『ただいま神様当番』(青山美智子・著)
朝から曇った天候で,雨の降りだしそうな空でしたが,屋外の活動に支障のなかったようです。
とはいえ,巣ごもりの続く日々で,“屋外の活動”はゴミ捨てだけで歩数計も寂しがる一日でした。
朝起きたとき,腕の内側に“黒いもの”があったことがありませんか。
そのとき“不思議なこと”に出会っていませんか。
“黒いもの”を見つけた5人のお話『ただいま神様当番』(宝島社・刊)です。
その黒いものは,“太くて大きな文字”でした。「神様当番」と印刷されたような文字が書かれています。
突然の文字に驚いていると,しゃがれた声が聞こえます。
「お当番さん,みーつけた!」
見知らぬお爺さんが,部屋の隅の床にちょこんと正座しているのです。
小柄で痩せていて,額からてっぺんに向かってつるつるで,頭の両脇に白い毛がもわもわと生えている。泥棒か…強盗か… 見ず知らずの人がいたら,誰でも驚き,大きな声を上げますよね。急いで警察に電話を…。 でも,電話をかけるのは思いとどまります。前日の出来事を思い出したからです。 毎朝利用しているバス停「坂下」に,付箋が付いた「○○」がありました。その付箋には,サインペンで走り書きしたような文字で「おとしもの」とあります。 まわりを見回しても,誰もいない…。 鞄・バックの中に押し込んで…。 その「おとしもの」の持ち主かと思いましたが,そうではなかったようです。
「どなた…ですか」 「わし? わし,神様」 「…は?」 (略) 「お願いごと,きいて」 お願いごと? 「わしのこと,○○して」5人それぞれにお願いごとがありました。そのお願いを叶えるのが当番の役割で,終わらないと文字は消えませんし,神様も居続けます。しかも“腕の中”に入ったり出たり…。 最初のOLへは「わしのこと,楽しませて」と。 二番の小学生には「わし,最高の弟が欲しいなあ」と。 三番の高校生には「わし,リア充になりたい」と。 四番の大学非常勤講師には「わし,美しい言葉でお話がしたいの」と。 五番の零細企業社長へは「わし,えらくなりたいの」と。 一番のOLの話を読み,彼女の思い,出来事,そして神様の“無茶な動き”を楽しく読み,その“結果”と,そこからの“気づき”に,心が温かくなりました。 二番になって,「あれっ」と。この子は,バス停に“いつも決まった顔ぶれの五人”の一人のようです。 三番,四番,五番…,皆,坂下バス停から毎朝乗り合わせる人達でした。 神様のお願いに,どのように5人が追求していくのか,わくわくします。 奇想天外な神様に振り回されますが,いつのまにか悩みも解決していて…。 あなただったら…。 読書メモ
○「葵さん,上司に腹が立ったとき,どうしてる?」 「ひそかに,かわいいあだ名をつける」 ○ そんなふうにアイディアを出し合うだけで,ものすごい高揚感を覚えた。(略) 単に楽しいって,それが私たちにとって一番大事なことだった。 ○「怒っているとか悲しいとか,そういう気持ちは一番にしっかり伝えなくちゃだめだよ。その後にちゃんと笑うためにもね」 ○ そうだ,神様が言っていた「お話」はきっと,スピークではなくトークだ。 ○「パワフルだな。自分だってあんなにハードなのに,どこにそんなエネルギーが」 「愛されているからでしょう。みんなが彼女を愛して,彼女はそれ以上にみんなを愛するんです。そのエネルギーが循環している。ネネさんは応援の持つ莫大な力を知っているんです。ひとりで叶えられる夢など,何ひとつないってことも」 ○「あんたが…左手が,勝手にしてきたことって,俺が本当の本当はやりたかったことだよな」 ○「世の中っていうのは」 「えっ」 「たいがい,誰かのおとしものでできてるんじゃよ。最初から自分のものなんて,何もないんじゃ」
目次 1 水原咲良(OL) 2 松坂千帆(小学生) 3 新島直樹(高校生) 4 リチャード・ブランソン(大学非常勤講師) 5 福永武志(零細企業社長)【関連】 ◇青山美智子 (@michicoming)(Twitter) ◇Tatsuya Tanaka 田中達也 (@tanaka_tatsuya)(Twitter)