集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『「%」が分からない大学生』(芳沢光雄・著)

花0618。 晴天が続く一日でした。  今日お会いした方と,高等学校の指導(授業?),大学の教育(現状?)について話をしました。  それを受ける生徒・学生の「今」が,大きな“課題”をもっているのに,関係者(?)の“認識”に不安を感じることは同じでした。  しかし,それに“抗する”には…。  問題意識を持つだけでは,生徒・学生の状況は変わっていきません。お互いの立場・状況のなかで“できること”を一つずつ取り組んでいくことが肝心かと思います。  さて,何から…。  かつて『小数ができない大学生』『分数ができない大学生』が話題になり,学力低下や教育危機が大きな社会問題になりました。  それを想い出すようなタイトルの『「%」が分からない大学生 日本の数学教育の致命的欠陥光文社新書が書架に並んでいました。  本書を開き,「まえがき」を読み始めると2つの問題が出てきます。「問1 2億円は50億円の何%か」 この問題に正答できそうですか。  続いて,「問2 (販売個数や売上高などが)2000年位対して2001年は10%成長し,2001年に対して2002年は20%成長したとする。このとき,2000年に対して2002年は何%成長したことになるか」 こちらは,いかがですか。  ここでの誤答は,「%って何」を知らない,考えたことないことの表れです。  著者は,こうした“問題の本質”に迫り,“解決に向けて思い切った提言”をしています。  「まえがき」で,初めて見る(聞く)言葉がありました。
 さて,「く・も・は」という図をご存じだろうか。
 「く・も・は」じゃ,「%」の問題を解くのに使うらしいのですが,知りませんでした。  言葉は,第1章で説明や図があり,意味は分かりましたが,これまでの指導で使ったことはありません。また,周囲で耳にした記憶がありません。地域性がある言葉かもしれません。第1章で一緒に出てくる「は・じ・き」は,当地でも知られているように思います。  昨年,大学生に聞いた時,「は・じ・き」を知る者が多くいましたが,別の言葉であった者も同じ程度いました。  著者の指摘するのは,これらの言葉ではなく,この“言葉で処理する指導(姿勢)”です。  先の大学生では,「知らない」という者も相当数いましたので,「は・じ・き」「く・も・は」のインパクトが,私には今一つでした。  とはいえ,著者が“問題”とする点は,これまでの経験でも同様に考えていることであり,全教科を教える小学校教諭に“指導(法)”を身につけていただく難しさを感じています。
 いま、「比と割合の問題」を間違える大学生が目に見えて増えている。  税込の代金が定価の1.08倍(消費税分)になることが説明できない、「〜〜円は……円の何%か」が答えられない……等々。  この問題の本質はどこにあるのか。 (略)  本書では、こうした問題を日本の数学教育に対する警告と受け止め、根本的な改革案を提案するものである。  問題の本質は大学生にあるのではなく、現在の教育のあり方なのだ。「やり方」を覚えるだけの暗記ではなく、プロセスの理解が大切なのである。
 本書では,学力テストの結果などを例に引きながら,“提言”がされています。  小学校先生,そして教育に携わるみなさん,お薦めです。  もし,著者の指摘に“当てはまる”のであれば,ぜひ見直しをお勧めします。それが,子供達の幸せにつながります。
   目次 まえがき 第1章 深刻な問題  1・1 「は・じ・き」「く・も・わ」とは何か  1・2 「は・じ・き」「く・も・わ」の本質的問題点  1・3 大規模調査結果の裏付け 第2章 見直し力をチェックする  問題1 問題1の解答  ……  問題11 問題11の解答 第3章 数学マークシート式問題  3・1 数学マークシート式問題は公平か  3・2 論理的文章力を育まない数学マークシート式試験  3・3 プロセス(文)を軽んじる社会的風潮  3・4 時代はマークシート式から記述式へ 第4章 数学は「心」が大切  4・1 規則・プロセスを大切にする心  4・2 ねばり強く考える心  4・3 説明するときに相手を思う心 第5章 算数・数学は皆が大切にしたい教科である  5・1 歴史的な視点  5・2 算数・数学は理解して役立たせよう  5・3 「数学嫌い」を重く捉えよ 第6章 算数・数学は個人差に合わせた教育を!  6・1 学年別指導より理解別指導を大切に!  6・2 「やり方」を覚えるだけの暗記教育を見直そう!  6・3 公教育の充実 あとがき