残暑お見舞い申し上げます。「水神様のやけど見舞」(つくで百話)
今日は二十四節気の一つ「立秋」です。“秋”とは名ばかりで,朝から強い日差しのある暑い一日でした。
暦の上で「秋」となりましたが,厳しい“残暑”が続き,一年で最も暑い時期です。
暑さに負けず,元気に過ごしましょう。
『つくで百話』(1972・昭和47年 発行)の「川に因んだ話」から紹介です。
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水神様のやけど見舞
大和田の名主に稲吉庄右工門応貞という文武両道の達人がおりました。或る日,稲吉が奥の座敷で書見をしていると,遥か下手の方から,烈しい馬の蹄の音がひびいてきました。ハッときき耳をたてた稲吉は,すぐに,その音が,百姓馬の走り方でないことに気付きました。「こんなに馬を乗りこなすものは,定めし乗馬の心得あるものであろう。何者だろうか。」とすぐ表へとび出して,真一文字に走ってきた馬をとめると,乗っていたのは,意外にも普通の人間ではありませんでした。裸馬に乗っていたのは,やはり裸の人間らしい動物で,鬢の辺に薄い髪の毛のようなものがバラバラはえて風になぴいておりました。
「お前は何ものだ」と詰問すると,悪びれもなく「俺は今馬じゃ,島川様(上手の弓木部落にある島川淵の主)がやけどをされたというからお見舞に行くとこだ。急ぐから…さらば」とことば少くなに,一目散に島川淵の方へ向かって馳け去ったとのことでした。大和田の下手にある水神淵など,いくつかの淵のある辺を一ロに今馬といっています。これらの淵を棲家としている主が今馬様だったのでしょう。
川の主が焼傷をしたと云うのは,不思議に思われますが,そのころは,全国各地の川から川へと渡り回っていたポン助(山窩)がよくいたものですから,川原で,ポン助が焚火をして,獲った魚を焼いて食べた跡へ,のさばりでた島川の主さんが,カンカンに焼けついていた川原石にふれて,やけどをしたのが大騒ぎとなって,今馬様が黒馬淵の主に乗って,お見舞に馳けつけたものでありましょう。
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