集団「Emication」別館

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『京大 おどろきのウイルス学講義』(宮沢孝幸・著)

桜0305。 日中は,「啓蟄」にあった暖かい日差しのある日でした。  しかし,気温は上がらず,冷たい風が吹いて,寒さを感じる日でした。  “”は,もう少し先のようです。  変異株…。第5波・第6波…。まん延防止等重点措置の延長…。  オミクロン株の感染者の増加,そしてステルスオミクロン(BA.2株)の発生,それを煽るように「今日の感染者は…」と報道が続いています。  本書の発行された昨年4月は,その後のデルタ株,オミクロン株の発見前であり,第5波,第6派との拡がりが見られる時期ではありません。  それ以前に執筆された『京大 おどろきのウイルス学講義PHP新書)を読むと,デルタ株,オミクロン株など“変異株(新たなウイルス)”は予見されていますし,特別なことではないことが述べられています。
 「新型コロナウイルスは,突然現れたウイルス」というイメージをもっている人が多いと思いますが,実際には,頻繁に現れている新興ウイルスのうちの1つです。
 ニュースや報道番組には,さまざまな“専門家”が登場し,解説をしています。  新型コロナウイルス感染症についても,医師や研究者,元官僚などの専門家が出演しています。著者も,その一人です。  多くの専門家がいるのでしょうが,「A氏は○○局の番組でよく見る」,「B氏は○○局で見ない」という印象があり,それぞれの編成意図に沿った“おかか”の解説者やコメンテーターとなっているようにみていますが,いかがでしょう。  また,情報発信の方法や内容も,専門家の“立場”によって傾向があるようにも感じます。  そのなかで,著者(宮沢孝幸氏)の情報発信や発言は,分かりやすく納得することの多いものです。
 繰り返しますが,マスコミで,「新型のウイルス」「未知のウイルス」と報道されすぎているため,特別なウイルスだと勘違いされがちですが,あまり特別だと考えない方がいいでしょう。これまでのウイルスの亜種といえうものであり(略)
 テレビを見ていて,著者の出演が予定されていると,そのまま見続けています。  本書は,“世界最高水準のウィルス学者”が,これまでの研究と知見をもって,ウィルスについて基礎から最新の研究・話題までを平易に分かりやすく解説しています。  この1年(2021〜2022)の新型コロナウイルスに関わる動きを振り返りながら本書を読み,「次に来るウイルス」について考えてはいかがですか。  第6波の先が見えてこない今だからこそ読みたい一冊です。  読書メモより
○ 中でも独特のメカニズムをもっているのが,「レトロウイルス」と呼ばれるウイルスです。 ○ 「次」に備えるには,予測ウイルス学が重要になる ○ (略) 感染しても抗体がほとんどできないウイルスもありますし,PCR検査で陰性が出ても体の中に潜んでいるウイルスもあります。 ○ 新型コロナウイルスは,エンベロープという脂質の膜で覆われており(略) それに対して,ノロウイルスエンベロープの膜をもっていませんので(略) 制御が難しいウイルスです。 ○ すべての物事には逆の現象があります。病原性のウイルスがあるのであれば,動物や人の体に役に立つ有用ウイルスがあってもいいはずです。そして実際,役に立つウイルスはちゃんと存在します。 ○ 人類はずっと「ウィズコロナ」をやってきました。13世紀にコロナウイルスNL63が誕生していますから,800年間も「ウィズコロナ」が続いているのかもしれません。 ○ 「ゼロコロナ」という言い方も誤解を生みます。仮にSARS-CoV-2がこの世から消え去ったとしても,「ゼロコロナ」にはなりません。 ○ 変異株の拡大を防ぐために(略) 止めても,変異株を防ぐことはできないかもしれません。 ○ いまのところ,問題は出ていないようですが,「長期的にはよくわからない」というのが正直なところではないかと思います。 ○ 生まれたときのDNAと死ぬときのDNAは部分的には違っています。 ○ すべての宿主が短期的に免疫をもってしまうかもしれませんので,ウイルスは進化のスピードを速めざるをえなくなります。単に複製ミスによる変異だけではなく,別のウイルスとの組換え,分節の交換,さらには(略)
   目次 まえがき 第1章 「次」に来る可能性がある、動物界のウイルス 第2章 人はウイルスとともに暮らしている 第3章 そもそも「ウイルス」とは何? 第4章 ウイルスとワクチン 第5章 生物の遺伝子を書き換えてしまう「レトロウイルス」 第6章 ヒトの胎盤はレトロウイルスによって生まれた 第7章 生物の進化に貢献してきたレトロウイルス あとがき 参考文献 索引
【関連】   ◇Takayuki Miyazawa (@takavet1)Twitter