『銀河鉄道の父』(門井慶喜・著)
気持ちよい風が吹きますが,気温が上がり暑い夏に戻った一日でした。
日の出は遅くなり,日の入りは早くなっていますが,日中は厳しい残暑が続きます。お気を付けください。
つくで交流館の図書室に「芥川賞,直木賞の受賞作」が並んでいて,その一冊『銀河鉄道の父』(講談社・刊)を読みました。
第158回直木三十五賞に選ばれた作品です。
題名の「銀河鉄道」は“宮澤賢治”のことであり,その父 政次郎の立場から,“変わり者”の息子 賢治が描かれています。
“宮澤賢治”の名前も作品も知っているつもりですが,その生い立ちなどは知りませんでした。
それを知りました。
また,賢治の生きた時代の生活や家族について,「へ〜,そうなんだ。」ということがありました。
家の主(あるじ)として,
政次郎は,目の奥で湯が煮えた。 あやしてやりたい衝動に駆られた。いい子いい子。べろべろばあ! それは永遠にあり得なかった。家長たるもの,家族の前で生をさらすわけにはいかぬ。つねに威厳をたもち,笑顔を見せず,きらわれ者たるを引き受けねばならぬ。と,行動を制しています。 今,こうした“家長の姿”をする大人がいるでしょうか。 こうした世に,賢治は生を受け,成長していきます。
清六へ,手帳をさしだした。 (略) 「どこも相手にしなかったら」 賢治はそう言うと,胸から下は動かさず,こけしのように首だけを政次郎へ向けて, 「そのときは,迷いのあとだ。処分してください,お父さん」 すなわち賢治はこのとき,成功は弟に,失敗は, (私に託した)この手帳は…。託されたことは…。 とても楽しく読みました。 宮澤賢治の作品を読みたくなりました。きっと,これまでと違った感想を抱きそうです。 父と子の“世界”を,あなたも訪ねてみませんか。
目次 1 父でありすぎる 2 石っこ賢さん 3 チッケさん 4 店番 5 文章論 6 人造宝石 7 あめゆじゅ 8 春と修羅 9 オキシフル 10 銀河鉄道の父