『ヒカルの卵』(森沢明夫・著)
「今日,明日と雨…」との予報でしたが,雨はわずかでした。
傘を持ってでかけましたが,それを使うことはありませんでした。強い雨を予想していたので,「ちょっと得した…」という気がしました。
さて,明日は…。
つくで交流館で紹介されていて興味をもった『ヒカルの卵』(徳間書店・刊)を読みました。
舞台は「限界集落」などと呼ばれる過疎の村,その村の中でもひときわ寂れた蛍原集落です。
集落で暮らす個性的な登場人物が“一人語り”をする形で,話が進みます。
このあたりの夜は,動物たちのものだ。夜行性の鹿や狸はもちろん,猪や穴熊などが我が物顔で里の周辺をほっつき歩くし,夜空を滑空するのはムササビか梟と決まっている。俺はまだ見たことがないが,川原にクマが出ることもあるらしい。最初は,こだわりを持って鶏を育てているムーさんこと村田二郎の語りです。 このムーさんが,集落が活性化することを“確信”して動き出します。 それを聞いた大吉,直子が…。
○「自分では傷ついたと思っても,それはただ磨かれてるだけなんだった」 「何,それ…」 「さっき,直ちゃん,人生いろいろって言ったけどもよ,そのいろいろってのは全部ヤスリなんだ。ヤスリってよ,ザラザラしてっから,心をこすられれば痛てえべ? でもよ,それをぐっと我慢して,痛みを乗り越えれば,ヤスリで磨かれた心は,前よりもピッカピカになって,珠みてえに光り輝くんだって」 ○ 久しぶりにフル回転で働いた私は腰が痛くなるほどだった。しかし,お客さんたちの口からこぼれる「美味しい」という台詞を耳にするたびに,私の背中には鳥肌が立っていたのだ。 美味しい。 なんて素晴らしい響きをまとった言葉だろうか。 ○「あははは。そんなこと言ったら,人生まるごと,ぜ〜んぶツイていることになっちまうべさぁ」 「んだんだ。ホントはよ,誰の人生だって,ぜーんぶツイてんだ。さっき,俺,ここで流れ星を見たけども,それだって,直ちゃんが山頂に行こうって言ってくれたから見られたんだべ。もっと前のことを言えば,去年,直ちゃんが蛍を見てえって言ってくれたところから,流星を見るためのツキははじまってんだぞ」ムーさんの第一の計画(夢)から始まり,第二,第三,そして第四へと。 それが,どのように広がっていくのか…。 夢と元気がわき起こってくる蛍原集落の人々の話です。 楽しみました。
目次 第一章 卵ブーメラン 第二章 傷つかない心 第三章 ヒカルの卵 第四章 商売の神髄 第五章 魔法の醤油 第六章 真夏の転機 第七章 屈託なき笑顔 第八章 男と男の約束 第九章 ボーイ・ハント 第十章 エピローグ あとがき【関連】 ◇森沢明夫 official blog あおぞら落書帳 【関連・モデル】 ◇たまごかけごはん「但熊」/農産物直売所「百笑館」 ◇本当の卵かけご飯!たまご倶楽部