集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

みどりの日。「弘法栗」《作手村のむかし 3》

藤0504。 今日は,国民の祝日の一つ「みどりの日」です。「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し,豊かな心をはぐくむ」とされます。  木々は新緑が輝いています。この美しさを愛でる日(時期)です。   文集「こうやまき」(1970年・刊)から,「作手村のむかし」の一話です。 ********    『弘法栗』 (文・菅守小6年 女児)  「もも栗三年,かき八年,ゆずは九年でなりかかる。」ということわざがある。しかし,他の部落とちがって菅沼には,三年もたたず,小さな木のうちから実をつける「しば栗」が多い。秋に,野山へ栗拾いに行くと,小さな栗の木に実がついているのを,よく見かける。こういう栗の木が菅沼だけに多い,ということについて祖母から,つぎのような話を聞いた。  昔というだけで,いつごろのことかわからないが,菅沼の子どもたちが集まって,わあわあさわぎながら, 「その栗をとって。」 「あそこの栗もとって。」 などと言いながら,楽しそうに大きな栗の木から栗の実をとっていた。  するとそこへ旅のおぼうさまがやって来た。おぼうさまは,しばらく子どもたちの栗の実とりを見ていたが,やがて,子どもたちに 「そのくりをわけてくださらんか。」 と言いだした。すると,子どもたちは, 「たくさんわけてあげたいけど,栗の木が大きくて,少ししかとれないから。」 と言って,栗を少しわけてあげた。するとおぼうさまは,たいそうよろこんで, 「来年からは,あまり大きくなくて,子どもたちでもとれるくらいの栗の木に実がなるだろう。」 と言って去っていった。  つぎの年の秋になると,なるほど,旅のおぼうさまの言ったとおり,小さな木にも栗の実がたくさんなるようになった。そこで,旅のおぼうさまは,きっと弘法さまだろうということになり,栗の木のことを「弘法栗」というようになった。ということである。  「弘法栗」とは「しば栗」のことで,秋には五十センチメートルくらいの小さな栗の木でも,実をつける。味も,ふつうの大きな栗よりもおいしく,小つぶながらとてもよい栗である。  この他にも,菅沼には,昔から伝わる伝説が,たくさんあるらしい。昔の人々は,テレビとか本がなかったので,そのかわりに祖父母,父母などから伝説を聞いたということである。だが,わたしたちは,テレビや本があるので,昔の伝説などを聞くことが少ない。そうなると,伝説も,祖父母や父母などに,わたしたちが聞かなければ,話すこともなく,だんだんわすれられてしまう。それに,伝説とは昔の子どもたちが,ひまな時に聞くというだけでなく,わたしたちがおとなになるまでのお手本になるようなことを,話すほうでも子どもに教えたいということが,もとになってきたのではないかと思う。そして,親から子へ,子から孫へと伝えられる伝説も,そのときどきの親や年寄りの願いをこめて話されてこそ,生き生きといつまでもかたりつがれていくのではないかと思った。 ********  この弘法栗の話は,「つくでの昔話」の中にも『弘法栗として紹介されています。  この坊まさは,おそらく弘法大師だったのでしょう。そして,大師の“力”に触れた方々が,その地を“豊か”にしていったのだと思います。  弘法大師といえば,明後日6日は「お弘法さま」の接待(縁日)が,地区のお寺などで行われます。  これは,弘法大師高野山奥の院で入定された日である旧暦3月21日に行われています。  今年は日曜日です。各地に残る弘法大師の伝説を子供達と語りながら,“お弘法さま”を巡ってはいがかでしょう。 【関連】   ◇弘法栗(つくでの昔ばなし)   ◇5.9. 弘法様(2015/05/09 新城市立作手小学校)   ◇昔話『弘法栗』( 2014/09/13 新城市立作手小学校)