「狐につかれた話」(つくで百話)
台風17号の接近で大雨や強風となるなど,各地に影響が出ています。
みなさんの地域では,いかがでしたか。
天気を心配しながら出かけましたが,良い天候で日中は青空が広がって暖かい日でした。
あちこちで“ラグビーワールドカップ2019”に関わるモノと人をたくさん目にしました。盛り上がっていますね。
そうした様子を見ながらの2か所目の訪問先では,夕方になって雨が降り始めました。試合は大丈夫だったかな?
『つくで百話』(1972・昭和47年 発行)の「怪奇物語」から紹介です。
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狐につかれた話
明治三十年代までは,上小林の重憲さんとこには女衆(おてつだいさん)が二人と男衆(下男)が一人は,いつもいました。
或る日,男衆の銀作と,女衆のおせんとおみいが,家から四,五丁離れた鳶の巣山へもや(薪)拾いにゆきました。日頃からおせんとおみいとは,あまり仲のいい方ではなかったのですが,午前十時頃になると,おせんがおみいのそばへやってきて
「おみいさ,いい子だのん」とくり返しくり返しいうようになりました。あまりくどくどいうので,おみいが怒っても,相変らず同じことを繰り返すので気味悪くなって,少し早目にきりあげて,皆,家へかえって昼食をとることになりました。
家へ帰ると,おみいが,主婦のおさきさんに対って「おせんさが変なことをいうのでおそがくなった」といいました。どんな様子かためしてみようと思って,おさきさんが,いつものように,飯をもって食べさせようとすると,おせんがひどい権幕で怒り出しました。
「こんな麦飯なんか喰えたもんぢゃない。今までおった杉平の文公のとこでも,まずいものばかりくわしゃがったが,ここでも同じこった。おらでていくぞい」といってにらみつけました。おさきさんが
「杉平の文公のとこでは,何をしておった」ときくと,「文公とこの婆さが,やっと病んでいたが,いよいよ死かけたので暇をとってきた」
と答えました。
「お前は誰だ」ときくと
「俺,お虎の孫だ。(長篠城にいた古狐でよく病人についた伝説がある)文公のとこをみきりをつけて,鴨ヶ谷の方に病人があるちゅうから行ってみたいと思って,柿平(今作手南中学校のある辺)まできたが,腹がへって,摩長沢の悪石の坂が登れないで,待っていたら駄賃つけの馬がきたので,馬の尻尾へつかまってあがってきたが,馬が眺ねそうにするので,危くて困った。」とすました顔でおせんは答えました。
おさきさんは,これは,狐がついたのだと判断して,家の下隣りにあった峯田慈照さんを頼みに行きました。慈照さんは,弘法様をまつっていて,加持祈祷などをしておられました。慈照さんは,すぐ弘法様の前で,ご祈祷をしてから,お護符(お洗米か)をもって坂をあがってきました。
おせんは,慈照さんの姿をみると
「変な奴がきたで,おらおいとまするぞい。」と逃げ出そうとするので,皆で押さえつけて,いやがるおせんの口の中へお護符をおしこんで,背中をとんと強くたたくと
「何をするんだい」と大きな声で叫ぴ,キョロキョロしておりました。お虎の孫は,この時,おせんを離れてどこかえ逃げて行ってしまったのでしょう。正気にかえったおせんは今までのことは何も知らないで,夢から醒めたような格好をしておりました。
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