集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『再起動』(岡本学・著)

葉1124。 朝,綺麗な青空でした。ところが,西から雲が流れてきて曇り空になり雨が降ってきそうでした。  「ざんねんな天候」と思いましたが,昼ごろからは再び青空になりました。  “冬”の一日でした。  図書室で,帯に「 情報工学研究者の群像新人文学賞作家が 現代の「神」を問う 」とあったコピーが気になって『再起動』(講談社・刊)を借り,読みました。  「」が“起業”した「リブート教(再起動)」は,もっともらしい教義で人々を呼び込みます。  「僕」が作ったリブート教ですが,気づくと“別”のもの…。
「再起動なんて妄想だ。実存なんてしない。(略)」 「現代という時代が,急に必要とし始めた──そう考えることはできませんか。時代の意志と個人の意思が合致すると新しいことが起きる。それこそ歴史が証明している理論のひとつです。これまでは難しかった。だが時代が必要とした今,そういう一種の機能が生まれ始めていると考えてみてもいい。環境に合わせた進化のひとつだと言ってもいいくらいだ」
 大学時代からの親友 クォーターと作った教団の“もっともらしい教義”は,人格をパソコンのソフトに見立て,「修行を積めば,不要な機能をオフにして再起動できる」とシンプルなものです。  “起業”した「リブート教」は,元々システム・エンジニアリングのベンチャー企業を経営していた「僕」にふさわしく,宗教もどきのシステムを“設計”し,“構築”したものでした。  ですから,「僕」は教祖ではありません。リブート教というシステムが滞りなく作動し続けるようにするサポート・スタッフであり,「ヘルプデスク」でしかありません。  過分なお布施を信徒に強要したりはせず,控えめな月額会費を徴収するだけ,入退会は自由で無理な勧誘もしない…。  システムはきわめて巧妙に,合理的に設計され,構築されました。その甲斐あって「リブート教」は予想外の成功を収める。  ところが,インチキ宗教のはずが,「自分は“再起動”し遂げた」と言う信者が表れ…。  物語は,「設計編」「構築編」「完成編」「運用編」と続いていきます。  かつての宗教騒動をベースにしているようでもあり,近未来のコンピュータ社会を描いているようでもあり,考えさせられます。  最後に,短編「高田山は、勝った」が収録され,自作の相撲ゲームを究めようとする男と,彼のつくった架空の力士「高田山」を通して,「神」が描かれます。  「現代の“神”を問う」一冊として,いかがですか。