災害に備えて。『福沢諭吉の事件簿 I』( 鷲田小彌太・著)
炎暑,猛暑が続きます。今日も暑い一日でした。
当地では夕方になって雷鳴とともに強い雨が降り,気温が下がり,少し涼しくなりました。
今日は9月11日です。
あの日から「19年」「18年」「8年6か月」となる日です。“特別”な日と捉えたい一日です。
地震や台風,ゲリラ豪雨など自然災害で被害が出ていますが,災害への対応について「正常性バイアス」「集団同調性バイアス」「同化性バイアス」「凍りつき現象」「楽観的無防備」「ベテランズ・バイアス」といった心理によって,知識や備えはあるのに適切に対応できないことも多いようです。
“節目の日”に,これからくる災害への対応・備えについて考えたいと思います。
題名に「福沢諭吉」とあり,『学問のすゝめ』などの印象から,名前に続く「事件簿」が適わない感じがしました。
それが気になって『福沢諭吉の事件簿 I』(言視舎・刊)を読みました。
幕末から明治のできごとを,福沢諭吉と福沢村在住の渡し船頭 由吉の行動と会話(?)で描いています。
6つの事件が,それぞれ4項で話が進んでいきます。そこに登場する人物,出来事は,「知っている」「聞いたことがある」ことですが,「えっ,そうなの?」「本当に?」と思うことがありました。
著者の鷲田氏がブログで述べています。
「歴史」とは「書かれたもの」の意で、「創作〔フィクション〕」である。東の司馬遷『史記』も西のヘロドトス『ヒストリアエ』も、そして日本の『日本書紀』も、文字通り、「書かれたもの」である。エッ、「史実」に基づいた「歴史」を無視するの、というなかれ。「史実」といわれるものも、「書かれて」はじめて「歴史」になる。つまりは「創作」であるほかないのだ。本書に“書かれた”ことが歴史となっていくのかもしれません。 「事件簿5 竜馬が暗殺されるの巻」では,これまでとは違った見方が描かれ,わくわくしながら読みました。
竜馬が裏で仕掛けた大政奉還にはさほど驚かされることはなかった。 だが,十一月の二十日過ぎ,留守宅に驚天動地の報が届いた。 「坂本竜馬が京で暗殺された!」 報じてくれたのは,浦賀奉行与力で軍艦役である中島三郎助である。(略)諭吉が暗殺に至った経緯や首謀者に思いを巡らせます。意見表明であり自問自答であり,それを続けます。 そして,京のようすを探った由吉から報告を受けながら,「暗殺動機」審問を行います。
「重要なのは,すでに確認したように,竜馬を殺した実行犯をあきらかにすることではない。誰が,どのような勢力が竜馬を殺す必然があったかを明らかにすることである,いいね。 きみの説明をわたしなりに検討してみた。一つ一つ,きみの判断を仰ぐから,遠慮なく答えてほしい。これもいいね。」 (略) 第一件(ケース1) 竜馬の最大の敵は徳川幕府である。(略) 第二件(ケース2) 竜馬の大政奉還にもっとも反対していたのは,薩摩であり,長州である。(略) 第三件(ケース3) 朝廷は昔から密諜のすみかである。(略) 第四件(ケース4) 竜馬はこの一年ほどかなりの数のトラブルを抱えていた。(略) 第五件(ケース5) 土佐藩は大政奉還を将軍慶喜に建議した当事者である。(略)さて,諭吉と由吉とは,どのように論じ,審問していったでしょう。 新しい展開に,もっと知りたい,調べてみたい気がしてきます。 福沢諭吉とともに,幕末・明治を探索してみませんか。
目次 事件簿1 「スパイ」松木弘安の巻 事件簿2 坂本竜馬と密会するの巻 事件簿3 幕府による文明開化をめざすの巻 事件簿4 「長州再征に関する建白書」の巻 事件簿5 竜馬が暗殺されるの巻 事件簿6 偽版探索の巻【関連】 ◇鷲田小彌太の仕事 ◇福沢諭吉の事件簿?(言視舎)(鷲田小彌太の仕事)