旅の途中で。
旅の途中です。
旅のお話は,また。
【ちょっと長い小咄】
昔,熊さんが朝市に大根を売りに行ったとき,ある若者から,
「日本の国で,どこが一番遠いんかのう。」と言って,尋ねられたんじゃと。
すると熊さんは,「そりゃあ,何んといっても尾張(愛知県)が一番遠いて。」
すると,若者は「それは違う。陸奥の国(東北地方)が一番遠いにきまっちょる。」
そのうち二人は,尾張の国じゃ。陸奥の国じゃと言い争っておったが,しまいには二人が一両もの金を賭けてしまったんじゃと。
誰かに判定してもらおうと,朝市に来ておる人達に頼んでも,みんな首を振るばかりじゃった。
そこへ,お遍路さんがやって来た。目ざとくお遍路さんをいち早く見つけた熊さんは,きんちゃくから小銭を出すと,お遍路さんににぎらせたと。そして聞いたと。
するとお遍路さんは,これは「おありがとうございます。」と礼を言うと行ってしまったと。
熊さん,すかさず「そーれみろ。“尾張が遠うございます”と言っただろ。」と賭金一両せしめたんじゃとさ。
参考;「とんと昔の笑い話」