集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『残念な教員』(林純次・著)

菜の花0304。 暖かい日でした。  用事があって出かけました。いつもと違う場所,いつもとは違う空気(?)に,久しぶりの体験と新鮮な気づきがありあした。  いつもと違う”って,愉しいですね。  「虎教師」の話題に続いて,教師・教員について本の話題です。  最近の本ではなく,3年ほど前(2015年)に記事にした『残念な教員 学校教育の失敗学』(光文社新書です。  著者は,京都大学大学院(教育学研究科)を卒業後,新聞社勤務,フリージャーナリストを経て,2003年に教員に転身し,現在は関西の中高一貫校で教員をしています。2012年度読売教育賞優秀賞を受けている方です。  ある書評に,
 いやあ、これは好き嫌い分かれるだろうなあという一冊です。  おそらく、現役の教員が読めば、反応は3パターン。そんなことはない!と反論したくなるか、今まで言いにくかったことを言ってくれたよと共感するか、あるいはその両方。  僕は学校の先生ではありませんが、”その両方”という反応です。
とありました。  この“3パターン”の説明は,天気を「晴れ,ときどき曇り,所により雨。」と言っているような気もしますが,確かに意見(感想)の分かれる内容かもしれません。  本書でいう「残念な教員」は,ニュースネタになるような破廉恥教員のことではなく,そもそも本業での「教え方を知らない」,その結果「生徒を成長させられない」教員のこととしています。  本の帯には,
 「教え方を知らない教員」が8割  鈍感教員,学ばない教員,学べない教員,コミュニケーション不全教員,理念欠如型教員──  「残念な教員」を量産する学校教育現場の「失敗のしくみ」を踏まえ,過去の教育実践の蓄積と著者自身の取り組みをベースに,未熟練教員と生徒を共に成長させる方法を提示する。
とあり,“問題”の発掘(?)から始まり,読み進めながら「どこから“方法”になるのだろう。」と読みました。  本書のなかに,「教育関連の本を年間20冊以上読む教員の割合は23%」という,教育新聞社が実施したアンケートが引用されていました。  いろいろな読書調査と似た傾向の結果であるようでもあり,この数値の解釈はわかれるでしょう。  しかし,「自分の仕事に関係する本を,月2冊も読まない“職業人”が約8割もいてよいのか。」という著者の意見には同感です。
 多少,読書をし,新聞を読んでいる教員でも,書籍を一冊だけ読んで,その内容を生徒に話してしまう。あるいは一紙・一冊の観点からのみ生徒に考えさせたり,事実の一部分だけを取り上げて生徒に伝えたりする実践も非常に多い。  こういう実践は,科学性や比較の重要性,物事の背景や歴史を一切無視して情報を垂れ流すのと変わりない。このレベルの教育実践に留まるのならば,自らを「教師」と名乗ってはならない。
 先日の「若者の読書時間0分…」という状況からすると,同じ調査をすると,さらに少ない結果かもしれません。  本書は,中高一貫校でみる教員,生徒の姿から描かれており,義務教育の現場とは異なることもあります。読み終わって“スッキリ”とはいかないかもしれませんが,「なるほど」と思う箇所への“対応”や“対策”を考えることで,これからの成長を考えることができると思います。  若い先生方,「残念な教員」にはなっていませんか。
   目 次 第1章 教育現場の実状 第2章 教師の技術 第3章 教育現場における「評価」 第4章 教員の成長 第5章 授業について 第6章 教員が技術を身に付ける順序   相対的剥奪指標方式/?指示?の重要性/?生徒心理理解?の重要性  など 第7章 身に付けてほしい3つの力   ?補習?教室の失敗/積極的行動力と、それに連関する思考力/人間力を高める機会の少なさ  など あとがき