『コロナ狂騒録』（海堂尊・著）

　冷たい風の吹く寒い日でした。 　今夜から明日にかけ“この時期にしてはめったにないような強烈な寒気”が日本列島に流れ込むと予報されており，当地でも初雪，積雪となるかもしれません。 　暖かくして過ごしたいと思います。 　新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」 の流行が懸念される今，これまでの世間の動きを“検証”する気分で読める図書です。 　昨年，『コロナ黙示録』（2020/08/01）を読み，そこに描かれる“新型コロナ禍”をわくわくして読みました。 　先月，書架に並ぶ“似た本”がありました。 　先の続編となる『コロナ狂騒録』（宝島社・刊）で，2020年9月からの社会・政治の姿が，東城大学・新型コロナウイルス対策本部長の田口公平たちが活躍そして暗躍するようすを通して描かれています。

　あれから1年。浪速では医療が崩壊し、東京には聖火がやってきた―― 　ワクチンをめぐる厚生労働省技官・白鳥の奔走。そして、ついに東城大学医学部付属病院で院内クラスターが……。田口医師はこの難局をどう乗り越えるか!? 　混迷を極める日本の2020−2021を描き尽くす、最新コロナウイルス小説!

　「2020年9月，新型コロナウイルスは第2波が収まりつつあった。安保宰三は体調不良を理由に首相を辞任，後継の酸ヶ湯政権がGotoキャンペーンに励み，五輪の開催に向けて邁進していた。…」 　あれっ。安保宰三…，後継の酸ヶ湯政権…，Gotoキャンペーン…，五輪の開催…，思い浮かぶ“人”や“出来事”があります。前作と同じように，ニュースで見たこと，聞いたことと“同じこと”が起こり，それに対応し，行動していきます。 　本書も，その情報量の多さに読み難さを感じましたが，“体験した出来事”と重なり，小説の“なか”に引き込まれました。 ていきます。 　新型コロナ禍でのリーダーは，どうあればよいか。どのようなリーダーを求めるのか。 　そして，自分は何をするのか。 　考えさせられる小説でした。 　読書メモより

○（総裁選の話から） 前回の参議院選で，党首討論会を放送すべきでした。でもそればせず，自保党の主張だけは垂れ流す。これは自保党による，メディアを使った情報コントロールなんですよ ○（オリンピックの検疫から） わずか9名の海外選手団にも対応できないザル状態だと判明した。紋切型でそう表現したら，「日本の検疫をザルに喩えるのは，ザルに対して失礼だ。ザルはそうめんを取りこぼさないのだから」と，あるお笑い芸人が適切な発言をして，全国ザル協会 の人たちから拍手喝采を浴びた。 ○ 酸ヶ湯は，「安心安全の大会を目指す」と，壊れたレコードのように繰り返した。 　(略) 「安心」かと問われれば「安心できない」と言われ「安全」だと主張すれば「安全ではない」と反駁される。だが「安心安全」と重ねれば，輪郭は曖昧になり論理的に判定できなくなる。 　安全とは客観的な事象で，安心は主観的な気持ちだ。

　　　Contents　［目次］　（注；年号表記は修正） 第1部　酒と薔薇の日々 　1章　紅茶の美味しい喫茶店　　2020年9月8日　桜宮・蓮っ葉通り・喫茶「スリジェ」 　2章　怪談談義　　2020年9月18日　桜宮・蓮っ葉通り・喫茶「スリジェ」 　3章　NY帰りのラッキー・ベガサス　　2020年9月18日　桜宮・・蓮っ葉通り・喫茶「スリジェ」 　4章　コロナ、跋扈す　　2020年9月　「別宮レポート5」 　5章　酸ヶ湯政権、船出す　　2020年10月　永田町界隈 　6章　浪速府医師会会長・菊間祥一　　2020年10月　浪速・天目区・菊間総合病院 　7章　PCR抑制論発信源・湘南県医師会　　2020年10月　浪速・小料理屋「かんざし」 　8章　「ワクセン」の海坊主　　2020年10月　浪速・中央区・字賀神邸 　9章　浪速ワクチンセンター研究開発局主任研究員・鳩村誠一　　2020年10月　浪速・浪速大学ワクチンセンター研究開発局 　10章　歴史学者・宗像壮史朗　　2020年10月　浪速・手塚山・宗像博士邸 　11章　忘れられた病棟　2020年10月　桜宮・東城大学医学部 　12章　章梁山泊、再始動　　2020年10月　帝山ホテル・料亭「荒波」 　13章　開示請求クラスタの佐保姫　　2020年10月　浪速・天目区・菊間総合病院 　15章　酸ヶ湯、右往左往す　　2020年11月　東京・永田町 　16章　新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーポード座長・近江俊彦　　2020年12月　東京・霞が関・合同庁舎5号館 　17章　血塗れヒイラギ、首相記者会見に闖入す　2020年12月　東京・霞が関・首相官邸 　18章　東西ワイドショー知事の饗宴　2020年12月　東京・浪速 第2部　バリアント・第4波 　19章　ワクチン談義新年会　2021年1月4日　浪速・浪速ワクチンセンター研究開発局 　20章　火喰い鳥、表舞台に立つ　　2021年1月4日　東京・霞が関・合同庁舎5号館 　21章　ワクチン大臣・豪間太郎　　2021年1月　東京・霞が関・首相官邸 　22章　後藤男爵、現代医療を一刀両断す　　2021年1月　桜宮・蓮っ通り・喫茶「スリジエ」 　23章　夢見るマンボウ　　2021年2月　東京・霞が関・首相官邸 　24章　聖火隊、発進　　2021年3月25日　福島・Jビレッジ 　25章　白虎党ファクトチェッカーの自爆　　2021年4月　浪速・天目区・菊間総合病院 　26章　ワクチン狂騒曲　　2021年4月　東京・霞が関・首相官邸 　27章　酸ヶ湯首相の米国弾丸ツアー　　2021年4月　米国・ワシントンD.C. 　28章　第三回緊急事態宣言　　2021年4月　東京・霞が関・首相官邸 　29章　奇跡の病院、崩壊す　　2021年5月　桜宮・東城大学病院・不定愁訴外来 　30章　後藤男爵の帰還　　2021年5月　桜宮・蓮っ葉通り・喫茶「スリジエ」 　31章　大山鳴動　　2021年5月　東京・霞が関・首相官邸 　32章　ナニワ事変　　2021年5月　浪速・「どんどこどん」Aスタジオ 　33章　天下無双の情報開示クラスタ　　2021年5月　浪速・天目区・朝比奈邸 　34章　油すまし宰相 vs 火喰い鳥　　2021年6月　東京・霞が関・首相官邸 　35章　スカラムーシュ、出師す　　2021年6月　浪速・天目区・ワクチンセンター 　36章　「無責任」で行こう　　2021年6月　東京・霞が関・首相官邸 　37章　平和の祭典　　2021年7月　東京 参考文献・資料

【海堂尊氏の本】 　　◇『医学のたまご』（海堂尊・著）（2021/12/04　集団「Emication」） 　　◇『トリセツ・カラダ』（海堂尊・著）（2020/08/08　集団「Emication」） 　　◇『コロナ黙示録』（海堂尊・著）（2020/08/01　集団「Emication」） 【関連】 　　◇海堂尊公式ホームページ