうなづかれますので,盛時の作手郷は四十七村を擁する大郷でありました。  作手三十六地獄といい,名倉二十四邑,本郷六名という。──何れも六の倍数です。○○十二村という処もあるでしょう。理由はよく分りませんが,六という数字は何かの単位に使われたらしく,必ずしも三十六という実数と考えなくてもよいように思います。   (つづく) ******** 注)これまでの記事は〈タグ「続つくで百話」〉で 注)『つくで百話』の記事は〈タグ「つくで百話」〉で