『愛と日本語の惑乱』(清水義範・著)
気温の低い朝でした。天気がよく日中は暖かくなりました。寒暖差が大きな一日でした。
当地と出先では15度近くありました。体が“ついていく”のが難しく,服装選びが難しくないですか。
10年ほど前(ひと昔)に読んだ本ですが,今でも“言葉”を考えるきっかけを与えてくれる本だと思います。それは,『愛と日本語の惑乱』(講談社文庫)です。
読んだ頃は,記録ではKKベストセラーズの出版ですが,今は講談社文庫の一冊のようです。
コピーライターの野口敦は,巧みに言葉を操り,評判のコピーを創っています。その彼が,言語多動性症候群に冒されてしまいます。
言葉を操っているはずが,言葉に襲われてしまいます。
野口とともに住む(?)女優の新庄百合子との“愛”が,そうした症状の引き金になるのですが,その物語よりも,各章に綴られる“言葉のはなし”を楽しみました。
いろいろな“言葉へのこだわり”は,「そういえばそうかもしれない」「そんな気がする」と,野口の話(清水氏の世界)に引き込まれます。
そのこだわりが,正しいのかどうか調べる気はおきませんが,言葉の愉しみが広がります。
野口は,出版社から雑誌の連載から本にしませんかと話を持ちかけられます。その校正の段階で,言葉の書き換え依頼がきます。
人を低く見るような悪口,ある種の職業の蔑称を平気で使うような非常識は許せないと思っている。 だが,そんな彼でも,えっ,と思ってしまうような指摘があるのだ。 「久しぶりに床屋へ行って頭がさっぱりした」 −<略>− と思っていたら,やっぱりそういう例が出てきた。 「幼なじみの八百屋の清田くんから聞いた話だが…」 という文章の,八百屋がダメだというのだ。 「少し差別的用語では。青果店トカ」と校閲が入っていた。 幼なじみとことわっているじゃないか,と思ってしまう。差別的用語の部分ですが,校閲で「ありそうだな」という指摘が,さまざま出てきます。それについての感想(解釈?)が愉しい。 清水氏の「言葉あそび」を愉しみ,“言葉”を考える一冊です。 いかがですか。
もくじ プロローグ 第一章 放送用語委員会 第二章 バイバイ! 尻ぬぐい 第三章 東大出とビンボー症 第四章 〈もがな〉との対話 第五章 イライラのそのわけは 第六章 すべからくぱないよね 第七章 脳の中の文法 第八章 新しいお嫁さんが来て結婚です 第九章 しからずんば、花 エピローグ【おまけ』 目黒FMの番組『よみほぐ』をご存知ですか。 人気声優が“よみほぐ師”となって,人気童話や昔話・名作文学などを読み聞かせる番組です。 先日の『カモ取り権兵衛』(よみほぐ師 伊藤昌弘)を聞いていて,知っていると思っていた話なのに,「あれっ,こんな展開だったっけ。」と新たな気づきがありました。 改めて読んでみたくなりました。 ◇よみほぐ(目黒FM)