集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『新版 科学者の目』(かこさとし・文と絵)

ろうそく1026。 関東,東北地方で,再び大雨で浸水したところが出ています。  「やっと片づけたのに…。」「また…。」  被災者に寄り添ってとの思いはあっても,繰り返される災害に,かける言葉が見つかりません。  良い天候が続いて,復旧が進みますように!  今年(2019)のノーベル化学賞に吉野彰氏が選ばれました。  受賞決定によって,吉野氏が小学4年生のとき,担任の先生が英国の科学者ファラデーの『ロウソクの科学』を薦められて読んだのが,“科学への興味を持つきっかけになった”ということが話題になりました。  子供が「何に興味を持つか」「どのような人を知るか」によって,“その子の人生が決まる”と言っても過言でないと思っています。そして,「」がきっかけとなることが少なくありません。読書の習慣は,子供の人生を創っています。  選書に迷ったとき,“伝記の本”をお薦めします。描かれる“できごと”に子供の心が動きます。  1969年11月から約1年間,朝日新聞日曜版のこども欄に連載されたものが『科学者の目』が,1974年に発行されました。本書は,巻末に「科学者・かこさとしの〈目〉」(鈴木万里)が加わった新刊(2019年・刊)『新版 科学者の目』(童心社・刊)です。  昨年,著者が亡くなったときに『科学者の目』も話題になったのかもしれませんが,初めて知った本でした。  41名の科学者について,それぞれの扉に“「目」と氏名”と“一般的な説明”があり,そして,かこさとしさんの描く「肖像画」が描かれています。続けて3ページ(一部5ページ)で“子供への紹介の語り”です。  かこ氏の選んだ41名については,下記の紹介(目次)をご覧ください。  知っていた人,名前は知っていた人,読んで思い出した人,初めての人…,それぞれの発想や着眼点から「」に感心して読みました。そのなかで,目なく「瞳・まなざし・眼球・まなこ」としたことを考えました。  この伝記集を書くにあたって,かこ氏は三つの点に特に注意をはらったと「あとがき」で述べています。
 その第一は,いままでの子ども向けの科学者の伝記というものが,ともすると「偉かった」「すごい発明をした」(略)その業績の内容を,じゅうぶんに読者にわかるように伝えていない点を改めたいと考えたことです。いかに子ども向けてあるからとはいえ(略)  第二の点は,科学者の目がどこにそそがれ,どんなふうに観測し,なにを見ぬいて考えたかを書きたいと思ったことです。(略)  第三の私が注意した点は,登場してくる科学者を,たんに近よりがたい偉人としてまつりあげるのではなく,人間として描きたいと考えたことです。(略)
 多くの子供が手に取って,科学者の目に触れてほしい一冊です。もし,旧版が小学校の図書館にあれば,子供の手に取りやすい所へ置き直していただきたいと思います。  科学者の目は子供だけの楽しみでなく,大人も十分に興味をもって読め,発見があります。  いかがですか。 *****    科学者の目  もくじ    *(はじめに)  1 日本列島の骨組みを見ぬいた目… エドムンド・ナウマン  2 宇宙の真理と考え方をとらえた目… ニコラス・コペルニクス  3 泥のなかからすみれ色を見つけた少年の瞳… ウィリアム・パーキン  4 野うさぎや羊のようなふしぎな目… アレキサンダー・フレミング  5 悲しみと運命に耐えぬいた目… トーマス・グレアム  6 秒速三十万キロメートルの光を追いかけた目… アルバート・マイケルソン  7 かぐわしい梅の花のような目… 丹下ウメ  8 最高の画家で科学者であった人の目… レオナルド・ダ・ビンチ  9 化学のカレンダーをつくった青いするどい目… ドミトリ・メンデレーエフ  10 広いおでこの王さまの目玉… フリードリヒ・ガウス  11 完全な科学者・市民・愛国者の目… ルイ・パスツール  12 科学者の葬儀を見つめていた少年の目… アービング・ラングミュア  13 星とそろばんでZ項を見いだした目… 木村栄  14 激しく燃え不敵に光った天才のまなざし… エバリスト・ガロア  15 炎の光を分析したたった一つの眼球… ウィルヘルム・ブンゼン  16 恐竜のように滅亡していった研究家の目… リチャード・オーウェン  17 分子をとらえたカメレオンのまなこ… アメデオ・アボガドロ  18 地中の境目を見ぬいたタカのような目… アンドリア・モホロビテッチ  19 学問と祖国愛に燃えた化学者の瞳… スタニズラオ・カニッツァーロ  20 見えぬX線を見つけた目… ウィルヘルム・レントゲン  21 海賊船に乗っていた気象学者の目… ウィリアム・ダンビア  22 この世でもっとも巨大なものを見つめていた目… ウィリアム・ハーシェル  23 πの値を見きわめた中国科学者の目… 祖沖之  24 地図から大陸の動きを読みとった目… アルフレッド・ウェゲナー  25 見つけた芽に打ちくだかれたガンコな目… ヤコブ・ベルセリウス  26 暗号と情報伝達の道をひらいた目… フランシスコ・ベーコン  27 カシオペア星団の光をとらえた瞳… カロリーネ・ハーシェル  28 文学・化学・平和にそそいだ目… アルフレッド・ノーベル  29 三太郎の一人の目… 長岡半太郎  30 カエルよ許したまえ、目ざとく動いたあの目玉… ルイジ・ガルバーニ  31 エンドウの目・親ゆずりの目… グレゴール・メンデル  32 交通事故によって失われたダウの瞳… レフ・ランダウ  33 毒を飲んで抗議した激しいまなざし… 蔡倫  34 台風の目の法則を見つけた目… ボイス・バロット  35 千里眼のいつわりを見ぬいた目… 山川健次郎  36 考え、働き続けた魔法使いの目… トーマス・エジソン  37 ケチでねばり強い色盲の化学者の目… ジョン・ドルトン  38 カツオとイルカとクジラを見分ける目… アリストテレス  39 数千メートルの海底と一億年前を見ぬいた目… ハリー・ヘス  40 鳥と周りの自然に語りかけたまなざし… ジョン・J・オーデュボン  41 大きくて偉大な目とやさしく勇気ある瞳… アルフレッド・アインシュタイン   * あとがき   * 科学者・かこさとしの〈目〉   * 科学・技術史略年表 *****
ノーベル賞1026。
【関連】  吉野彰氏が,科学への興味を持つきっかけになった本。  1本のロウソクから種類,製法,燃焼,生成物質を語ることによって科学と自然,人間との関わりを伝える名著です。   ◇『ロウソクの科学』(角川文庫)   ◇『ロウソクの科学』(岩波文庫)   ◇『ロウソクの科学 世界一の先生が教える超おもしろい理科』(角川つばさ文庫)