「 母に聞いた昔のだっこく」《生活の移り変わり 1》
青空の広がる時間もありましたが,曇りの一日でした。
紅葉の綺麗な時期ですが,今年は“ちょっと違う”ようです。色がまばらであったり,枯れた葉,落ちた葉が目だったりしています。
当地だけのことかな。
紅葉の名所は,どうでしょうか。
文集「こうやまき」の紹介は,新しい項「生活の移り変わり」に入ります。
1970年の子供達が綴る“移り変わり”は,現在からはどのように見えるでしょうか。
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『母に聞いた昔のだっこく』 (文・開成小5年 男子)
この話は母の小さい頃のことです。まだ自動車もない頃の田の仕事の様子です。
道はせまく坂道が多かったので,農作物の運ばんは牛車が多く使われていました。牛車も通れないような所はみんなしょいこで運んだそうです。田は遠い所が多くて三キロも四キロもある所のだっこくは,とても大へんでした。朝早くから,牛車に道具を積んで,子どももその上に乗って出かけます。
田に着くといよいよ作業開始です。おとうさんは足ぶみだっこく機をプンプン回わしていねこきをします。子どもたちはみんな力を合わせていね運びをします。おかあさんはもみをふるいでふるって,きれいなもみをかますに入れてしっかりとしばります。牛車はゆれるから,途中でこぼれたりしないように,かますの両耳もしっかりしばって牛車に積みます。
おじいさんはもみが牛車に一ってぱいになると家へ運びます。おじいさんがまた田へ来る頃は牛車に一ぱいぐらいのもみがたまっています。おじいさんと牛は一日中行ったり来たりです。
おばあさんはお昼になると,お茶をわかしてご飯のしたくです。木で作ったメンパというべんとう箱のご飯はちょっぴり木のかおりがして,とてもとてもおいしいご飯だということです。おかずは魚なんか買えなかったので,おいもやごぼうや人じんばかりでしたが,みんなはたちまちたいらげてしまいます。
お昼を過ぎると、おばあさんは小さい子をつれて,そうそう家へ帰ります。みんなはまたそれぞれの仕事を一生けん命やって,やっと仕事が終わり帰る頃はもう暗くなります。みんなくたびれて,車に乗って行きたいなと思っても,車はいっぱいで荷物もまだ残っています。だから家族は少しずつ分けてしょって帰りました。それでもだれも不平などは言いません。その頃はどこの家でもみんなそうでした。ほねおしみをする人は,あれはなまけ者だと他人に笑われるからです。
家へ運んだもみは,よく日天気がよければ,おもてへまずわらごみをいっぱいひろげて,その上へむしろをきれいにならべてしき,むしろ三枚に「み」に二はいのもみをひろげてほします。夕方三時頃になると,もみを一か所によせて唐みで選別します。
もみをよせたり,きれいになったもみを斗ますで計るのは子どもの仕事でした。もみをしまい,むしろもかたづけると,子どもは又になった木でわらごみをよせて,えんの下へおし込むのが面白く大さわぎで手伝います。
昔に比べると,今はずい分変ってきたなと思います。だっこくもかんそうもよい機械ができて,ぼくたちがあまり手伝わなくても,父も母も平気でやってしまいます。でも手伝いをして田でおやつを食べる時は,遠足のように楽しいし,父母もよろこんでくれるので手伝いはできるだけしたいと思います。
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今の子供達にも,お手伝いをして“遠足のように楽しい”と感想をもつ体験をしてほしいと思いますが,それは難しいでしょう。
この子の綴る“農作業の姿”は,今の子にどのように見えるでしょうか。