『文豪どうかしてる逸話集』(進士素丸・著)
天気のよい一日でした。
「文豪」と聞いて,何が思い浮かびますか。そして,どんな人物を思い浮かべますか。
国語の教科書に作品が載っていた人…
人生を文学に捧げて最後には自殺をしてしまった人…
後世に残す傑作を残した人…
「文学者の中でも人気・実力ともに傑出した人物」と説明するサイトがありましたが,明治,大正そして昭和初期の作家の名が思い浮かびます。
その文豪が題名にある『文豪どうかしてる逸話集』(KADOKAWA・刊)を読みました。
本書は,文豪を羅列的に,辞書的に説明する構成ではなく,5名の文豪(太宰治・夏目漱石・尾崎紅葉・谷崎潤一郎・菊池寛)を核として,それを取り巻く作家について述べています。
そして,“凄い作品を残した”という内容ではなく,人間くさい(?)逸話が出典を添えて述べられています。
各章の初めに,登場する作家の関係が,核となる文豪を中心にした「相関図」が載っています。
そして,文豪ごとに,「似顔絵(イラスト)」「プロフィール」「代表作」を紹介し,続いて核となる文豪との「どうかしてる逸話」が2〜3つを載せています。
学校で習った作品から描いた”文豪の姿”とは違うゆる〜い(親しみやすい)話が楽しめます。
本書を読んで,改めて文豪の作品を読みたくなりそうです。
これから作品に触れる子供達(小・中学生)には,もう少し先に読んだ方がよさそうです。
大人のみなさん,文豪と作品を楽しみませんか。
読書メモより
○ 檀一雄は酔っぱらって,太宰治と心中しようとしたことがある。 ○ 太宰のすべてを知る檀だけは「今回は駄目だ」と言い,口を閉ざし,葬儀にも参列せず,胸に残る数々の断片を回想するように『小説 太宰治』を書いたのでした。 ○ 極度の潔癖症だった泉鏡花。菌が怖すぎて,なんでも自前のアルコールランプで煮て食べていた。 ○ 「悪霊」についてお詫び 江戸川乱歩(「新青年」昭和9年4月号) ○ 川端康成は,家に入った泥棒をジッと見つめて退散させた。 ○ 菊池は,「文藝春秋創刊号」編集後記に 「この雑誌に,書いてくださる人に一言する。原稿料は,原則として払う。殊に,文筆丈で喰っている人には屹度払う。(中略)投稿も取る。無名の人でも,言説が面白ければ採る」と掲げ,才能がありながら食えない作家たちに飯を食わせ,金銭面で援助し,作品を書かせて発表の場を与えます。
目次 まえがき 第一章 太宰治を取り巻くどうかしている文豪たち 〜太宰治・檀一雄・坂口安吾・志賀直哉・中原中也・宮沢賢治〜 第二章 夏目漱石一門と猫好きな文豪たち 〜夏目漱石・芥川龍之介・室生犀星・正岡子規・内田百間〜 第三章 紅露時代の几帳面で怒りっぽい文豪たち 〜尾崎紅葉・泉鏡花・田山花袋・国木田独歩・幸田露伴・淡島寒月〜 第四章 谷崎潤一郎をめぐる複雑な恋愛をした文豪たち 〜谷崎潤一郎・佐藤春夫・永井荷風・江戸川乱歩・森鴎外〜 第五章 菊池寛を取り巻くちょっとおかしな文豪たち 〜菊池寛・直木三十五・川端康成・横光利一・梶井基次郎〜 あとがき 参考文献【関連】 ◇進士 素丸 (@shinjisumaru)(Twitter)