集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『発達障害』(岩波明・著)

花0906。 雲の多い朝,そしてが降ってきました。強い雨になるかと思っていましたが,小雨のままでした。  昼頃には雨が上がり,外で活動ができるような天候になりました。  中学校や小学校では,運動場で体育大会や運動会の練習に取り組んでいました。  明日は,よい天気で活動ができるかな。  書店の新書コーナーで目立つ位置にあった『発達障害(文春新書)を読みました。  “発達障害”という言葉,そして状況・状態が広く知られるようになりました。  学校・教育の場においても,保護者の方が子供の状況について話をされるとき,使われることも増えました。  また,その調査はかなり前から行われており,教育課題として“出現率”が取り上げられることもありました。  昔の話で恐縮ですが,「特殊教育」から「特別支援教育」へと変わってくる中で,学校から一般へと広がってきたように思います。  そのなかで,専門家の話をお聞きしたり,書籍を読んだりして,“知識”と“認識”を得てきました。  今回,この本を読んで,「えっ,最近は,そうなの?」ということがいくつかありました。  以前,NHK発達障害を扱ったテレビ番組を見たとき,「えっ,これって発達障害なの?」と思った事例があり,それと似た感想です。  「発達障害」がもつ“曖昧さ”なのか,言葉の“広さ”なのか,一般的な用語となっただけに,教育現場や医療現場,そして社会での混乱があるのではないかと思います。  本書の中では,「発達障害の中心的な疾患は,ASDとADHDである」として,この2つから話が進みます。  そして,精神科の診断基準DSM-5が紹介され,「神経発達障害」のカテゴリーに含まれるが,
 前述したように,DSM-5など公式の診断基準においても「発達障害」の定義は確定しておらず,診断名も一定していない。調査や研究が進むについて新たな知見が明らかにされつつあり,疾患の定義や名称は今後も変化していく可能性があると考えられる
としている。  DSM-5による「ADHDの診断基準」として紹介されている中から一部を紹介すると
A1.以下の不注意症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり,6か月以上にわたって持続している。  a 細やかな注意ができず,ケアレスミスをしやすい。  b 注意を持続することが困難。  c 上の空や注意散漫で,話をきちんと聞けないように見える。  d 指示に従えず,宿題などの課題が果たせない。  e 課題や活動を整理することができない。  f 精神的努力の持続が必要な課題を嫌う。  g 課題や活動に必要なものを忘れがちである。  h 外部からの刺激で注意散漫となりやすい。  i 日々の活動を忘れがちである。
があり,A2.B.C.…と続いていきます。  A1で6つ以上が該当した方は,いませんか。  子供の教育,活動に関わる方には,“今の発達障害”を知る材料としてお薦めの一冊です。  子育て中のお父さんお母さんが読まれたときには,知識に先走ることなく,お子さんを見つめ,お子さんと肌を合わせ,お子さんと語っていただきたいと思います。  読書メモ
発達障害とは,多くの疾患を含む大雑把なカテゴリーである点をまず認識してほしい。ジャーナリズムにおいては,「発達障害」という単一な病気があるかのように報道されることが多いが,これは誤りである。 ○ フィクションの世界では,アスペルガー症候群など発達障害の人たちあ「少し変わったところがあるが,特定の分野においては驚異的な能力を発揮する天才タイプ」として語られることが多い。 ○ ADHDの遺伝性は大きく,子供などの第1度親族は,ADHD罹患率が高い。臨床の現場においても,この実感が大きい。また,ADHDの家族にはASDの出現頻度も高い傾向にあり,今後の検討すべきテーマとして重要である。 ○ 「カサンドラ症候群」という病名をよく聞くようになった。これは正式な病名として認められているものではないが,アスペルガー症候群などASDの配偶者(パートナー)と感情的な相互関係,信頼関係が築けないことによって,その配偶者やパートナーに生じる,さまざまな精神的,あるいは身体的な症状の総称である。 ○ 一般の人は,アスペルガー症候群とは,「対人関係が下手で,周囲とうまくいなかい人」と考えていることが多いが,これだけでは十分ではないのである。だがマスコミの記事は不正確なものが多く,アスペルガー症候群の概念は誤解されていることが多い。  世の中に,対人関係が下手な人は数多い。健常者でも対人関係が苦手な人は珍しくない。 ○ 児童期にADHDASDの症状を示しても,軽症で問題行動がみられない場合は,見逃されていることが多い。(略) たとえばADHDで不注意症状を示す児童でも,「授業中に立ち歩く」「他の子供と頻繁にけんかをする」などの他人に迷惑をかける行動がなければ,教師は注意をしない。ASDにおいては,他の子供との交流が少なく孤立傾向が見られても,学習面で遅れがなければ,単に「おとなしい子供」として扱われているケースが大部分である。
   目次 はじめに なぜあの人は「空気がよめない」のか? 第1章 ASD(自閉症スペクトラム障害) 第2章 ADHD(注意欠如多動性障害) 第3章 ASDとADHDの共通点と相違点 第4章 映像記憶,共感覚学習障害 第5章 天才 第6章 アスペルガー症候群への誤解はなぜ広がったか 第7章 発達障害と犯罪 第8章 発達障害を社会に受け入れるには おわりに 発達障害とどう向き合うか