集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『10代からの批判的思考』(名嶋義直・編著)

花0226。 乾燥した日が続いていましたが,それを落ち着かせてくれるが降りました。  子育てや教育の話で,「批判的思考」という言葉・用語が使われます。  “批判”という言葉に負のイメージがある方も多いでしょうが,「問題解決能力」「コミュニケーション力」などとともに,次代を担う人材が身に付けるべき「21世紀型スキル(21st Century Skills)」の一つです。  学校教育法には,例えば高等学校における教育で
 個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと(第51条3項)
のように目標として述べています。  学習指導要領では,
○ C 読むこと (1) イ 文章を批判的に読みながら,文章に表れているものの見方や考え方について考えること。《国語》 ○ 文章を批判的に読むとは,文章に書かれていることをそのまま受け入れるのではなく,文章を対象化して,吟味したり検討したりしながら読むことである。《国語》 ○ 道徳的価値を実現する上での迷いや葛藤を大切にした展開,知見や気付きを得ることを重視した展開,批判的な見方を含めた展開にしたりするなどの学習指導過程や指導方法の工夫が求められる。《特別の教科 道徳》
などの指導を解説しています。  そうした「批判的思考」を題名にした『10代からの批判的思考 ――社会を変える9つのヒント』(明石書店・刊)です。 本書も,
 皆さんは「批判的」ということばにどんなイメージをもっていますか。たぶん10人に聞いたら10人とも「よくないことイメージ」と答えると思います。
と日常生活のニュアンスを述べ,“学術的な世界”では全く逆であり,重要なのだと述べます。そして,
「批判的に考える」とか「批判的思考」とか「批判的姿勢」というのは,簡単にいうと「一歩立ち止まってじっくり考えてみる」姿勢を言います。だから「よいこと」なのです。「ん?」と何かが引っかかった時,それは批判的思考のやる気スイッチが入ったときです。
と,10代の読者に伝えています。  9人の筆者が,それぞれのテーマで“批判的思考”を述べています。  話が進む中に点線囲みの「Q&A」がいろいろと出てきます。そこで“一歩立ち止まって考える”ことや“「ん?」と引っかかる”ことができるように「A」は書かれていません。  ここで批判的に考えることが体験できるかも…。
Q:「みんながその(道徳的)行動に納得し,実際にそのように行動するような信念」とは何でしょうか。その場合の「みんな」とは誰でしょうか。 A: 
 各章が,専門的にくわしく述べられ,学術的な説明もあります。
 つまり,倫理とは,人間関係(「人々と間柄」)において守るべき秩序(「道」)を意味します。この倫理という基盤のうえに,さまざまなルールが成り立っているのです。
 丁寧に説明されています。しかし,そのことが“論文”のようであり,10代の読者に分かりやすいのかは不安です。  気になったテーマの章を,「Q&A」で立ち止まりながら読むと,「なるほど」と思えたことに「こう考えたら…」と,新しい気づきが湧き出てくるでしょう。  それが,あなたの批判的思考を高めてくれます。  10代の皆さん,そして教育に携わる方々,本書で“思考”してみませんか。  読書メモ
○ この本を手に取っている皆さんには,まず情報を疑うことから始めてもらいたいと思います。 ○ この上下関係は,子どもにとって固定的であり,変えることのできない「権力」だと感じられています。それに対して,教師は「能力」として捉えます。つまり,上位グループの「にぎやか」「気が強い」(略) などであると教師には見えています。 ○ そうすると,アリがキリギリスに食べ物を分けたことは,贈与や慈善ではなくて,労働への支払いだったと解釈できるかもしれません。  この解釈は,アリ自身は歌に興味がないとしても成り立ちえます。個人的には歌に興味がなくても,そのよさを認めることはできるからです。 ○ さらに,他の人との論議を通して,自分を相対化し,自分自身の偏りが意識できれば,発信のための理想的な準備ができます。 ○ このとき,「トラブルを起こしたくないから道路に出ることはしない」という選択をしてしまうと,社会に共有されるべき情報や意見の量が少なくなって,民主的な社会が成り立たなくなっていきます。 ○ グローバル人材の必要要素について(略)  ・環境適応力  ・旺盛な好奇心  ・体力,知力,気力  ・人間力  ・語学力(日本語能力を含む)
   目次 この本を手に取ってくれた皆さんへ 第1章 校則(ルール)って? …寺川直樹 第2章 いじめって? …田中俊亮 第3章 いろいろな学びの形――高校生活の多様な選択肢 …竹村修文・名嶋義直 第4章 いろいろな学びの形――生涯学習/キャリア教育 …竹村修文・名嶋義直 第5章 仕事って? …後藤玲子 第6章 メディアを読む力、問いかける力 …今村和宏 第7章 「表現の自由」って何ですか? …志田陽子 第8章 豊かでプライドが持てる日本が続くために――多文化共生 …佐藤友則 第9章 世界に挑め!――グローバル人材への道 …古閑涼二
【備忘録メモ】  ATC21S(Assessment & Teaching of 21st Century Skills)は,次の4領域10種類のスキルを,「IT技術の発展やグローバル化の進む21世紀以降の社会で活躍するために必要なスキル」として定義しています。
思考の方法(Ways of thinking)  ・創造力,イノベーション(Creativity and innovation)  ・批判的思考,問題解決,意思決定(Critical thinking, problem-solving, decision-making)  ・学びの学習,メタ認知(Leaning to Learn, metacognition) 仕事のツール(Tools for working)  ・情報リテラシー(Information literacy)  ・情報通信技術に関するリテラシー(Information and communication technology literacy) 仕事の方法(Ways of working)  ・コミュニケーション(Communication)  ・チームワーク(Collaboration) 社会生活(Ways of living in the world)  ・地域と国際社会での市民性(Citizenship ? local and global)  ・人生とキャリア設計(Life and carrer)  ・文化の認識や需要を含む,個人と社会の責任(Personal and social responsibility ? including cultural awareness and competence)