つくでの昔ばなし「こうやまき」 (作手見聞録)
雲りの一日で、気温の上がらない一日でした。
今朝、中学校の校長先生からお話を伺いました。
最近のこと、研究発表会のこと、そして…
新しい情報をお聞きできました。そして、いろいろ考えました。次は…。
ありがとうございました。
旧作手村が、地域情報をまとめたA5サイズの冊子『作手見聞録』を作成し、配付していました。数回の更新があり、表紙の異なるものがありました。
発行年が明確ではありませんが、手元にある冊子から順に紹介します。
伝わる“つくでの昔ばなし”から、本冊子では前回そして今回の2話が掲載されています。
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作手見聞録
つくでの昔ばなし
こうやまき
甘泉寺で、百年ほど前におこった話です。境内を色どったもみじも散ってしまったある朝のことです。
「おしょう様 おしょう様 大変です!」
庭そうじをしていた小僧たちが、さけんでいます。
「どうしたのだ。」
おしょう様は何ごとかととびだしてきました。
「あれを、ごらんください!」
と、小僧の指さす方をみると、朝日がさしはじめたばかりの、こうやまきの高い枝の間から、青い煙がたちのぼっているのではあリませんか。
「あっ、これはこまったことになった。禅師様のお植えなされたこうやまきの中へ火が入った。昨夜は、夜中から風がでたでな……。」
「おまえたち早く知らせて人をよんでおいで。」
小僧の一人が、参道の石段をかけおりていきました。おしょうを始め、みんなは、
「水だ!」
「はしごだ!」
と、あわてふためいています。
きのうは、檀家も寺方も総出でもみすりをしたのです。夕方、手伝いの人々は、いつものように、もみがらやごみを、こうやまきの石段の下の広場へ集めて、火をつけて帰ったのでした。
それが、夜中の強い風にあおられ、火の粉が根元の穴からはいりこみ、田の空洞でくすぶっているのです。やがて、近所の人たちがかけつけてきました。聞き伝えた村の人たちも、われもわれもと集まって大さわぎになリました。みんなどうしたらいいのかと、樹のてっぺんを見上げるばかりです。こうやまきの樹は、周囲二丈(7メートル)余り、樹の上まで六丈(20メートル)はあろうかという大きさです。
「何とか、消せまいかのう。」
たすきがけのおしょう様がいいます。
「はしごがあっても、最初の枝にもとどかねえ。こんな樹へ登りようもねえしなあ。」
手伝いの人もいいます。
「上の穴から、水を入れるったって、水をもっていきようがねえわ。」
村の人も、くちぐちにいいます。
そのうちに、一人の老人が、
「これは、しょうがねえで、赤べっとう(赤土を水でねったもの)で穴をふさいでみたらどうかのう。」
と、いいました。
「おお、そうだ! それは、いい考えだ。」
人々は、赤土をはこび、ねり、根元の穴へ石をつみ上げたりして、ぬりこみました。
ようやく、穴はふさがリました。
「すぐには、消えんけど、そのうちには消えるだら。」
「樹の穴が、上まで通っとるだのう。」
「えれえもんだのう。」
「穴の中の五郎助(フクロウ)もびっくりしやがったわな。」
がやがやいいながらも、いくらか安心して家へ帰っていきました。
その後、火のいきおいは、弱くなリましたが、なかなか消えてしまわなかったのです。どこかに風のとおる所があったのか、七日七晩くすぶリつづけました。そのうちに、雨がふり、ようやく煙がのばらなくなったといわれています。
でも、当時の人たちも、この知恵者の老人が、だれであったのか、わからなかったということです。今もなお、その時の赤土が、穴の回リには残っています。
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【参考】
◇こうやまき (その1)(つくでの昔ばなし)
◇こうやまき (その2)(つくでの昔ばなし)
◇「甘泉寺夜話(4 こうやまき)」(つくで百話)(2019/06/19 集団「Emication」)