『風雷きんとん (お江戸豆吉) 』(桐生環・作)
天気のよい秋の一日でした。
出先の街は、“週末の賑わい”が見られました。どの人も、場所・会場では密にならないようにされていますが、行き交う人の波は密でした。
新しい出会いと気づきの週末でした。
以前にお江戸豆吉の本を読み、紹介しました。
図書館の児童書コーナーに、その新刊『風雷きんとん (お江戸豆吉) 』(フルーベル館・刊)がありました。
表紙に豆吉、裏表紙に若旦那、辰五郎、お竜さん、お駒の5人が描かれ、もう一人、豆吉と似た男の子が表紙にいます。“きんとん”に関わる中心人物でしょう。
おつかい中に豆吉がスリにあい、いつものごとく若旦那が激怒! でも犯人はどうやら子どものようで、豆吉は3日間猶予をもらい、自分で探し出すことに。おてんば娘のお駒の協力により見つけた犯人は、スリの大名人「そよ風宇平」の孫、小宇平という子どもだった。 しかも、男の子の格好をした女の子! スリはよくないと、豆吉はその手先の器用さを活かして、手品を習うことを勧める。そこで小宇平は、若豆屋の常連で手品好きな老人の元へ通い始めるのだが…。表紙の子は、男の子の格好をした女の子だったようです。 なぜ女の子の格好を…。 出版社の紹介文に「江戸人情にジェンダー問題が絡みあう…」とありましたが、小宇平の姿や思いは、ジェンダーに絡みあう問題だったのか…。あえて語らなくてよい気がしました。 シリーズ3作目、豆吉がスリにあい、そこから始まる騒動、関わる人々のことが語られます。 佐太郎さんと宇平さんの“因縁”も、若旦那の作る美しく美味しい“きんとん”が、甘く解かし…。 本書も、話の間に「豆吉のお江戸豆ちしき」のページがあります。話に出てきた言葉や場所,出来事などに関わる説明(コラム)されています。江戸のこと,町人の暮らしを知らない子供が,話の世界に入っていく助けとなるでしょう。 読み始めると途中で止められません。ハラハラドキドキしながら楽しんで読めるお話です。 読書メモより
○ この若旦那、なにしろ口が悪い。(略) だが、だいぶ慣れたし、だいいち、今のは「怒った」のじゃなく、「いばった」のだ。この違いは大きい。 ○ もし、若旦那が利き手を痛めたらどうなるのだろう。 (職人の……利き手……) ○ そのまま下駄を鳴らして地面をける。お駒の体はしゅっ、とはね上がり、宙を一回転。トンボ返りだ。 ○ 「おう、気をつけてな」 いろんな意味での「気をつけて」だろう。 ○ 若旦那、辰五郎、お竜さんの「けんか三人組」。けんかばかりしているが、一度団結したら最強の組み合わせだ。 ○ 「このそよ風宇平、罪と知りながら義賊を名乗ってここまできた。生きることさえ苦しいおひとたちに、希望を捨ててほしくなかったからだ。 ○ おいらにとっては、とっくに師匠なのに、若旦那はまだ修業するんだ
もくじ 一、事件 ・豆吉のお江戸豆ちしき 「浅草」 二、大とり物 ・豆吉のお江戸豆ちしき 「見世物いろいろ」 三、受け継がれる技 ・豆吉のお江戸豆ちしき 「江戸時代の時刻」 四、新しい修業 ・豆吉のお江戸豆ちしき 「江戸時代の手品」 五、友だち ・豆吉のお江戸豆ちしき 「江戸の町のしくみ」 六、それからの話【関連】 ◇桐生 環(きりゅう たまき) (@kt_100miln)(Twitter) ◇野間与太郎 (@yotaroom)(Twitter) ◇『けんか餅』 ◇『のろいまんじゅう』(桐生環・作)(2022/01/06 集団「Emication」)