集団「Emication」別館

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大昔の人のくらし(4)-2 (つくで百話 最終篇)

紫陽花1014。 朝,曇って雨の降りそうな空でした。予報では晴れだったのに…。  徐々に雲が切れ青空が広がり,晴れの日になりました。日中になると,昨日のような暑さでした。  この頃,紫陽花に新しく“装飾花(ガク)”が咲いています。春に咲いた花が枯れて残っているのに,そこに綺麗な花が並んでいます。  四季桜のように“四季アジサイ”となってきたのでしょうか。あれっ…。  『つくで百話 最終篇』(1975・昭和50年7月 発行)の「民俗と伝承」の項からです。 ********     大昔の人のくらし   沢田久夫   (4) 縄文末期のくらし (つづき)  後期の土器で注目すべきことは,粗製の土器と精製の土器が,はっきり分れたことである。地の縄文が条痕だけの口縁に,僅かな凸帯をめぐらすだけの甕形の粗製土器と,土瓶形や皿,浅鉢などの施紋に飾られた精製土器となる。むろん粗製土器は厨房雑器であるから,しきりに壊れてすてられるが,精製土器は儀式用らしく,種類も多く,繊細複雑化していき,それぞれ神と,その神を司る人に捧げる器として生れてくる。晩期に入ると,きたない厨房用と,きれいなお座敷向きにと,その傾向は一層著しくなっていく。  石棒という,陽石に似た石器がある。中期後半に,地母神の憑代となって竪穴の中に立てられた石棒は,後期になると小形で美しく磨かれ,時として両頭のものも出てくる。石質も,中期の安山岩や硬砂岩のような粗面のものから,緑泥片岩や粘板岩など,仕上りの美しいものに替る。これは,もう村の祭器でも家の憑代でもなく,かといって殴る武器でもない。恐らく個人の所有として腰のもの,特別な人間の威儀具となったのである。  また,これと前後して出てくるものに,石剣または石刀という,切れない石の刀である。剣と刀の別は,両刃が剣であり,片刃が刀であるが,鐺や鍔らしい表現のものもあり,柄頭に模様をもつものもある。いずれにしろ,奇怪なだけで切れない武器というものは,後の王たちが持った玉杖のように,指導者のシンボルであった。しからば,どんな人が指導者となったであろうか。まず考えられるのは,神と人とをつなぐ人,司祭・呪者である。そういう人は,初めは村の一つの機関にすぎなかったであろうが,「魏志倭人伝」が伝えるような,カンの悪い呪者は死を以って部族の不幸を贖わねばならなかったが,カンのいい呪者は,恩賞からやがて尊敬に変り,村の運命を握ったものは,次第に指導者に成長したのは当然の成行といえるだろう。  呪者は縄文中期にも居た。しかし,中期の呪術は大地と連なり,後晩期の呪術は人間と連なっていた。その特別な人は,はじめ神の言葉を人に伝え,やがては人の言葉を民衆に伝えて指導者の座に上ったのであるが,何故それが後晩期になって顕著となってきたのか。その一つの理由は食糧資源の不足から,手当り次第何でも喰うようになったことである。貝塚についてこれをみると雑食性がきびしくなり,栄養価の低いものでも丹念に拾っていたことがわかる。こうした採集生活の完全な行詰りの時期が縄文晩期で,食品獲得の場,つまり猟場のきびしい統制・縄張り領分の規制と防衛が焦眉の急となったことも,また当然の成行きというものである。そこで何が必要か。呪力が暴力と結び,神の意志を導く呪術師が,力によって指導者の座につく──まさに縄文世界の落日の姿である。  この時期の作手の遺跡をみると,縄文後期に田ノ口・ヌイガイツ(菅沼)・タイコヤシキ(市場)の三ヶ所,晩期ではイモリヤマ・田ノ口(菅沼)の二ヶ所計五ヶ所のうち,四ヶ所が菅沼である。田ノ口やヌイガイツは,次の弥生文化の遺跡でもあり,作手では一番さきに水稲耕作の始った所である。隣接地方の遺跡も追々数を増し,新城市では後期八,晩期六の十四ヶ所,鳳来町では後期二,晩期六の八ヶ所,設楽町では後期二二,晩期二五,計四七ヶ所を数えることができる。  このように遺跡の数は増加するが,その規模はいずれも小さく,大遺跡は魚貝に恵まれた海浜にしか育たなかったらしい。三三三体の人骨を出した吉胡貝塚田原町),同じく人骨二七体を出した伊川貝塚渥美町)は,ともに後期から晩期につづく大遺跡で,貝層は前者が東西七〇メートル・南北四〇メートル,後者は東西一五〇メートル,南北五〇メートル。厚さは,ともに二メートルに及んでいる。この外にイノシシ・シカ・サル・キツネ・ウサギ・ボラ・マグロ・ブダイ・イルカの骨がばらばらに出ており,犬のみは完全に一体分揃って出た。今の柴犬に近い小形犬で,猟に使われたらしい。 ********  注)これまでの記事は〈タグ「つくで百話最終篇」〉で  注)『続 つくで百話』の記事は〈タグ「続つくで百話」〉で  注)『つくで百話』の記事は〈タグ「つくで百話」〉で