集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

伝右衛門サとたぬき (つくで百話 最終篇)

土筆0316。 朝は青空でしたが,雲が広がりました。寒い曇りの一日でした。  昨日立ち寄った所で,土筆を見つけました。  当地で見られるのは,まだ先ですが,見つけた"”に,わくわくした気持ちになりました。  みなさんは,土筆を見つけましたか。  『つくで百話 最終篇』(1975・昭和50年7月 発行)の「昔話と伝説」の項からです。 ********     伝右衛門サとたぬき   織田勇司  作手村の小林に,むかし,伝右衛門サという人がいました。  あるばん,伝右衛門サがいろりばたでなわをなっていると,うらの山で,      "ポンポコ ポンポン” と,たぬきの腹つづみの音がします。そして,何やらうたっているようです。そっとうらぐちまで行って耳をすますと,たぬきは, 「伝右衛門サが でんつくだ」      "ポンポコ ポンポン” と,やっているのです。 「たぬきのやつめ,わしをからかいにきたな。」  そう思った伝右衛門サは, 「そういうやつがでんつくだ。」 と,やりかえしました。  すると,たぬきは,もっと大きく, 「伝右衛門サが でんつくだ。」      "ポンポコ ポンポン” と,やりかえします。 「伝右衛門サが でんつくだ。」      "ポンポコ ポンポン” 「そういうやつが でんつくだ。」 と,何回もやっているうちに,伝右衛門サは "こりゃァ たいへんなことになった”と,気がつきました。 「たぬきと呼ばりっこをして負けると,死んでしまう。」 と,村一番のもの知りの与作じいサが言っていたことを思いだしたのです。 「負けてなるものか。」 伝右衛門0316。 伝右衛門サはがんばりました。のどがかわいて,ヒリヒリしてきました。  たぬきが, 「伝右衛門サが でんつくだ。」      "ポンポコ ポンポン” と,やっている間に,いそいで茶がまの湯をのんで, 「そういうやつが でんつくだ。」 と,やりました。  何百回もやっているうちに,とうとう,茶がまは,からっぽになってしまいました。  たぬきと呼ばりっこをしながら,うらへ出て,つるべで井戸水をくみました。つめたい水をのみながら,のどがいたいのをがまんして, 「そういうやつが でんつくだ。」 と,がんばりました。  何百回,何千回やっても,たぬきはちっともやめません。頭がクラクラして,目がグルグルまわりはじめました。 「もうだめだ。」 と,思いながら,最後のがんばりで, 「そういうやつが でんつくだ。」 と,さけんだとたん,たぬきの声と腹つづみがパタッとやみました。  伝右衛門サは,ヘタヘタと井戸ばたへすわりこんでしまいました。  夜があけてから見ると,ひとかかえもある大だぬきが,腹の皮をやぶって,血まみれになって死んでいました。    (続 愛知のむかし話) ********  この昔話は,「つくでの昔ばなし」に,同名で掲載されています。   ◇伝右衛門サとたぬき  注)これまでの記事は〈タグ「つくで百話最終篇」〉で  注)『続 つくで百話』の記事は〈タグ「続つくで百話」〉で  注)『つくで百話』の記事は〈タグ「つくで百話」〉で