集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『感染症の日本史』(磯田道史・著)

紅葉1112。 朝,雲が目立ちましたが,日中は青空の晴れた日になりました。  「一日の新型コロナウイルスの感染者数が○○人を超え…。」と連日のニュースとなっています。その状況に,日本医師会の中川会長は「第3波と考えてもよいのではないか」と述べ,加藤官房長官は「政府は具体的な(第3波の)定義を定めているわけではない」と述べと,駆け引きを感じてしまいます。  大臣が「食事中も飲食用マスクを…」のメッセージを分科会に求めていますが,それは違っているような気がします。  感染拡大への適切な対応が行われ,安心できるようになるのか…。  先月(10/25)の安住紳一郎の日曜天国で,磯田道史氏が『感染症の日本史(文春新書)から,「江戸時代のパンデミック」について話されていて,本書を知り,早速読みました。  新型コロナウイルス感染症に関する図書を何冊か読み,目を通しまし,次の紹介をしました。   ◇『感染症対人類の世界史』(池上彰・増田ユリヤ・著)(2020/09/14 集団「Emication」)   ◇『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』(小林よしのり・著)(2020/09/17 集団「Emication」)  本書は“感染症の歴史”から述べていますが,池上氏達の図書と違い「今こそが歴史の知識が必要だ!」と帯にあるように,「歴史に学ぶ」ことを楽しむ内容になっています。  「楽しむ」という表現は,新型コロナ禍で不適切かもしれませんが,「昔の人は凄い!」と感心し,「昔も同じことがあったんだ」と驚いたりしながら,今の自分を考えさせられます。
○ この本は「歴史学が世の中に何ができるか。歴史は現代の人々に役に立つのか」ということを考えるなかで,生まれたものです。 ○ さらにすごいのは以下の布告です。  〈酒家は絶て禁ずるには及ばざれども,暴飲すべからず,かつ房事を節すべし〉。 ○ 感染症対策のノウハウを他の省庁とも共有してもらいたいものです。感染者は省庁縦割りの姿もあらわします。 ○ 当時は,迷信のように思っていましたが,こうした「清」と「次」の文化も馬鹿にできません。
 まだ第一章の最初で,どんどん付箋が付いていきます。  このままでは,いったい何枚になるのでしょう。  出版社の紹介文。
 一級の歴史家が、平安の史書、江戸の随筆、百年前の政治家や文豪の日記などから、新たな視点で、感染症と対峙してきた日本人の知恵に光をあてる。  新型ウイルスに対するワクチン、治療薬も確立していない今だからこそ、歴史を見つめ直す必要がある。  「給付金」も「出社制限」も「ソーシャル・ディスタンス」もすでにあった! 今こそ歴史の知恵が必要だ!
 第六章に「患者史」が登場します。
○ 病原体の発見や医療技術・薬の進歩を追った「医学史」 ○ 上水道や医療施設などのインフラ,厚生政策などを対象とした「衛生史
 これに対して「患者の側から見た歴史」です。  不謹慎な表現かもしれませんが,ここが本書の“面白さ”の一つです。  京都女学生の「感染日記」から始まり,いろいろな患者の症状や対処の記録が“その時代”のようすとともに読み解かれています。  病気に対する知識も治療法もないかなで,市井の人々が,スペイン風邪の「春の先触れ(第一波)」「前流行(第二波)」「後流行(第三波)」などに対処しています。その行動が,現代の新型コロナウイルスへ対応とズレていないことに驚きです。  そこから学ぶ,現状そしてこれからの対応は…。  本書から“日本人の知恵”を知り,“歴史に学ぶ”ことを学び,“古文書の面白さ”を楽しめます。  そして,日々の行動を“記録する(記録しておく)”ことの意味や価値を思いました。  今,読むべき一冊です。  もう,読まれましたか。
   目次 はじめに 第一章 人類史上最大の脅威 第二章 日本史のなかの感染症――世界一の「衛生観念」のルーツ 第三章 江戸のパンデミックを読み解く 第四章 はしかが歴史を動かした 第五章 感染の波は何度も襲来する――スペイン風邪百年目の教訓 第六章 患者史のすすめ――京都女学生の「感染日記」 第七章 皇室も宰相も襲われた 第八章 文学者たちのスペイン風邪 第九章 歴史人口学は「命」の学問――わが師・速水融のことども