浮浪雲が語りかけるのは(浮浪雲選集)
今日も雨…。
激しく降ったり,小雨になったり…。
大雨,浸水による被害,被災地のようすを伝えるニュースに,胸が痛くなります。
早く雨の止むことを願うばかりです。
大雨により休校となった子供,避難して登校できずにいる子供がいます。
東京都で新型コロナウイルス感染者が,1日あたりの人数が過去最多とのニュースがありました。
“不安を大きく”する子供は,どんな話をするのだろう。
学校・先生は,何ができるだろう。
“浮浪雲”なら,どんな声をかけるだろう。
そんなことを思いながら『浮浪雲選集』(1993年刊)を読み(?)ました。
『ビッグコミックオリジナル』(小学館)に44年間連載され2017年9月に終了した作品(全1,039話)で,作者のジョージ秋山さんは,今年5月12日に亡くなられました。
『親子編』「壱の親子 成りがたし」に,このような言葉があります。
おカメ:(息子 新之助の受験結果を心配して)大丈夫 かしらね,今日の試験。 浮浪雲:駄目 でしょう。 おカメ:また そういうことを。どうして そういうことが いえるんですか。 浮浪雲:頑張って ないかからです。 おカメ:自分なりに 頑張ってましたよ。 浮浪雲:自分なりじゃ 駄目なんです。試験の結果は失敗。寺子屋の先生も「なぜ落ちた」と不思議がる結果を,浮浪雲は見抜いていました。 「自分なり」ではダメなのだと。 その後,息子 新之助は,父親 浮浪雲に教えを乞います。 浮浪雲が新之助に課したことは,桶に水を汲むこと。 浮浪雲は言います。
いいですね,いっぱいに なるまで ですよ。 自分なりの 考えで やらないように ……新之助が,浮浪雲が準備した道具に文句を言っているとき,お花(娘)に伝言を言わせます。
父上は 違うそうです。 人に 教えを乞う時は 自分なりの考えは やめなさいって。 そうしないと 悟れないって。子供は,何ごともしっかりやっています。それが“自分なりの…”なのか気に留めていないように感じます。 その姿を,安易に「いいね」「頑張ってるね」と褒めていねいでしょうか。勘違いしていることはないでしょうか。 もう一つ「六の親子 草笛の丘」から。 勉強をしない息子 新之助を,母親 おカメが心配しています。
おカメ:硯なんかほこりだらけで… 浮浪雲:まっ,いいじゃねえですか。 おカメ:良くはありませんよ。 黙っていればそのうちやるかと思えば,まったく机に向かおうとしないんですからね。 (略) おカメ:すこしは父親としてなにか…… 浮浪雲:やってますよ,あちきも。 水平線を見に行かせましたから。その後も,息子 新之助の様子は,変わりません。 ある日の夜,布団で尋ねます。
浮浪雲:毎日水平線を見てますか。 新之助:まあね。 浮浪雲:どうでした。 新之助:どうって……やっぱし海は大きいなあ…って思うよ。(略)ある日,二人で舟に乗り,沖に出ます。そして一言。
浮浪雲:新さん ずーと水平線を(略)…… 新之助が変わりました。 今,大人の“ことば”が,子供に伝わっているでしょうか。
目次(親子編) 壱の親子 成りがたし 弐の親子 ひとがら 参の親子 花の二代目 四の親子 不可思議 五の親子 春風たいとう 六の親子 草笛の丘 七の親子 大草原の対決 八の親子 一年生 九の親子 春の風景 拾の親子 直立不動 拾壱の親子 大円鏡智 浮浪雲の子育て処方箋 あとがきにかえて(ジョージ秋山) ビッグコミックス浮浪雲掲載作品一覧【関連】 ◇ジョージ秋山「浮浪雲」(ビッグコミックBROS.NET) ◇漫画家のジョージ秋山氏が逝去されました(ビッグコミックBROS.NET 小学館)