「昔のだっこく」《生活の移り変わり 3》 詩「世界は一冊の本」
晴れでしたが,雲が薄く覆って,日差しに強さはありませんでした。
出かける予定の日でしたが,家で,文書作りと文書整理,読書をしてゆったり過ごしました。
文集「こうやまき」から,「生活の移り変わり」の一話です。
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『昔のだっこく』 (文・開成小4年 男子)
おばあさんがわかい頃の話です。
田んぼにいねがみのると,かまでいねかりをする。もちろんいねかり機はありません。
いねかりが終わると,一わずつ,こばしというかねのくしのようなものでこいて,天気のよい日に,庭いっぱいもみをほしたそうです。
そして,大きなうすで,二人でくるくる手でまわすと,お米がむけて,もみがらといっしょになって出てきます。それをとうみで風を送り,米ともみがらとをわけました。うすをひくのには,なかなか時間がかかり,力もいりました。だっこく一つ考えても,今と昔ではずい分ちがいたいへんだったことがわかります。ついでにつけくわえると,できた米は,川から水をひいた水車で,ゴトンゴトンと何時間もかかってついたということです。
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今の子供達は,この文章から「脱穀のようす」が思い浮かぶでしょうか。
みなさんは,いかがですか。
今日読んだ資料のなかに,長田弘氏の詩『世界は一冊の本』がメモしてありました。
みなさん,“読書の秋”に,どんな本を読みましたか。
世界は一冊の本さあ,本を読もう。長田 弘
本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。
書かれた文字だけが本ではない。
日の光,星の瞬き,鳥の声、
川の音だって,本なのだ。
ブナの林の静けさも
ハナミズキの白い花々も、
おおきな孤独なケヤキの木も,本だ。
本でないものはない。
世界というのは開かれた本で、
その本は見えない言葉で書かれている。
ウルムチ,メッシナ,トンプクトゥ,
地図のうえの一点でしかない
遙かな国々の遙かな街々も,本だ。
そこに住む人びとの本が,街だ。
自由な雑踏が,本だ。
夜の窓の明かりの一つ一つが,本だ。
シカゴの先物市場の数字も,本だ。
ネフド砂漠の砂あらしも,本だ。
マヤの雨の神の閉じた二つの眼も,本だ。
人生という本を,人は胸に抱いている。
一個の人間は一冊の本なのだ。
記憶をなくした老人の表情も,本だ。
草原,雲,そして風。
黙って死んでゆくガゼルもヌーも,本だ。
権威をもたない尊厳が,すべてだ。
2000億光年のなかの小さな星。
どんなことでもない。生きるとは,
考えることができると言うことだ。
本を読もう。
もっと本を読もう。
もっともっと本を読もう。