集団「Emication」別館

楽しく学び,楽しく活動する,笑顔の集団「Emication」。 ふるさとの自然,歴史,風俗などお伝えします。読書や豆知識の発信もしていきます。 活動する人,行動する人,その応援と支援をする集団「Emication」。

『5分で涙があふれて止まらないお話』(志賀内泰弘・著)

花0622。 「晴れて暑くなり…」と予報が伝えていましたが,当地では“熱く”はありませんでした。  天気は良かったのですが…。  明日は晴れるかな。  志賀内さんの新刊『5分で涙があふれて止まらないお話 七転び八起きの人びと』(PHP研究所・刊)です。  送っていただいたパンフレットに
「買って欲しい」のではなく,「読んでもらいたい」という願いです。
と志賀内氏が願う,月刊「PHP」誌に連載された作品と書き下ろしの18話からなる連作短編集です。  舞台は,都心から私鉄で1時間あまりの小さな駅前の商店街「八起商店街」です。  そばにある八起稲荷神社は,「七転び八起き、九難を払う」のご利益が伝えられ,多くの人が“願い”をもって訪れます。
「幸せってぇのは,いったいなんだろうなぁ」  そう呟いたのは,口に鍵を咥えた狛狐だった。玉を咥えたほうの狛狐が問う。 「唐突に哲学的なことを言いだしやがって,どうしまちまったんだよ」
と二匹の会話から始まります。  八起稲荷神社を訪れる人々の願いを聞き,心を痛める二匹の声です。  年末の商店街から始まる話は,“主役”の心と行動で述べられていきます。  ある話に登場した“脇役”が,別の話の“主役”となっていきます。  入子細工のように続いていく話が,読む人の心を揺さぶります。「幸せってぇのは,いったいなんだろうなぁ」と狛狐が語りかけてきます
 舞台は、とある商店街。  「七転び八起き、九難を払う」ご利益があることで知られる「八起稲荷神社」の門前町です。  心の奥底に息子を失くした「悲しみ」を負った八百屋のお爺ちゃん。  脳性小児まひの息子を、一人苦難に耐えて育てている喫茶店のママさん。  父親を憎む一方、「ヤブ医者」と呼ばれることに悩む女医さん。  自らの若き日の夢を捨て、認知症の義母の世話と  仕事に追われる肉屋の女将さん・・・など。  そんな心に陰を秘める商店街の人たちを、これまた同じ商店街の人たちが、傷つけず、さりげなく、優しさというオブラートで包んだ「思いやり」で救い、癒します。  ちょっぴりミステリー風、うるうるハートフル、星新一ばりの「え!?」のラスト。
地図

 「遠慮なく,泣いてください!」  「幸せ」に涙します。  あなたも八起稲荷神社にお詣りください。  それは書店にあります。手に取ってみましょう。  作品に,脳性小児まひの正くんが登場します。  大きくなっても「あ〜あ」としか発しません。お母さん,お父さんの苦難が描かれます。そこを読んだとき,愛育養護学校で学んだ輝くんのことを思い出しました。(そのようすは『輝──いのちの言葉──』に記録されています。)  願いの力,人との出会い,人の力…  そのとき感じた不思議さと力を重ねて読みました。  正くんの「あ〜あ」に元気と力が,本書にありました
  もくじ 八起稲荷商店街 周辺の図 主な登場人物 プロローグ  月曜日のサンドイッチ 睦月  ぼくはなんでもわかってる 如月  駄菓子屋のオバチャン 弥生  旦那の悪口 卯月  二人のリンゴ 皐月  十円拾ったよ 水無月  電気屋さんの塞翁が馬 文月  甘えてもいいの? 葉月  南天のお守り 長月  母ちゃんのコロッケ 神無月  父の遺言 霜月  パンの耳ちょうだい 師走  おふくろの口癖 再び 睦月  ボクはすぐに,わかったよ 再び 如月  「傷リンゴ,ください」 再び 弥生  見えないおかげで さらに弥生  最期の花見 エピローグ 「神様,勇気をください」