集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

お正月に向けて…(3) 「お節料理」

ポスト1226。 朝は雲が目立ち,このまま雨になっていくのかと思いましたが,昼頃には日差しが出て“晴れ”になりました。  年末年始に向けた片付けと準備をするのを助けてくれた天候でした。  明日からは,予報通りに“寒波”がくるのかな…。  年末になり,お正月に用意するものについて,先週の「年末です。お正月に向けて…」(12/17),「お正月に向けて…(2)」(12/18)で蘊蓄(うんちく)を記事にしました。  今日は,お節料理についてです。  黒豆,かまぼこ,紅白なます,田作り,栗きんとん…  お節料理が,現在のような形になったのは江戸時代の後半だと言われています。お節料理は,江戸の粋やユーモアを凝縮した庶民文化から開花したものです。 江戸の人々の暮らしが豊かになり,正月の料理も様々なものができましたが,お節料理の意味や謂れに共通しているのは,豊かに暮らせること,一族の繁栄を願うことです。  そもそもの由来は,正月の「節供料理」で,宮中のお節供(おせちく)の行事からきています。  お節供は,節日に神に供えたものです。宮中では,1月1日(元日),7日(人日),3月3日(上巳),5月5日(端午),7月7日(七夕),9月9日(重陽)といった節日には ,神に神饌を供え祭り,宴を開きました。  お節料理は,宮中のしきたりが民間に広まったものです。それが,やがて正月にふるまわれるご馳走を「お節料理」と呼ぶようになりました。そして,その土地や時代によって変化してきました。  正月に神に供えた供物を下げてきて一族で分かち合って食べることを,「直会(なおらい)」と言います。正月には家族が集い,感謝と祈りをこめて新しい年を祝い,ご馳走を食べるのです。  お節料理の名前には,それぞれ意味があります。いくつかのいわれを並べてみました。  --------------------------------------- ☆黒豆  まめ(健康)に暮らせるように。  黒豆を上手に炊き上げることができれば,お嫁さんの及第点といわれたくらい,豆を軟らかく炊き上げるには,技術も経験も必要です。また,植物性の高タンパクである豆は, 肉食の風習がなかった昔では,欠くことのできない栄養食品でした。  --------------------------------------- ☆数の子  子孫繁栄。二親から多くの子が出るのを好き事とし,古くからおせちに使われました。かつて,数の子は日本中どこでも入手できる一般的なものでした。  --------------------------------------- ☆田作り  豊年豊作祈願。江戸時代の高級肥料として片口鰯(いわし)が使われ,豊作を願い田に肥料として撒いたことから名づけられました。  片口鰯の小魚を天日で干し上げたごまめを砂糖としょうゆで調理したものです。  --------------------------------------- ☆昆布巻  喜ぶの言葉にかけて,昆布はお正月の鏡飾りにも用いられています。  日本料理の必需品 ともいえる大切なもので,健康長寿がえられるといわれます。お節料理には,煮しめの結び昆布,昆布巻といろいろと使われます。  --------------------------------------- ☆紅白かまぼこ  かまぼこは,初めは竹輪のような形をしていました。やがて江戸時代,様々な細工かまぼこが作られるようになると,祝儀用として欠かせないものになっていきました。  紅はめでたさと喜びを表わし,白は神聖を表わします。上棟式や結婚式に紅白のもちを撒く習慣があるように,お正月は紅白の色で祝いたいものです。  --------------------------------------- ☆紅白なます  お祝の水引きをかたどったものです。生の魚介などを用いて,大根,にんじんと酢で作ったことから,「なます」の名がつけられました。  「大根の医者いらず」といわれるように,紅白のめでたい色合いばかりではなく,ビタミンCが豊富で,風邪もひきにくくなる食べものでもあります。  --------------------------------------- ☆錦たまご  黄身と白身の2色が美しい錦玉子は,その2色が金と銀にたとえられ,お正月料理として喜ばれます。2色を錦と語呂合せしているともいわれます。  --------------------------------------- ☆金平ごぼう  江戸初期に誕生したごぼう料理です。豪傑金平にちなんで,この滋養たっぷりのごぼう料理を金平ごぼうと呼ぶようになりました。強さや丈夫さを願いました。  ごぼうは,細く長く地中にしっかり根を張り,お正月料理やお菓子に重要な役割を果たしています。宮中でお正月に配られる花びら餅の芯にも,ごぼうが用いられ,大切に扱われてい ます。  たたきごぼうは,軟らかく煮たごぼうを叩き,身を開いて,開運の縁起をかついだものです。  --------------------------------------- ☆里芋  里芋は子芋がいっぱいつき,子宝に恵まれるようにの意味です。  --------------------------------------- ☆  めでたいに通じる語呂合わせです。江戸時代に始まった七福神信仰とも結びつき,鯛はおめでたい魚として有名です。  --------------------------------------- ☆だいだい)  代々に通じる語呂合わせです。子孫が代々繁栄するようにという願いが込められています。  --------------------------------------- ☆栗金団  黄金色に輝く財宝にたとえて,豊かな1年であるようにという願いが込められています。  「栗金団」というお菓子は室町時代に既にありましたが,いわゆる,おせち料理の栗金団とは別物だったようです。この頃の栗金団は栗餡を丸めたもの。現在の形になったのは明治時代のことです。「金団」とは黄金の団子という意味です。くちなしの実で黄色に色付けて仕上げます。名前の語呂合わせではなく,見た目の“黄金”の色合い,豪華に見える様子から使われるようです。  また,「勝ち栗」という言葉があるように,栗そのものが昔から縁起のよい食べ物として尊ばれてきました。日本中のどこでもある栗は,山の幸の代表格です。  --------------------------------------- ☆伊達巻き  「伊達」とは,華やかさ,派手さを形容します。華やかでしゃれた卵巻き料理ということで,お正月のお口取りとして用いられました。  伊達巻きは,蒲鉾を作る際,つなぎに卵白を使用しますが,黄味の部分が余ってしまうので,それを活用するために考えだされたものです。  お正月には巻物がよく出てきます。昔の人は,大切な文書は巻物に装丁し,絵は掛軸に仕立て,家宝にしていました。江戸時代,長崎に伝えられたしっぽく料理の中に,「カステラかまぼこ」というものがありました。これが江戸に伝えられ,伊達者達が着ていたドテラに似ていった事から伊達巻と呼ばれるようになったようです。  --------------------------------------- ☆えび  腰曲がりえびは,長いひげをはやし,腰が曲がるまで長生きすることを願ってお正月飾りやおせちに用いられます。  伊勢えびから,小川の川えびまでいろいろですが,お重詰の中には,小えびを串で止めた鬼がわら焼がよく用いられます。  --------------------------------------- ☆お多福豆  「阿多福」という字が当てられ,文字通り福を招く食べ物として,祝い膳にはよく登場します。  空豆の一種で,その形が,ふくよかなおたふくの顔に似ているところから,この名前がつけられました。  --------------------------------------- ☆菊花かぶ  大根とともにジアスターゼに富んだ大変消化よい食べ物です。これをおめでたい菊の形に飾り切りし,食紅であざやかな紅白に染めて,酢のものにしたてたのが菊花かぶです。  --------------------------------------- ☆小肌粟漬  小肌は,コノシロという魚の成魚になる前の名前。つまり,出世魚なので縁起がよいたべものとされています。  小肌粟漬は,小肌の切り身を蒸した栗と一緒に酢漬けにしたもの。栗はクチナシで鮮やかな黄色に染めています。栗は五穀豊穣を願ったものですが,防腐効果 もあるという知恵も隠されています。  --------------------------------------- ☆百合根  百合根は,球根の鱗片が多く重なっており,その鱗茎の数々が相合う事が和合に通じるとされています。  百合根は薬効もありますが,吉祥の象徴です。  ---------------------------------------  お節料理ができあがると,それらをお重に詰めます。その順番は,  一の重が「祝肴」。  二の重」「酢の物」。  三の重が「焼き物」。  与の重が「煮物」。(忌み数字の四をきらってこう書く)  五の重が「控えの重」。 とすることが多かったそうです。  しかし,地域によって二の重が焼き物だったり,どこでも通じる決まりごとはないようです。  お正月を祝いお節料理としてあげられる屠蘇の祝肴は,無病息災と子孫繁栄の願いを祈ったものです。その願いを,食べ物の形や名前の語呂合わせに託してしまうところに,ユーモアあふれる江戸時代町人文化のおおらかさ,大きさ,そして豊かさを感じます。  こうした願いや語呂合わせも,今では,差別であったり,価値観の違いであったりして,「受け入れられない」という声があるのかもしれません。  時代が変わったとしても,,謂われを愉しむ豊かさを持ってお節料理を味わいたいと思います。  そして,新たな年を祝う心,家族の息災や繁栄を祈る心を大切にして正月を過ごしましょう。